世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)日本語日本文化普及の取り組み

アル・ファラビ名称カザフ国立大学
大西由美

カザフ国立大学があるアルマティ市は1997年まで首都でした。天山山脈の北側に位置し、シルクロードのオアシスとして交易が行われてきました。昔からの文化施設も多く、緑が豊かで、過ごしやすい街です。

現在の首都は北部のアスタナ市で、日本人建築家黒川紀章氏のマスタープランによる都市開発が進んでいます。2017年の万国博覧会を控え、街は活気に満ちています。

国際交流基金からの専門家2名は両名ともアルマティの機関(カザフ国立大、カザフスタン日本人材開発センター 以下、KJC)に所属しています。

カザフ国立大学所属の専門家の主な業務は、カザフ国立大学での日本語教育支援(日本語教授、カリキュラム作成等)、カザフスタン全体の日本語教育支援(教師研修、日本語普及事業等)、および周辺中央アジア地域での日本語教育事業への協力と支援です。

【学習者の減少】

これまでカザフスタンの日本語教育機関でのヒアリングや研修を通して、最大の問題だと感じられたのは、各教育機関における学習者の減少です。2000年代には1000人を超えていた学習者が漸減し、2014年時点では450人、2015年時点では340人でした。

高等教育機関においては、最盛期7機関が日本語専攻または副専攻の課程を設置していましたが、現在はわずか3機関になりました。現行のコースの統合や授業削減の話もあり、さらなる教師の解雇や講座の閉鎖も起こりかねない状況です。

日本語日本文化への興味を持ってくれる人を増やすことを急務と考え、在カザフスタン日本大使館(以下、大使館)、KJC、各教育機関が協力し、これまでの日本語日本文化普及事業をさらに強化していくことを計画しています。

【日本文化デー】

毎年、大使館とKJCの共催で、アルマティにおいて日本文化デーが行われています。2016年は3月27日に開催され、書道や着付け、日本の遊びなど様々な体験ブースが用意され、多くの人でにぎわいました。

カザフ国立大はおにぎりの体験クラスと学科紹介を行いました。カザフ国立大の学生、日本人留学生もはりきって準備に参加してくれ、浴衣姿で来場者におにぎりと学科パンフレットを提供しました。

大盛況の日本文化デーの様子の画像
大盛況の日本文化デー

【初等中等教育機関の生徒への日本語日本文化紹介】

これまで、大学教員による学校訪問をアルマティ市内、および地方都市にて行ってきました。クイズを通じて日本に対する理解を深め、折り紙を全員で作成しました。将来日本に留学してみたいという生徒もおり、日本語学習を勧めています。

また、初の試みとして、カザフ国立大学では夏休み期間中の無料のサマーコースを行い、大学受験を控えた生徒に日本語や歴史、文化体験などのクラスを提供しました。このコースの参加者から次の入学者が出ることを期待しています。

潜在的な日本語学習のニーズを発掘するために、今後も広報活動に力を入れる必要があると考えています。特に、アスタナの学習者減少は顕著であり、各機関の協力のもと、積極的に広報活動を行いたいと考えています。

折り紙に挑戦した高校生の画像
折り紙に挑戦した高校生

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Al-Farabi Kazakh National University
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
カザフ国立大学東洋学部極東学科日本語講座は、カザフスタン国内で最も歴史ある日本語・日本学専門課程である。設置目的は、日本語・日本学研究者及び教師、企業において日本語で業務が行える人材、日本語通訳・翻訳者の育成であり、言語のみならず、歴史や文化などの専門科目にも重点を置いた教育が行われている。日本語専門家は、学習者の日本語能力向上及び現地講師への日本語教育の質の向上に対する支援を行う。また、学習者を増やすため、学校訪問、日本文化紹介などの広報活動も行う。
所在地 95a Karasai-batyr str., Almaty, 050012, Republic of Kazakhstan
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
東洋学部極東学科日本語講座
日本語講座の概要
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