世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)広がる交流 日本語で世界とつながる楽しさ

カザフスタン日本人材開発センター
瀬川 綾子

1991年のソビエト崩壊後の独立時から、圧倒的なリーダーシップを持ってカザフスタンを牽引してきたナザルバエフ大統領が、2019年3月19日突然の辞任を表明し衝撃が走りました。それだけにとどまらず、翌20日正式に大統領の地位を退くと共に、首都アスタナがヌルスルタンと改名。(ヌルスルタンはナザルバエフ元大統領のファーストネーム)歴史的に大きな変化が起こったカザフスタンですが、日常的にはこれまでと変わりなく自然豊かな町で安全な生活が守られています。

カザフスタン日本人材開発センター(以下KJC)は、カザフスタンの旧都アルマティにあります。アルマティのアルマはカザフ語でリンゴの意味で、町のあちこちに様々な色、大きさのリンゴのオブジェが飾られています。

KJCでは、JF講座(『まるごと 日本のことばと文化』(以下『まるごと』)を使用し、入門から中級まで全9レベル)が開講されていて、中高生から年配の方まで幅広い年齢層の方が日本語を学びに集まってきています。特に多い受講生の層は中高生で、日本語を学び日本語が上達していくのを見るのはもちろん、人間として成長していく姿を見られるのが楽しみの一つです。その成長に日本語教育が少しでも役に立っていたらこんな嬉しいことはありません。

教師セミナー

KJCでは、定期的に教師セミナーを行っています。テーマは様々で、基本的な日本語の教え方や現場での悩み解決など、現場の先生のニーズに合わせて企画をしています。

2018年7月には、「中級の教え方」という多くのリクエストを受け、中級をテーマにセミナーを開催しました。1日目はいくつかの中級の教科書の比較をし、それぞれの特徴や長所短所を分析しました。また、同じシリーズの初級と中級の教科書では何が違うかなどの比較も行いました。その後、『まるごと』中級を使って、グループでの教案作成をしてもらいました。2日目は作成した教案をもとに模擬授業を行い、その内容についての意見交換などを中心に行いました。教師経験が豊富な方や、これから教師を目指す方など、それぞれの視点での意見交換が活発に行われました。

グループで教案を作成している様子
グループで教案作成

東京オリンピック・パラリンピックホストタウン橿原市との交流事業

奈良県の橿原市が2020年東京五輪大会におけるカザフスタンのホストタウンに決まったことから、様々な分野で交流事業が行われています。橿原市は日本最初の天皇が誕生した地とされていて、シルクロードの日本側の出発点とも言われています。また、アルマティはシルクロードのオアシス都市として発展してきた歴史があります。以前から2都市間の交流がありましたが、ホストタウンになったことをきっかけにさらに交流が活発になりました。

現在、橿原市にある芸術系の短期大学と在カザフスタン日本国大使館、報告者が協力して、日本語学習のための映像教材を作成しています。その事業の一環で、映像作成に携わった学生さん2名と指導にあたった先生がアルマティを訪問しました。ちょうどひな祭りの時期だったこともあり、ひな人形作りのワークショップをしてくれました。

ひな人形作りのワークショップの様子
かわいくできたでしょ??

また、同じワークショップを、2018年9月から日本語授業がスタートしたNazarbayev Intellectual Schoolでも行いました。日本語を学ぶ生徒たち20名ほどが集まり楽しい文化体験の時間を過ごしました。

日本人が顔を書くと、やはり平安朝の顔になりがちですが、さすが多民族の国。個性豊かなひな人形が出来上がりました。

ひな人形作りのワークショップの作品の写真
表情豊かなひな人形

公文学校スイス校との交流

世界各地にある公文学校のスイス校の高校生5名が、海外研修の一環でKJCを訪問しました。日本や公文学校についてのプレゼンのほか、「オタ芸」の披露など、高校生らしいアイデアあふれる交流ができました。受講生たちも日本学習の成果を試すべく、市内観光に同行し、名物料理が食べられるレストランや市場などを案内しました。別れ際にはお互いのインスタグラムやFacebookID交換などを行い、末永い交流を約束し合っていました。この出会いが長く続き、お互いの将来に何かつながるものがあればと願います。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Japan-Kazakhstan Center for Human Development
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
JICAとカザフスタン政府との協定により設立された機関で、日本語コース、ビジネスコース、相互理解の事業を行っている。2011年10月から、日本語はJF講座となり、2012年の2月から、アルマティでJFスタンダード準拠の日本語教育が始まる。同年9月からは首都のアスタナ分室(2019年3月20日よりヌルスルタン分室)でもJF講座が始まる。日本語専門家は、JF講座をはじめカザフスタンの日本語教育支援を行う。桜祭りや七夕祭りなどのイベントや、大使館と共催で行っている日本文化デーは、年々来場者数も増加し、日本文化の普及に大きな影響を与えている。また、茶道や書道などの文化体験コースも開講している。
所在地 55 Jandosov str. Almaty Rep. of Kazakhstan
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 2002年
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