世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)日本語学習者を増やすためにできることを模索中

カザフスタン日本人材開発センター・ヌルスルタン分室
齊藤智子

1 日本語教育の現状

カザフスタンの首都ヌルスルタン(3月にアスタナを改称)の日本語事情について述べたい。カザフスタン日本人材開発センター(以下、KJC)は旧都アルマティに本室があり、従来活動の中心的存在である。アルマティと連携し、ヌルスルタン分室は活動している。分室は通称KAZGUUという人文法科大学の中に設置されており、教室3室、土曜日のみの出張講座として国立アカデミック図書館を使用し運営されている。常勤講師は日本語専門家(以下、専門家)とカザフスタン人各1名、非常勤講師は日本人とカザフスタン人各1名の合計4名の講師がおり、学習者は入門から中級初期の5クラスに計52名学んでいる。

大学では唯一L.Nグミリョーフ・ユーラシアン大学(以下、ユーラシア大学)東洋学科に日本語科があり、22名が学んでおり、同大学院の日本語専攻には1,2名進学するという。高校ではナザルバエフ・インテレクチュアル・スクール、通称NIS(ニシュ)と呼ばれる国立の高校の一校で2018年9月から8・9年生15名が学んでいる。このコースはアルマティ派遣の専門家及び在カザフスタン日本国大使館(以下、大使館)の協力で立ち上げられた。

そのほか、正課ではないが、ナザルバエフ大学に「JAPAN CLUB」と称する学生の活動があり、現在41名が日本語を学んでいる。また、NISインターナショナル・バカロレア(以下、NISIB)にも日本文化及び日本語を学ぶクラブ活動がある。

学校機関以外では民間語学学校が3校ある。そのうちプライベートの日本語塾では、日本人教師が活躍している。

以上のように、日本語学習機関が少ないこと、日本人教師が常勤でいるのはKJCとプライベート塾のみであることから、高校・大学で正規の日本語コースを開設すること、日本語教師を養成することが今後の課題といえる。

2 学習者を増やす方法模索中・・実施した事とこれからの計画

2月21日・22日:ヌルスルタン所在のユーラシア大学においてKJCアルマティ及びKJCヌルスルタン分室合同の教師セミナーを実施した。
3月2日:アルマティにて第21回カザフスタン弁論大会が開催され、14名の出場者が自由なテーマでスピーチをした。
3月6日:NISにて、東京オリンピックに際しカザフスタンのホストタウンとなる奈良県橿原市作成の橿原探訪ビデオをもとに模擬授業を実施した。

橿原市「ランドセル工房」の専門家による模擬授業の写真 詳細は以下
「ランドセル工房」(橿原市)の専門家による模擬授業

3月中:KJC常勤及び非常勤講師の授業を参観しフィードバックし、話し合いを持った。
4月16日:ヌルスルタン所在の16番学校に大使館広報文化班職員1名、通訳1名及び専門家が訪問し、日本紹介をした。ひらがなを覚えるためにロシア語とどう関連付けられるか、「ひらがなアソシエーション」という活動を通してできた作品が、キリル文字を用いた「『よ』とヨーグルト」である。

ひらがなアソシエーションの写真
ひらがなアソシエーション「『よ』とヨーグルト」

5月5日:ヒダシ・ユディット・ブダペスト商科大学名誉教授(ハンガリー)の来カザフスタンの機会をとらえ、同教授を囲んでコミュニケーション学における外国語教育の話をし、また、ハンガリーの日本語教育について話を伺った。大使館、日本語教師会、有志が集まった。
5月8日:日本文化紹介のため大使館広報文化班職員とともにNISIBのクラブ活動を訪問しフリートーク、折り紙などをした。

>「Japan Club」のメンバーと指導者の写真
NISIB」玄関ホールユルタの前で
JAPAN CLUB」のメンバー及び指導者

また、日本人音楽家の方々による「アニメ・ゲームのコンサート公演」があり、多数のアニメ音楽ファンが参集した。こういったイベントに関しては、日本人会、大使館の連絡網で情報発信されたものをKJCのクラスごとのSNSでシェアし、なるべく多くの人が日本文化に関するイベントに参加できるようにしている。

今後は、7月のアルマティでの日本語能力試験実施後の2日間教師セミナーを開催する予定である。また、ヌルスルタン分室を週に1回一般開放し日本文化紹介をする時間を設けること、6月及び7月に教師セミナーを実施することなどを計画中である。少しでも日本に興味を持って日本語を学びたい人が増えるよう尽力したい。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Japan-Kazakhstan Center for Human Development, Nursultan
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
JICAとカザフスタン政府との協定により設立された機関で、日本語コース、相互理解の事業を行っている。2011年10月から、日本語はJF講座となり、2012年の2月から、アルマティ本室でJFスタンダード準拠の日本語教育が始まる。同年9月からは首都ヌルスルタンのアスタナ分室(2019年3月20日よりヌルスルタン分室)でもJF講座が始まる。日本語専門家は、JF講座をはじめカザフスタンの日本語教育支援を行う。まるごと講座の授業を担当するとともに、日本語教師支援、日本語学習支援、学習者増のためのイベント開催などを主な目的とした活動をしている。
所在地 8, Korgalzhyn ave., Nursultan, Rep. of Kazakhstan
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 2019年
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