世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)ともに学び、つながる

ブカレスト大学
栗原 幸子

ルーマニアでの任期も3年目を迎え、最後の年となりました。国際交流基金(以下、基金)から当地に派遣されている日本語専門家(以下、専門家)は、派遣先の大学で授業を担当する以外にも、大学内外で開催される日本語教育関連の学会や研修会などへの支援、参加、発表などを行うこともあります。今回のレポートでは、専門家が関わっている学会や研修会などからの例をご紹介したいと思います。

日本語教育シンポジウム

派遣先のブカレスト大学では、例年秋に日本語教育シンポジウムを実施しています。2018年10月にも「異文化コミュニケーションを目指した日本語教育と新しいことば・概念」というテーマで、基金の助成を受けて開催されました。2018年の日本語教育シンポジウムでは、ドイツ・トリア大学の香月典子先生による「異文化間コミュニケーションに役立つ日本語の文法・語彙・文字の概念化」、ポーランド ニコラウス・コペルニクス大学の瀬口利一先生による「日本語オノマトペの翻訳可能性と不可能性 — 多様なニュアンスを学習者にどう意識化させるか」というテーマでのご講演をいただき、どちらも、それぞれの参加者のこれからの授業の向上につなげていける貴重な学びの機会となりました。さらに、国際交流基金ブダペスト日本文化センターの白井小百合副所長から基金の日本語教育事業についてお話をいただき、専門家も含め、ブカレスト大学のそれぞれのスタッフも発表を行いました。

フォクシェネアヌ日本語学科長による日本語教育シンポジウムでの発表する学生の写真
フォクシェネアヌ日本語学科長による日本語教育シンポジウムでの発表

また、大学からだけではなく、ブカレスト市内の高校や小学校で日本語を教えている先生方の発表もあり、ルーマニアの日本語教育の広がりが感じられるシンポジウムとなりました。

日本研究シンポジウム

またブカレスト大学日本語学科では、例年3月に日本研究シンポジウムを開催しています。こちらは、日本語教育の分野だけではなく、日本文学、言語学、演劇、社会学など様々な日本研究関連分野からのシンポジウムで、日本、ドイツ、ハンガリー、ポーランド、フランス、チェコなど国外からの発表者が集まります。

こちらのシンポジウムでも、専門家は開催支援のほかに発表を行っており、例えば2018年の日本研究シンポジウムでは、「年少者への日本語教育」というテーマで発表しました。こちらのサイトの前年のレポートでも紹介した日本語学科の学生たちが中心になって行った小学校での日本語教育の取り組みなどを紹介し、またこれからの発展に向けて、参加者のみなさんと教材や活動についても考える機会となりました。

日本研究シンポジウムは、日本語教育のみならず、様々な研究テーマの発表を聞くことによって、私たち教える側も学習者たちも知的好奇心を刺激される学ぶ場であり、そして日本、そしてヨーロッパの日本研究者のつながりを作り、深める機会となっています。

中東欧日本語教育研修会

国外での活動例としては、例年2月に、国際交流基金ブダペスト日本文化センターの主催による中東欧日本語教育研修会が開催されており、中東欧地域各国からの参加者とともに、中東欧地域に派遣されている専門家、指導助手も参加しています。

2019年2月には「授業改善の視点と工夫」というテーマで研修会が開催され、西南女学院大学の横溝紳一郎先生が基調講演をされました。ルーマニアからは、ブカレスト大学のルクサンドラ・ライアヌ先生、ルーマニア・アメリカ大学のアレクサンドラ・バラニ先生の2名が招聘を受け、それぞれ発表を行いました。

中東欧日本語教育研修会で発表するルクサンドラ・ライアヌ先生の写真
中東欧日本語教育研修会で発表するルクサンドラ・ライアヌ先生

中東欧地域を中心とした10数ヶ国を超える地域からの参加者が集まるこちらの研修会では、基調講演、それぞれの発表、質疑応答での学びももちろんのことながら、ディスカッションの時間を通して、参加者同士でお互いに学び合うことも多く、中東欧地域における日本語教育のネットワーク形成に大きな役割を果たしています。

今後もこのような機会への支援、参加を積極的に行い、日本語教育の普及や、ネットワーク形成、お互いの学びにつなげていけたらと思っています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
University of Bucharest
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ブカレスト大学の日本語学科は、ルーマニア国内の日本語教育、日本文学研究の中心であり、日本語だけでなく日本文学、日本文化について幅広い知識を身につけるための教育が行われている。専門家は日本語学科での日本語教授、カリキュラム・教材作成に対する助言、現地教師へのアドバイス等を行う。
所在地 Strada Pitar Moş nr. 7-13, Sector 1, Bucharest
国際交流基金からの派遣者数 専門家: 1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
ブカレスト大学外国語外国文学部日本語学科
日本語講座の概要
沿革
  講座(業務)開始年 副専攻: 1975年から
専攻: 1987年から
  国際交流基金からの派遣開始年 1978年
 
コース種別
  主専攻
 
現地教授スタッフ
  常勤4名(うち邦人1名)非常勤2名(うち邦人1名)
学生の履修状況
  履修者の内訳 1年生: 約40名、2年生: 約40名、3年生: 約45名
  学習の主な動機 日本文化への憧れ、言語そのものへの興味、など
  卒業後の主な進路 大学院進学、留学、ガイド、日本語教師、日系企業に就職など
  卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験N3程度
  日本への留学人数 年に10名程度

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