世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)広いロシア、ネットでつながろう!

モスクワ市立教育大学
大田美紀

ロシアにおける日本語教育アドバイザーの大きな業務の1つは地方日本語教育機関の訪問です。ヨーロッパに近い地域から極東地域まで出向き、現地の日本語教育事情を調査したり、セミナーを実施したりします。日本語専門家(以下、専門家)が訪問することにより、各地の日本語教師に日本語教育に関する情報を提供、研修の機会を設けるという目的がありますが、最近ではインターネットを利用することにより、異なる地域の教師同士をつなげ、お互いに学び合おうという試みも行っています。

ウラル地域とモスクワをつないだ日本語教育セミナーの様子の画像
ウラル地域とモスクワをつないだ日本語教育セミナー

2015年11月に、ウラル山脈の東側にあるエカテリンブルグ市で『まるごと、日本のことばと文化』(以下、『まるごと』)に関する日本語教育セミナーを実施しました。エカテリンブルグは国際交流基金が主催するJF講座のあるモスクワを除き、積極的に『まるごと』が使用されている都市です。2014年9月より市内にある日本語センターで『まるごと』が主教材として使われ始め、その後大学の第2外国語の授業や、その他のウラル山脈周辺地域の日本語学校でも使われ始めました。現地より「授業のやり方はこれでいいのだろうか?」、「大学の会話の授業ではどのように使えるだろうか」というような質問があり、上述の日本語センター講師とともにセミナーを企画しました。モスクワのJF講座講師2名にもスカイプで参加してもらう「ウェブセミナー」とし、ウラル地域の教育機関とモスクワJF講座で、それぞれどのように『まるごと』を使用した講座を実施しているのか情報交換するとともに、モスクワJF講座で実施しているゲストを招いた授業「ビジターセッション」についても紹介してもらいました。そして最後に、自分たちの機関、講座に合った『まるごと』の使用方法、コースデザインについてグループで話し合いました。また『まるごと』を使用する上での課題点についても意見交換し、モスクワJF講座の教師にとっても、今後どのような副教材の開発や情報提供が求められているのか、現場の声を聞く機会となりました。

オンラインでの講座の様子の画像
ロシア全土の教師の出会い、学びの場を求めて

オンラインでの講座の試みは前任の専門家が2回行っており、これで3回目です。これまでの2回も希望者が多かったと聞きましたが、今回も定員10名のところにロシア各地から60名の申込みがあり、午前・午後それぞれ10人グループ、週2回の講座で開講しました。最も東方からの参加者はバイカル湖東のウラン・ウデ市からでした。モスクワなどヨーロッパに近い地域との時差は6時間あるため、講座始めのあいさつは「~さん、おはようございます」、「~さん、こんにちは」、「~さん、こんばんは」と様々でした。参加者のほとんどは日本語教師を始めたばかりでしたが、できるだけ「こうあるべき」という知識を押し付けるのではなく、原則を紹介しつつ、現場に適用するに際してどうするかといったディスカッションを中心とするようにしました。また講座後半には各自の授業案や教材の発表、検討を行いました。「日本語教育について新しいことを知りたい、学びたい!」という意欲に溢れる参加者が多く、ディスカッションが止まらなくなるときもありました。「vkontakte」というソーシャルネットワーク上にグループを作りましたが、そこでも活発に情報や意見の交換が行われていました。「機関に日本語教師は自分だけ」という教師もおり、「日本語教育について語り合える仲間がいる」ということが大きな喜び、励みになったようでした。さらに「仲間との語り合いが自分に気づきを与えてくれた」というコメントも多くあり、学びの場をデザインすることの大切さを実感させられました。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称 モスクワ市立教育大学(略称:MGPU
Moscow City Teachers’ Training University
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
派遣先機関であるモスクワ市立教育大学は、初等・中等教育の教員養成を主目的として日本語教育が行われている。日本語専門家は同大学での授業を担当する他、ロシア全体の日本語教育状況の把握や、ネットワーク構築、教師支援といったアドバイザー業務を行っている。
所在地 Russia, 105064, M.Kazenny per., 5
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
言語学部 日本語学科、 東洋学部 日本語学科
日本語講座の概要

沿革

コース種別

現地教授スタッフ

学生の履修状況

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