世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)東シベリア・極東地域における日本語教育

極東連邦大学
下郡健志

私が派遣されているウラジオストクは「日本から最も近いヨーロッパ」として近年多くの日本人が訪れるようになりました。派遣先機関は2019年で創立120年を迎える極東連邦大学で、国際交流基金からの日本語専門家派遣は10年ぶりになります。私は派遣先機関だけではなく、カムチャツカからイルクーツクまでの東シベリア・極東地域における日本語教育支援を行っています。今回は10年ぶりの派遣となることから、現地での日本語教育の様子を簡単にご紹介したいと思います。

ロシア地図の画像
ロシア地図

極東連邦大学

極東連邦大学本部棟の写真
極東連邦大学本部棟(A棟)

毎年9月にウラジオストクでは東方経済フォーラムという会議が行われ、プーチン大統領も安倍総理大臣も毎年訪れますが、その会場となるのが、ルースキー島を切り開いて建設された極東連邦大学です。4月25日は授業棟の真横で露朝会談が行われました。ここでは日本学科で日本語を学ぶ学生が専攻だけでも240名近くいます。ロシアの大学は4年制の学士と5年制の専門士の2つの制度がありますが、日本学科にもその2つの制度が併存しています。私が担当する授業は通訳・翻訳コースという専門士コースの3年生~5年生で、学生は全員男性です。3年生では中上級レベルの機能シラバスに沿ったロール・プレイ中心の授業、4年生では中上級レベルの話題シラバスに沿った語彙習得と発表中心の授業、卒業を控えた5年生ではその場で簡単な作文をしたりスピーチをしたりなど、仕上げの授業をしています。

ウラジオストクその他

高等教育機関では国立海洋大学で日本語教育が行われています。一般に11年制の一貫教育が普通の初中等教育では、1980年代から日本語教育が行われている51番学校をはじめ、1番ギムナジウム、2番ギムナジウム、ウラジオストク・サービス経済大学付属学校、海軍幼年学校など多数の学校で日本語が学ばれています。どの先生も少ない予算から工夫して教材を自作して生徒達を楽しませながら授業をしています。またウラジオストクには外務省管轄の日本センターがあり、ここでは毎年150人~200人の社会人の方々が5年コースで日本語を勉強しており、4月6日に行われた弁論大会では、皆さん大人らしい素晴らしいスピーチをしていました。

そのほかの地域

ウラジオストク以外では、東からペトロパブロフスク・カムチャツキー、ユジノ・サハリンスク、マガダン、ハバロフスク、ウラン・ウデ、ヤクーツク、イルクーツクなどの都市の大学で日本語が学ばれています。日本からそれほど遠くないはずですが、日本人にはあまりピンと来ないかもしれません。

アンガルスク2番リツェイでの日本語クラスの写真
アンガルスク2番リツェイでの日本語クラスの様子

4月~5月はイルクーツク、ハバロフスクの弁論大会にお邪魔し、レベルの高い内容の発表に驚かされました。また、イルクーツクの北、電車で1時間ほどのところにあるアンガルスクの2番リツェイ(主に理系のための初中等教育機関)では、学校創立してから訪問した最初の日本人だったということもあり、大変な歓迎を受けました。そこでは課外授業として14歳から18歳までの中高生25人が2クラスに分かれて日本語を勉強しています。イルクーツク言語大(現イルクーツク国立大学)出身のスミルノワ先生が直接法(!)を使って日本語を熱心に教えています。生徒さんたちの表情は明るく、とても楽しそうに勉強していました。

私の派遣地域は日露戦争、シベリア出兵やシベリア抑留といった負の歴史が多い地域ですし、ビジネスで必要な中国語、K-POPが大人気の韓国語の前に日本語は劣勢気味ですが、それでも日本語を楽しそうに学んでいる学習者がより一層楽しく学べるように、そして日本語を勉強して良かったと言ってもらえるように、ロシア人の先生方と協力して頑張っていきます!

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Far Eastern Federal University
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
極東連邦大学は、1899年に設立の東洋学院の流れをくむ極東国立大学を母体としていくつかの大学を統合して2011年に設立された連邦大学である。現在は9のスクール(学部)、函館を含む8つの分校を持つ。キャンパスは2012年に開催されたAPEC会場に移転し、その後も毎年行われる東方経済フォーラムの会場としても使用され、「環太平洋国家ロシア」の象徴である。国際交流基金は2002年から2009年まで専門家を派遣していたが、2018年、ほぼ10年ぶりに専門家派遣を再開した。専門家は派遣先機関での日本語教育のほか、カムチャツカからイルクーツクまでの極東・東シベリア・極東地方全体の日本語教育の支援活動を行う。
所在地 10 Ajax Bay, Russky Island, Vladivostok, Russia
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
東洋学インスティテュート地域国際研究スクール日本学専攻
日本語講座の概要
沿革
  講座(業務)開始年 1899年
(1939年~1957年閉鎖)
  国際交流基金からの派遣開始年 2018年
 
コース種別
  専攻(日本学:歴史、経済、言語・文化、通訳翻訳学)
 
現地教授スタッフ
  常勤23名(うち邦人3名)
学生の履修状況
  履修者の内訳 主専攻 236名(日本学204名、通訳翻訳学32名)
  学習の主な動機 日本文化・経済等への興味・関心、将来の就職のため
  卒業後の主な進路 ロシア企業、公官庁、通訳・ガイド、合弁企業、大学院進学等
  卒業時の平均的な
日本語能力レベル
N2~N1
  日本への留学人数 年間15名程度

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