日本語専門家 派遣先情報・レポート
モスクワ国立大学
派遣先機関の情報
- 派遣先機関名称
- モスクワ国立大学付属アジア・アフリカ諸国大学
- Institute of Asian and African Studies
- 派遣先機関の位置付け及び業務内容
- 本学は、ロシアを代表するモスクワ国立大学内のアジア・アフリカ地域を対象とした研究・教育機関であり、言語教育の共通シラバス策定も担っている。日本・日本語研究では、文学、日本語教科書の執筆、通訳等、第一線で活躍している教授陣によって教育・指導が行われている。日本語専門家は同大学での授業を担当する他、西シベリア以西のロシアの日本語教育状況の把握や、ネットワーク構築、教師支援といったアドバイザー業務を行っている。
- 所在地
- Mokhovaya St., 11, Moscow, 125009 Russia
- 国際交流基金からの派遣者数
- 上級専門家;1名
- 日本語講座の所属学部、学科名称
- モスクワ国立大学付属アジア・アフリカ諸国大学日本語学科
- 日本語講座の概要
-
沿革 講座(業務)開始年 1956年 国際交流基金からの派遣開始年 1993年 コース種別 専攻 現地教授スタッフ 18名(うち邦人1名) 学生の履修状況 履修者の内訳 1年約30名、2年~4年それぞれ約25名、修士他約15名 学習の主な動機 日本の文化・歴史・社会等への関心、近年はポップカルチャー 卒業後の主な進路 進学、教員、研究者、外交、マスコミ、日系企業等 卒業時の平均的な
日本語能力レベル日本語能力試験N1~N2程度 日本への留学人数 年間10名程度
モスクワ国際学生日本語弁論大会、大成功!
モスクワ国立大学
下郡健志
ロシアの厳しい冬の前の短い秋は様々な文化イベントの季節です。そして大学生にとってはロシア全国と主にNIS諸国からの代表によって行われるモスクワ国際学生日本語弁論大会の季節でもあります。ロシアでは新学年は9月から始まりますが、この弁論大会に出場する学生は、早い地域で半年前の地域予選から勝ち抜いてきます。言語教育における世界的な流れから見ると弁論大会は少し古くさいイベントだと言われるかもしれません。ですが広いロシア、そしてNIS諸国の地域には、日本人と交流したり日本文化に触れあったりする機会の乏しい場所もたくさんあります。そのような地域で学ぶ学習者にとって、弁論大会は教室の外で日本語を使う数少ないイベントなのです。モスクワ国際学生日本語弁論大会は2021年で34回目を迎える歴史あるイベントで、国際交流基金のほか在ロシア日本国大使館、ロシアCIS日本語教師会が主催しています。昨年はコロナ禍で中止となり、代替的に「ユーラシアチャレンジ2020」という名称でビデオ審査によって行われました。2021年はぜひとも例年どおり10月末に、モスクワ中心部の赤の広場の近くにあるレーニン図書館で開催したかったのですが、新型コロナウイルス感染症の状況などから、他の多くのイベントと同様にオンラインで開催しました。開催側も参加者側もすっかりオンラインに慣れていますが、広いロシア、NIS全体の大会となると問題がいくつかあります。まずロシアだけでも11の時間帯があることです。もしモスクワの昼12時に開始するとしても東端のカムチャツカだと夜の9時になります。大会は4時間近くになりますので順番によっては深夜での参加になります。また特に中央アジアの国の中にはインターネット環境のよくないところも多く残っていて、通信状況に問題があれば参加者にとって不利になってしまいます。そこで今回は1週間前に予行演習を行って、その際にスピーチを録画しておき、問題があればそのビデオを流すようにしました。そして質疑応答は電話で行い、その様子はオンラインで配信されるように手配しました。その準備の甲斐あって、何人かの参加者にネットトラブルがあっても上手く対応できました。そしてもう一点、弁論大会の最大の教育効果の一つである「審査員や観客の前で堂々と話す」経験が、オンラインだと得られにくいという難点がありました。私たちはそれが損なわれないよう、YouTubeで同時配信することにしました。そして当日の視聴者はなんとのべ1500人以上に上り、このイベントがロシアやほかのNIS諸国では注目度の高いイベントなのだと改めて感じさせられました。
質疑応答の様子:質問員の里見専門家(モスクワ市立教育大学)と優勝者の
ジャモリディノフ・アサドベックさん(ウズベキスタン、タシケント国立東洋学大学)
実は私や同僚の基金派遣専門家は日本でテレワーク中です。弁論大会の企画こそ我々が中心となって進めましたが、実際に大会の準備をしたり進行をしたり配信をしたりしてくれたのは現地職員の方々です。特に司会(ロシア語も日本語も!)も担当してくれたダリアさんの頑張り抜きに成功はあり得ませんでした。
運営に司会に奮闘してくれたダリア職員
私たち日本語教師は、日頃より、言語学習を通じて他者とより良い関係を築くことを目指しています。日本語教育や日本語学習を通じて、さまざまな困難を乗り越えて、学習者と私たち日本語教師が再び一緒の舞台に立てるように非力ながら頑張っていきたいと思います。