日本語専門家 派遣先情報・レポート
モスクワ市立教育大学
派遣先機関の情報
- 派遣先機関名称
- モスクワ市立教育大学
- Moscow City University
- 派遣先機関の位置付け及び業務内容
- 派遣先機関であるモスクワ市立教育大学(かつてはMoscow City Teachers’ Training Universityであった。現在でも当地では教育大学として認識されている)は、初等・中等教育の教員を専門に育成する教育機関である。
日本語学科では教員養成の他、広く日本語専門家育成のための日本語教育が行われている。
日本語専門家は同大学での授業を担当する他、モスクワ日本文化センターの日本語講座の管理運営に携わっている。 - 所在地
- Moscow, 105064, Maly Kazenny pereulok. 5b, Russia
- 国際交流基金からの派遣者数
- 専門家1名
- 日本語講座の所属学部、学科名称
- 通訳・翻訳学部日本語学科、東洋学部日本語学科
- 日本語講座の概要
-
沿革 講座(業務)開始年 2007年 国際交流基金からの派遣開始年 2012年 コース種別 専攻 現地教授スタッフ 32(内、邦人3名) 学生の履修状況 履修者の内訳 専攻358名(学部1~4年:358名、修士1〜2年:6名) 学習の主な動機 日本、日本文化、日本語への興味 卒業後の主な進路 日本語教員、就職、進学、留学など 卒業時の平均的な
日本語能力レベル日本語能力試験N1~N2 日本への留学人数 約20名('19年)
「学びたい」気持ちに寄り添って
モスクワ市立教育大学
里見 文
私の主なミッションは、1.モスクワ市立教育大学1) (以下、MGPU)での授業担当と、2.モスクワ日本文化センター(以下、JFMW)での日本語講座(以下、JF講座)の管理運営の2つですが、Covid-19による諸々の事情で、2021年8月末から日本より業務を実施しています。それを可能にしてくれているのは、MGPUの先生方と学生の皆さん、JF講座の先生方、JFMWのスタッフの皆さんの多大で温かいご支援・ご協力のおかげであり、ここに心から感謝したいと思います。
1. モスクワ市立教育大学(MGPU)
MGPUでは2007年に日本語教育が開始され、2021年度は約360名の学生が専門として日本語を学んでいます。日本語学科には、東洋学と通訳・翻訳学の2つの学士コースがあり、日本語教育の修士課程もあります。日本の大学のように自分で科目を選択するのではなく、入学時にコース毎にクラスが編成され、4年間同じクラスメイトと一緒に決められた科目を履修します。2020年から続くCovid-19の影響を受けて、2022年3月現在も、科目毎にオンライン授業と対面授業がハイブリットで行われています。
私は、ロシア人の先生と一緒に、通訳・翻訳学コースの2年生を対象に「異文化コミュニケーション」という会話の科目を担当しています。ロシア語ができない私のために、大学からの様々な連絡等について、ロシア人の先生が親身になってフォローしてくださっていて、日々の授業が滞りなくできているのは、MGPUの先生方のお陰であると感謝しています。
MGPUでのオンライン授業はMicrosoft Teamsを使用していますが、先生も学生も様々なツールを使いこなして、オンライン授業に慣れている印象を受けています。多くの学生が、「日本語をもっと学びたい」「日本語がもっと上手になりたい」という熱い気持ちで積極的に授業に参加してくれています。最初は少しシャイな印象があった学生たちですが、授業を重ねるごとに冗談が飛び交い、とてもアットホームな雰囲気で、学生同士がお互いに教え合って学びを深めている様子がオンライン上からも見てとれ、私自身とても嬉しく思っています。
オンライン上では対面でのコミュニケーションと異なる点も多くありますが、学生同士がお互いに学び合えるような環境を作ることを心がけています。どんな状況にあっても学習者の「学びたい」という気持ちに寄り添って、一緒に学び合っていきたいと思っています。
オンラインで学ぶモスクワ市立教育大学の学生
オンラインツールを利用した学習者同士の学び合い
2. JFMW でのJF講座
JFMWのJF講座は、2011年に開始され、2022年3月現在6レベル6クラス(各クラス20名前後、合計約120名)の学習者が日本語を学んでいます。新規に開講するJF講座には、秋学期(2021年9月開講)に約450名、春学期(2022年2月開講)に約200名の応募があり、モスクワでの日本語教育需要の高さを感じました。JF講座もやはりCovid-19の影響を受けて、2020年3月よりZoomを使用したオンラインでの授業を実施しています。
JF講座で日本語を教えてくれている先生は全てロシア人の先生方で、母語を同じくする受講生たちの様々な疑問や気持ちにきめ細かく寄り添い、彼らの学習を親身にサポートしてくださっています。2021年秋学期終了時点で実施した終了時アンケートでは、受講生の9割強が、講座に非常に満足/満足していると回答してくれました。また、最終レベルに在籍する受講生らからは、日本語学習を継続するために、さらに上のレベルのクラス開講を要望するレターも受け取りました。これ以上クラスを増やすことは難しいかと思いますが、「もっと日本語を学びたい」という受講生の気持ちに応えることができるような取り組みを、今後検討していく予定です。
上述のような受講生からの高評価は、JF講座をご担当してくださっている優秀な先生方、運営に関わってくれているJFMW のスタッフの皆さんのご尽力の賜物であり、心から感謝しております。
私が日本から業務を実施していることで、MGPUやJF講座で見送りになった業務や滞っている業務があることに歯痒い思いはありますが、多くの人に支えて頂きながら、MGPUの学生やJF講座受講生の「学びたい」という思いに寄り添って、今できることに真摯に取り組んでいきたいと思っています。