日本語専門家 派遣先情報・レポート
極東連邦大学
派遣先機関の情報
- 派遣先機関名称
- 極東連邦大学
- Far Eastern Federal University
- 派遣先機関の位置付け及び業務内容
- 極東連邦大学は、1899年に設立の東洋学院の流れをくむ極東国立大学を母体としていくつかの大学を統合して2011年に設立された連邦大学である。現在は11スクール(学部)、函館を含む3つの分校を持つ。キャンパスは2012年に開催されたAPEC会場に移転し、その後も毎年行われる東方経済フォーラムの会場としても使用され、「環太平洋国家ロシア」の象徴である。国際交流基金は2002年から2009年まで専門家を派遣していたが、2018年、ほぼ10年ぶりに専門家派遣を再開した。専門家は派遣先機関での日本語教育のほか、カムチャツカからイルクーツクまでの極東・東シベリア・極東地方全体の日本語教育の支援活動を行う。
- 所在地
- 10 Ajax Bay, Russky Island, Vladivostok, Russia
- 国際交流基金からの派遣者数
- 専門家1名
- 日本語講座の所属学部、学科名称
- 東洋大学・地域国際研究スクール 日本学科
- 日本語講座の概要
-
沿革 講座(業務)開始年 1899年
(1939年~1957年閉鎖)国際交流基金からの派遣開始年 2018年 コース種別 専攻(日本学:歴史、経済、言語・文化、通訳翻訳学) 現地教授スタッフ 24名(うち邦人3名) 学生の履修状況 履修者の内訳 専攻300名 学習の主な動機 日本文化・経済等への興味・関心、将来の就職のため 卒業後の主な進路 ロシア企業、公官庁、通訳・ガイド、合弁企業、大学院進学等 卒業時の平均的な
日本語能力レベル日本語能力試験N2~N1 日本への留学人数 年間20名程度
東シベリア・極東地域における日本語教育
極東連邦大学
相原幹子
2021年9月より、日本から遠隔勤務を続けています。
極東連邦大学での授業
極東連邦大学では3年生の授業を担当しています。授業開始時や終了前には歩きながら授業に参加している人もいます。私が行うオンライン授業のときには、インターネット環境がよいところに移動しているようです。それでもインターネット環境があまりよくない場所にいる人もいますので、できないことを無理に行うより、できることを生かすようにしています。授業中のほとんどの時間がカメラオフなのですが、顔を見せないことによって、うまく話せなくても安心して話してみようとすることができているのかもしれません。また遠隔授業では発表のためにわざわざプレゼンテーション用の機器を準備する必要がないという点も便利です。
弁論大会・教師セミナー・教師会
2021年のウラジオストクスピーチコンテストは、スピーチのビデオをあらかじめ提出してもらい、大学生の部門のみ質疑応答はオンラインで行われました。極東東シベリア弁論大会は、スピーチ、質疑応答ともに、オンラインで行われました。極東東シベリア弁論大会翌日の教師セミナーでは、例年行われている発表のほかに、ラウンドテーブル形式での話し合いも行われました。また、サハリン教師会の集まりにも参加させていただきました。
どのくらいの距離を遠く感じるかは人によって違いますが、私にとっては遠く感じる距離の場所でもオンラインで参加できるというのは、本当に便利です。しかし、それと同時に、現地に行ってみるともっといろいろなことを感じることができるのではないかと思っています。
国際文化フォーラムの日露教師交流グループへの参加
国際文化フォーラムが主催する日露教師グループにも参加しています。こちらは主として初等中等教育にかかわっていらっしゃる先生方のグループです。2021年9月には教師交流会に参加し、2022年1月23日には高校生パフォーマンス交流成果発表会を見学させていただきました。渡航できれば、初等中等教育機関を直接訪問させていただきたいと思っています。
同じ空間にいることの意義
授業中に「あなたにとってなくしてはならないものは何ですか」という問いに対し、直接のコミュニケーションや、同じ空間にいて同じことを行い同じような感情を共有することの大切さを挙げた学生たちがいました。これは同じ場所に集まって行動できることが当たり前だったときには、なかなか気づくことのできなかったことかもしれません。
この話を聞いて、今自分がいる場所を大切にすると同時に、自分のいる場所以外のところへ足を運び、そこにいる人々と一緒に行動することもまた大切なことではないかと思いました。ほかの人と全く同じ感情を共有することはできませんが、理解しようと近づくことはできるのではないでしょうか。自分が今まで知らなかった環境に身を置いてみることは、平和構築につながるステップの一つであるのではないでしょうか。そして母語以外の言葉を学ぶことは、新しい世界に足を踏み込んでみるということかもしれません。
学習者の皆さんや、学習者の皆さんを支える先生方との交流を通して、日本語教師でありかつ母語以外の言語を学ぶ学習者の一人である私が多くのことを学んでいるように思います。