世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)ウズベキスタンにおける日本語教育の最新トピックと中央アジア地域への支援

ウズベキスタン日本センター
鶴田靖行

私が配属されているウズベキスタン日本センター(以下、UJC)は、2001年8月、大統領令に基づき設立されたウズベキスタンの公益法人です。運営にあたっては、国際交流基金(以下、基金)と国際協力機構(以下、JICA)が協力をしています。首都タシケントの本部のほか、旧市街がユネスコの世界遺産にも認定されているブハラにも分室を構えています。UJCの主な事業は、一般向け日本語講座、ビジネスコース、相互理解促進活動、聴覚障碍者のためのコンピューターコースなどです。設立以来、タシケントにある本部とブハラ分室を合わせ100万人弱の方々がUJCを訪れており、市民の間でもよく知られた存在になっています。
私はUJC日本語講座の運営を中心に行いながら、ウズベキスタンおよび中央アジア地域の日本語教育機関や教師に対する支援も行っています。
みなさんにこの1年の新しいトピックをいくつかご紹介します。

UJCが創立15周年を迎えました

UJC創立15周年記念行事の会場風景の画像
UJC創立15周年記念行事の会場風景

2016年9月、タシケントのトルキスタン劇場において、創立15周年記念行事を開催しました。日本語講座とビジネスコースの受講生及び修了生、UJCスタッフ、JICAボランティアなどが事前準備から当日運営まで協力して開催しました。プログラムは2部構成で、前半は様々な日本文化や日本の遊びなどに触れられる日本の夏祭りをイメージした催しを劇場ロビーで実施。後半はステージに場所を移し、歌や踊り、劇などのコンサートプログラムを開催しました。イベントは大変好評を博し、現地の方々や在留邦人など600名以上が来場しました。

UJCブハラ分室が開設10周年を迎えました

UJCの創立15周年に引き続き、2017年3月には、UJCブハラ分室が開設10周年を迎えました。そこで同年4月、ブハラ分室が居を構えるブハラ国立大学において、記念行事を開催しました。このイベントは3部構成で、まず第1部では「ブハラ及びブハラ国立大学における日本・ウズベキスタン協力の展望」と題したシンポジウムを開催しました。私はパネルディスカッションのパネラーの一人として参加し、ブハラ国立大学における日本語の第二外国語化や日本語教育分野での協力について意見を述べました。第2部では日本文化を体験できるコーナーのほか、10年間の活動を振り返る写真展が開かれました。そして第3部ではウズベキスタンの伝統的なダンスや日本舞踊、歌、コスプレショーなどが催されました。受講生の家族や親類、ブハラ国立大学の学生など多くの方が訪れ、ブハラ分室ならではのアットホームな雰囲気に包まれた賑やかなイベントになりました。

日本語弁論大会での活躍

とりわけ海外において、日本語学習者が目標としていることのひとつに弁論大会への出場があります。ウズベキスタンでは例年3月に「ウズベキスタン日本語弁論大会」(以下、国内大会)が開催されます。この大会の上位入賞者はその後中央アジア5か国の代表者によって競われる「中央アジア日本語弁論大会」へ出場します。また、国内大会の優勝者はロシアとCIS諸国の代表者によって競われる「モスクワ国際学生日本語弁論大会」にも出場します。

2016年4月にカザフスタンのアルマティで開催された「第20回中央アジア日本語弁論大会」において、のりこ学級(リシタン)所属のボボジョノワ・ジロラさんが優勝の栄誉に輝きました。彼女は同年10月「第29回モスクワ国際学生日本語弁論大会」でも第2位という素晴らしい成績をおさめました。

さらに、2017年4月にキルギスのビシケクで開催された「第21回中央アジア日本語弁論大会」では、ウズベキスタン代表4名のうち、Iqtidorli yoshlar言語センター(フェルガナ)所属のミルザテッラエワ・ズリフザルさんが優勝。他3名も2位から4位に入賞を果たしました(4位は同率で2名)。

このようにウズベキスタンの出場者は毎年日本語弁論大会において素晴らしい結果を残しています。大会に出場できる者はごくわずかですが、国内大会の出場者を選考する各日本語教育機関の予選大会では多くの学習者が大会出場を目指し切磋琢磨をしています。私たち日本語教育関係者は、貴重な学習成果発表の場である弁論大会をこれからも盛り上げていきたいと思います。

タジキスタンへの支援

タジキスタン日本語教育セミナーの様子の画像
タジキスタン日本語教育セミナーの様子

2017年4月現在、中央アジア地域ではウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、トルクメニスタンの4か国に基金日本語専門家(以下、専門家)が派遣されています。タジキスタンには専門家が派遣されていませんが、2015年より年1回、中央アジア地域の専門家が現地へ赴き教師向けセミナーを実施しています。2017年4月、私はタジキスタンのドゥシャンベを訪れ、日本語教育セミナー及び大学での授業見学、学生との交流会、日本語教育関係者との懇談を行いました。セミナーには現地教師、教師を目指す学生、JICAボランティアなど12名が参加しました。タジキスタンの日本語教育の規模はまだそれほど大きくありませんが、2016年に日本語教師会が発足し、日本語能力試験も開始されるなど、日本語教育への熱が高まっており、現地の教師らはタジキスタンの日本語教育を盛り上げるという気概に満ちていました。このように専門家は任国のみならず地域全体の日本語教育の発展のために活動しています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Uzbekistan-Japan Center
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ウズベキスタン日本センター(UJC)は、国際協力機構(JICA)とウズベキスタン政府との協定に基づき2001年に設立されたNPOである。現在ビジネスコース、日本語教育、相互理解促進事業、聴覚障碍者向けITコースの4事業を活動の柱としている。日本語教育事業では、一般向け日本語講座の運営を中心に、教材の現地語化や日本語に関するイベントを実施している。また、ウズベキスタン全体の日本語教育に対する支援として、日本語弁論大会や日本語教育セミナー、教師研修など、ウズベキスタン日本語教師会などと協同して様々な催しを行っている。
所在地 6th Floor, International Business Center, 107-B, Amir Temur str., Tashkent, 100084, UZBEKISTAN
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 2001年。2010年度に一度中断し、2012年度に派遣再開。
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