世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)ウズベキスタンの日本語教育事情

ウズベキスタン日本センター
山崎紀子

「荷物をお持ちしましょうか」と買い物袋を提げて歩いているときに背後から掛けられる声。海外の公共交通機関で席を譲られるのは珍しいことではありませんが、タシケントの地下鉄構内やスーパーの近くで、このような親切な申し出を受けることがあります。

「ウズベキスタン」という国名から危ない国だと誤解されることも多いようですが、ウズベキスタンの人々は穏やかで、親日家も多いです。日本の約1.2倍の面積にシルクロードの中継点だったサマルカンド、ブハラ、ヒヴァといった旅心が刺激されるような魅力的な観光地もあり、また2つの国を超えないと海に出られない世界でも珍しい二重内陸国でもあります。

日本人にはまだ馴染みのない国かもしれませんが、日本国籍保有者は今年2月10日に30日間までの滞在に限りビザが免除になりました。そして今、ウズベキスタンは国を挙げて観光客誘致を行っています。

さて、以下、私がウズベキスタンで専門家として携わっている業務について、紹介したいと思います。

UJCでの日本語教育支援

ウズベキスタン日本センター(以下、UJC)では、現在10歳の子供から成人まで、約250名が日本語を学んでいます。ここでは日本語コースの運営、改善、現地日本語講師の指導に取り組んでいます。今年から力を入れているのは、『まるごと』コースの改善で、JF日本語教育スタンダードに基づいたコースにするためにシラバスを大幅に変更しました。Can-doチェック、ポートフォリオの導入はもちろん、ビジターセッションや文化体験(巻きずし作り、書道など)の授業も取り入れました。ビジターセッションで日本語を実際の場面で使用する機会がなかった受講者からこぼれる笑顔を見て、これで自律学習への第一歩につながったと実感しました。しかしこれに留まらず、教室外でのコミュニケーション活動のサポートについても考えているところです。 『まるごと』コースが開講されているのはウズベキスタンでもUJCタシケントとUJCブハラ分室だけです。ですからUJCでしか学べない『まるごと』コースの魅力を伝え、受講生の授業満足度を高め、受講希望者を一人でも増やすことを目標に日々取り組んでいます。

また、年初に常勤講師が夏期開講に向けた「子供向け『まるごと』短期コース」プロジェクトを立ち上げ、常勤講師全員で準備しています。これは、将来的にシリーズ化する計画があるので、念入りな打ち合わせが現在進行中です。

UJCの図書館の写真
UJCの図書館

インターナショナルビジネスセンター外観の写真
UJCのオフィスがあるインターナショナルビジネスセンター

タシケントでの日本語教育支援

主に携わっているのは日本語教師会の支援で、毎月開催の役員会参加、毎年3月に開催される国内弁論大会などの日本語学習者支援事業の協力を行っています。ウズベキスタンは若手教師が多く、イベント開催では積極的且つ協力的で、また勉強熱心でもあります。現在、5月にタシケントで開催される中央アジア日本語弁論大会の準備を各機関代表の実行委員と進めています。

ウズベキスタン国内の支援

今年3月にウズベキスタン東部にあるフェルガナの言語センター、リシタンののりこ学級に行ってきました。どちらもウズベキスタンの日本語教育機関では比較的歴史が長く、学習者は国内外の日本語弁論大会でも優秀な成績を収めています。しかし、両機関とも現在正規の日本語教師がおらず、言語センターでは中上級以上の受講生が、のりこ学級では不定期で日本人ボランティアが教えています。非常に不安定な運営状況にもかかわらず、学習者が皆明るい笑顔で一生懸命日本語を勉強していることがとても印象的でした。そこで専門家ができることは何か、やはり核となる教師を育成することも支援の一つだと思いますので、今後はセミナーを開くなどして、引き続き支援をしていきたいと考えています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Uzbekistan-Japan Center
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ウズベキスタン日本センター(UJC)は、国際協力機構(JICA)とウズベキスタン政府との協定に基づき2001年に設立されたNPOである。現在ビジネスコース、日本語教育、相互理解促進事業、聴覚障碍者向けITコースの4事業を活動の柱としている。日本語教育事業では、一般向け日本語講座の運営を中心に、教材の現地語化や日本語に関するイベントを実施している。また、ウズベキスタン全体の日本語教育に対する支援として、日本語弁論大会や日本語教育セミナー、教師研修など、ウズベキスタン日本語教師会などと協同して様々な催しを行っている。
所在地 6th Floor, International Business Center, 107-B, Amir Temur str., Tashkent, 100084, UZBEKISTAN
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 2001年。2010年度に一度中断し、2012年度に派遣再開。
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