日本語教育通信 授業に役立つホームページ 第17回

授業に役立つホームページ

第17回 Web2.0と日本語教育(2)

―写真中心のSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)「フォト蔵」―

前回は、インターネット利用者の情報発信を爆発的に拡大し、Web2.0の世界を支えるツールとしての「ブログ」を取り上げ、日本語教育 の現場での活用について考えました。今回は、Web2.0と日本語教育(2)として、利用者が自分で撮った写真を公開し、利用者間で共有することで、利用 者どうしがつながっていくサービスを提供している「フォト蔵」を紹介します。

 現在、インターネットの世界では、ソーシャルネットワーキングサービス(Social Networking Service)と呼ばれるサービスが盛んです。SNSとは、人と人とのつながりを促進するコミュニティ型の会員制のサービスや、そういったサービスを提 供するWebサイトのことを指します。代表的なSNSとして日本最大の会員数を持つmixi、世界最大の会員数を持つMySpaceなどがあります。今回ご紹介する「フォト蔵」は、写真を中心としたSNSです。お互いに写真を見るだけでなく、写真にコメントを付け合うことができ、「コミュニティ」に参加して、テーマごとに写真を公開し合うこともできます。

 日本語教育では、教師が学習効果を高めるために、写真を利用して教材を作成したり、授業中にさまざまな目的で写真を利用することも多いです。また、日本語学習者が、写真を見せながら会話をしたり、スピーチをしたり、写真の説明を作文したりすることもあるでしょう。日本語教育の世界で、写真を中心にしたSNS「フォト蔵」でどんなことができるか考えてみましょう。

<目次>

  1. 1.フォト蔵に会員登録する
  2. 2.フォト蔵でどんなことができる?
    2.1 写真を見る
    2.2 自分で撮った写真を公開する
  3. 3.日本語国際センターの研修での利用
  4. 4.おわりに

1.フォト蔵に会員登録する

 「フォト蔵」のサービスを利用するためには、まず会員登録をしなければなりません。

  1. (1)フォト蔵にアクセスして、「無料登録はコチラから」をクリックします。画面の右上に次のような日本語と英語の切り替えボタンがありますので、英語で利用することもできます。

    フォト蔵の画面写真1:日本語と英語の切り替えボタン

  2. (2)必要な情報を入力して、「登録」ボタンをクリックします。

    フォト蔵の画面写真2

  3. (3)登録したメールアドレスに、確認メールが届きます。メールのURLをクリックして会員登録の手続きが終了します。

    フォト蔵の画面写真3

  4. (4)URLをクリックすると、「マイページ」に行くことができます。ここからは、後半の「3.日本語国際センターの研修での利用」でご紹介する2007年度インドネシア中等教育日本語教師研修の「フォト蔵」を利用したマイページ'Manis'を例にして説明を進めましょう。
  5. (5)「マイページ」の「フォト蔵設定」のボタンを押すと、プロフィールを変更したり、マイページのデザインを変更したりすることができます。このページで、利用する言語を変更することもできます。

     ここでは、ページのデザインを変更してみましょう。テーマを「空」にしてみました。「マイページ」の「マイピク編集」から、自分のプロフィールとして表示する写真を追加(アップロード)することもきます。

    フォト蔵の画面写真4

     デザインを「空」に変更して、写真を追加すると、「マイページ」が次のように変りました。

    マイページに写真が追加された画面写真

2.フォト蔵でどんなことができる?

2.1 写真を見る

 まずは、他の利用者によって公開されている写真を見てみましょう。

 日本語教師は、日本語や日本文化の授業や教材のために利用できる写真を探すことが多いですが、フォト蔵でもさまざまな方法で、写真を探すことができます。

  • キーワードで写真を探す

     「マイページ」の画面の左上にある、「みんなの写真」をクリックします。検索画面が開きますので、キーワードの入力欄に見たい写真のキーワードを入力して、「検索」ボタンをクリックします。

     ここでは、「新緑(しんりょく)」の写真を探します。キーワードに「新緑」と入力して、検索してみます。

    フォト蔵の画面写真6

    フォト蔵の画面写真7

     「新緑」の写真のサムネイル(小さな写真)の一覧が出ます。見たい写真をクリックすると、その写真を公開している利用者のページに行きます。写真の下には、他の利用者からのコメントがついています。

  • 世界地図から写真を探す

     「フォト蔵」では、世界地図からも写真を探すことができます。「マイページ」の「みんなのフォト蔵」の「地図表示」をクリックします。

    フォト蔵の画面写真8

     Googleが提供しているグーグルマップの地図が表示されて、写真が公開されている地域には、黄色いピンが表示されます。そのピンをクリックすると写真を見ることができます。

2.2 自分で撮った写真を公開する

 撮影した写真を公開してみましょう。公開した写真に自分でコメントをつけたり、他の人からコメントをもらったりすることができます。また、アルバ ムを作って、アルバムごとに「インターネットに公開する」「フォト蔵全体に公開する」「友だちに公開する」「公開しない」と、写真の公開範囲を設定することができます。

  1. (1)「マイページ」の画面右の「写真・動画」をクリックすると、自分のアルバムの一覧が出てきます。初期状態では、「公開アルバム」と「友だちアルバム」の二つのアルバムが用意されています。

    フォト蔵の画面写真9

  2. (2)追加したいアルバムを選んで、写真の内容に合ったほうの「このアルバムに追加」をクリックします。

    フォト蔵の画面写真10

  3. (3)「参照」ボタンをクリックして、公開したい写真のファイルを選択します。そして、「タイトル」に写真の題名を入力して、「追加(アップロード)」ボタンをクリックします。まとめて、5枚まで追加することができます。

    フォト蔵の画面写真11

  4. (4)アップロードしてから、マイページの「写真・動画」をクリックして画面を開くと、アルバムに追加した写真の一覧が出ます。

    フォト蔵の画面写真12

  5. (5)アップロードした写真にコメントをつけてみましょう。写真の一覧から、コメントをつけたい写真を選んで、写真の上でクリックします。(写真の下の「編集」を押さないように注意してください。)写真の下のコメント欄にコメントを入力して、「コメントする」ボタンをクリックします。

    フォト蔵の画面写真13

3.日本語国際センターの研修での利用

 次は、日本語国際センターの研修での「フォト蔵」の活用例をご紹介したいと思います。

 「フォト蔵」を利用したマイページ'Manis'は、2007年度インドネシア中等教育日本語教師研修で、研修生が日本でとった写真素材を共有することを目的に作られました。研修と「フォト蔵」の関係は、次のとおりです。

  • 「フォト蔵」の使用方法
    1. (1)日本でとった写真を共有する
       このアルバムは、インドネシアの高校日本語教師20名の共有アルバムです。全員がはじめて「フォト蔵」を使うビギナーなので、教師がまずページを作成 し、全員が共通のパスワードでログインできるようになっています。なかには、はじめてデジカメを使うという研修生もいますし、デジカメでとった写真をコンピュータに入れるのもはじめてという研修生もいます。そのため、はじめは、あまり制約を設けず、だれでも好きな写真を自由にアルバムにのせて見せ合うことにして、「日本の生活」というタイトルのアルバムを作ることから始めました。
    2. (2)生徒に日本事情を紹介するための写真素材を共有する
       インドネシアの高校では、家族、学校、日常生活、趣味、旅行などのいろいろなトピックについて、日本語でコミュニケーションすることが求められています。生徒たちは、各トピックについて、きく、はなす、よむ、かくという技能に加えて、日本の生活や文化についても理解することが必要とされています。ですから、高校の教師にとって、日本の生活のさまざまな側面を生徒にいきいきと伝えることはとても大切なことです。日本でとった写真は、そのためにとても役に立ちます。トピックごとのアルバムを作って、みんなで写真をためていけば、インドネシアに帰ってからも自由に使うことができるでしょう。
    3. (3)研修の様子を発信する
       アルバムにおさめた写真の中から、研修の様子を表す写真を何枚か選んでコメントをつけます。こうすると、ちょっとした「写真つきブログ」ができます。研修生が順番にブログを書くことで、日本語で発信する機会を提供することができます。
  • 「フォト蔵」と授業の関係
     「フォト蔵」は、授業時間外を使って作成するものですが、「フォト蔵」と授業の関係は次のとおりです。
    1. (1)「日本語アクティビティ」の授業で写真を撮影する。
       「日本語アクティビティ」は日本語を使って日本を知るという授業科目です。日本人ボランティアの人と交流したり、いろいろなところに出かけたりします。出かけるときにデジカメを持っていき、日本の写真をとってくることを課題にします。
    2. (2)PC講習で「フォト蔵」に触れる。
       研修の一環のPC講習では、研修生のITリテラシーに合わせた段階的な授業構成になっていて、PC入門から授業が始まります。インターネットやメールの利用法、ブログとともに「フォト蔵」を紹介して、写真を投稿したり編集したりしてみます。
    3. (3)写真コンテストを実施する。
       まだ計画中ですが、日本でとった写真の中から、研修生が一人一枚を選んでコメントをつけ、それをコンテストアルバムにのせます。この写真をセンターの中の人に見てもらい人気投票をするということもできます。

★「フォト蔵」のManisアルバムはまだ試行段階ですが、研修生たちが使い方に慣れて、写真がたまっていけば、インドネシアの高校の日本語教育を支援する一つのリソースになる可能性もあるのではないでしょうか。

4.おわりに

 「Web2.0と日本語教育」と題し、私たちの周りにあるWeb2.0的なサービスとして、「ブログ」と、写真を中心としたSNS「フォト蔵」の活用をご紹介しました。

 前回ご紹介した「ブログ」は、文字情報を中心に「日記」の形式で情報を発信し、発信した情報に対して読者から「コメント」が返ってくるので、情報 を一方的に発信するだけでなく、双方向のコミュニケーションができる点で優れていました。しかし、一方、「公開する情報としての適切さの調整」や、「不適切なコメントの管理」など、利用するにあたって注意しなければならない点も多いです。今回ご紹介した「フォト蔵」の利用は、写真を中心としたソーシャルネットワーキングサービスですが、写真の共有が中心となるので、情報発信を主に行いたい場合は、「ブログ」を利用したほうが便利でしょう。

 私たち日本語教師には、「目的に応じてさまざまなサービスの特徴やいい点/悪い点をふまえて、使い分けられるようになること」がますます求められ る時代になってきたと言えるのではないでしょうか。前回の「ブログ」に関する記事がホームページに掲載されてから、「私もブログを活用しています!」 「Web2.0的なサービスは他にもあるのでは? WIKIは?」など、複数の方からの反響がありました。筆者としては、とても嬉しいことでした。

 このコーナーでは、私たち日本語教師にとって便利そうなインターネット上のサービスを単にご紹介するだけではなく、実際の利用方法とともに現場に お届けしたいと考えて執筆してまいりました。しかし、実践例の紹介にとどまり、その効果まではなかなかお伝えできていません。今後とも、読者の方からさまざまな教育現場からの実践報告についてご連絡いただけたら嬉しいです。私たち日本語教師の世界でもWeb2.0的なコミュニケーションがもっと拡がるとい いですね。

このコーナーの担当者:島田徳子・藤長かおる
(日本語国際センター専任講師)

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