日本語教育通信 新聞・雑誌から見る現代日本 第32回

新聞・雑誌から見る現代日本
このコーナーでは、新聞・雑誌の記事を通して現代日本事情を紹介するとともに、日本語を教える先生方が新聞・雑誌の記事などの生教材をどうやって教材化し、中・上級の日本語の授業にどう活用できるかを提案していきます。

世襲議員の是非

読む前に

 みなさんは、親の仕事を将来自分もしたいと思ったことがありますか。あるいは、自分の今の仕事を子供に継いでもらいたいと思いますか。どうしてそう思いますか。子供が親や親族の仕事や地位を引き継ぐことを世襲と言い、日本の場合、能や歌舞伎などの役者、茶道や華道の家元のように伝統の継承が重んじられる世界では世襲が一般的です。また、個人経営の店や町工場なども家業として世襲されるのが普通です。

 では、政治の世界ではどうでしょうか。ここ3代の首相だけを見ても、安部元首相の祖父、福田前首相の父、麻生首相の祖父も首相でした。野党に目を向けても、5月に新しく民主党代表となった鳩山氏(記事が書かれた時点では幹事長)の祖父も過去に首相を務めています。

 首相だけでもこのように世襲が目立つぐらいですから、国会議員全体ともなると、世襲の数はさらに多くなります。やはり親や親族が議員であれば、本人も議員になりやすいのでしょうか。確かに、世襲議員は三バン、つまり、「かばん」(お金)、「看板」(名前)、「地盤」(選挙区の後援会等の組織)を親や親族からそのまま引き継ぐことができ、有利だと言われています。

 2009年は、日本にとって重要な総選挙(衆議院議員選挙)の年です。前回の総選挙が行われたのは2005年9月11日で、衆議院議員の任期は4年ですから、近いうちに新しい議員を選ばなければなりません。以前から議論のある世襲問題ですが、総選挙が近づくにつれ、この問題が活発に論じられるようになってきました。

 みなさんは、議員の世襲についてどう思いますか。今回は、この問題に関する朝日新聞社の調査結果に基づく5月9日付の記事を2つ、毎日新聞の5月11日付の関連記事を1つ、読んでみましょう。

参考ウェブサイトA

  • The Japan Times Online
     “Hereditary politicians a fact of life -Some in LDP call for curbs on blue bloods-” (2009年4月27日)(英語)
     http://search.japantimes.co.jp/cgi-bin/nn20090427a2.html
  • 毎日小学生新聞 「政治 政治家の世襲 なりたい人をはばむ壁」(2009年5月24日)
    http://mainichi.jp/life/edu/maishou/mado/archive/news/2009/
    20090524kei00s00s002000c.html

記事(1)

朝日新聞(朝刊)2009年5月9日1面「世襲133人立候補予定」
『日本語教育通信』2009年7月「新聞・雑誌から見る現代日本」第32回に掲載している記事は著作権の関係で掲載できません。

朝日新聞(朝刊)1面 2009年5月9日

記事(2)

朝日新聞(朝刊)2009年5月9日4面「世襲の当選率7~8割前後」
『日本語教育通信』2009年7月「新聞・雑誌から見る現代日本」第32回に掲載している記事は著作権の関係で掲載できません。

朝日新聞(朝刊)4面 2009年5月9日

記事(3)
毎日新聞(朝刊)2面 2009年5月11日の画像
毎日新聞(朝刊)2面 2009年5月11日
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読もう

読んだ後で

参考ウェブサイトB

  • East Asia Forum “Japan: combating botchan rule” (2009年4月29日)(英語)
     http://www.eastasiaforum.org/2009/04/29/japan-combating-botchan-rule/
  • NHK解説委員室 時論公論「議員世襲 制限は必要か」(2009年5月7日)
       (NHKオンライン https://www.nhk.or.jp/)
  • 東京財団 論考「世襲議員と政策形成のあり方について —「政治主導」時代へのインプリケーション—(1)」(2009年2月12日)
     http://www.tkfd.or.jp/topics/detail.php?id=121

<解説>

 政治の話題は今まであまり取り上げてきませんでしたが、今回は議員の世襲に関する記事を選び、実際の教室活動の流れにそって質問と記事を提示しました。
 久しぶりのグラフ付き記事ですが、「読む前に」でグラフを見て記事本文の内容を予測する練習を取り上げました。また、今回は背景知識として役立ちそうな参考ウェブサイトをここでも紹介しました。
 「読もう」では、見出し・リード文・本文の関連付けを問う問題、明示されていない主語を前後関係や文章全体から考える問題、等を練習に含めました。キーワードは、特に取り上げてはいませんが、「総選挙」、「世襲」、等の理解がこの練習を行う上で欠かせないことは言うまでもありません。
 「読んだ後で」では、この記事が書かれた5月以降この問題がどのような展開を見せているのか調べ、その結果を確認することを促す質問も含めました。参考ウェブサイトBはさらに詳しく調べたい人のためのものです。

(浜田盛男・林敏夫/関西国際センター日本語教育専門員)

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