授業のヒント 「タオル筆」を作って、絵手紙をかこう!心が動いた経験を伝えよう!

授業のヒント
このコーナーでは、海外の日本語教育の現場で、すぐに応用できる具体的な教え方のアイデア、ヒントを紹介します。

2026年8月
国際交流基金関西国際センター

1.概要

目標
  • 短い簡単な日本語で、心に残った経験や気持ちを絵手紙に書く。
  • 書き手の気持ちを想像しながら、絵手紙を読む。
対象とするレベル
JF日本語教育スタンダードA1~
クラスの人数
何人でも
準備するもの
絵手紙:はがき(または、画仙紙 注1)、墨汁、絵の具(または、色えんぴつ)
タオル筆(注2):タオル、わりばし、輪ゴム
けしゴムはんこ:けしゴム、えんぴつ、つまようじ、スタンプ台

2.「絵手紙」とは?

最近、誰かに手紙を書きましたか。
デジタルが主流の今、手紙を書く機会が減ってきていますが、形として残る手紙は、紙の手触りやデザイン、時には香りなどで五感を刺激してくれます。その中でも、日本文化の一つである「絵手紙」は「心の贈り物」と言われており、次のような特徴があります。

絵手紙とは、「絵のある手紙を送ること」で、はがきに絵と相手に伝えたい気持ちを短い言葉でかきます。キーワードは「みじか」で、身近なものをモチーフに、短い時間でかいて、短い言葉をそえて、身近な人に出します。モットーは「へたでいい、へたがいい」で、大切なのはきれいにかくことではなく、心を込めてかくことです。

参考:日本絵手紙教会「絵手紙とは?」

今回は、絵手紙という日本の文化を通して自分の気持ちを表現したり、相手の気持ちを想像しながら作品を味わったりするという相互理解を促す授業として、身近な道具を使って行った実践を紹介します。

3.授業の流れ

A1レベルからできる活動ですが、今回はA2~B1レベルのタイの中等教育機関の日本語教師34名を対象とした訪日研修で、120分で行った例を示します。

ステップ1 絵手紙の導入

  1. 1)手紙を通したコミュニケーションを思い出すため、「いつ、どんな時、誰に手紙を書くか」、「今までで一番うれしかった手紙はどんな手紙か、どうしてうれしかったか」、「手紙とメールの違いは何か」について、小さいグループで話します。
  2. 2)絵手紙の作品をいくつか見せ、みんなで鑑賞しながら、絵手紙の特徴を紹介します。

ステップ2 日本での経験をふりかえる

  1. 1)絵手紙をかく前に、日本での経験をふりかえり、テーマに沿って一人でマインドマップを書きます。私たちが担当した授業では、「日本滞在中に心が動いた経験」をテーマにしました。
  2. 2)一人で書いたマインドマップを小グループで見せ合いながら、お互いに質問をし、その経験を具体的に思い出します。
  3. 3)グループで話した後、もう一度自分のマインドマップを見て、誰かに伝えたいと思う経験を選び、伝えたい相手をマインドマップに書き足します。

ステップ3 デモンストレーション

  1. 1)絵手紙に使う道具を紹介します。
  2. 2)教師が絵手紙のデモンストレーションをし、絵手紙のかき方を伝えます。
  • 授業で使用するマインドマップの画像。左上に「日本に来て、心が動いたものをメモしましょう。」と書かれ、中央の円の中には研修名が書かれ、そこから4方向に線がのび、線の先にある円の中には「季節の花」、「季節の食べ物」、「持ち物」、「生き物」と書かれている。
    日本での経験をふりかえる
    マインドマップ
  • 広い室内で小グループに分かれてテーブルを囲んで座っている中でフォーカスされた4人のタイの日本語教師の参加者のグループがマインドマップをもとに話している。
    マインドマップをもとに
    グループで話す
  • 教師が教室の前の長テーブルで絵手紙をかくデモンストレーションをしており、左後ろのモニターにはその手元が大写しになっている。
    教師による絵手紙の
    デモンストレーション

ステップ4 けしゴムではんこを作る

絵手紙に押す自分の名前(頭文字)のはんこを、けしゴムとつまようじで作ります。

  1. 1)四角いけしゴムを準備します。
  2. 2)けしゴムにそって、はんこを押す面の形を紙に書きます。
  3. 3)紙に書いた四角の中に、えんぴつで文字を書きます。
  4. 4)書いた文字にけしゴムを押し当てて、けしゴムに文字を写します。
  5. 5)写った線にそって、つまようじを刺して、文字をほります。
  6. 6)けしゴムにインクをつけて、はんこを押してみます。
  • 絵手紙に押すけしゴムはんこを作る時に必要な道具である「けしゴム、えんぴつ、つまようじ、スタンプ台」を示している。
    けしゴムはんこの道具
    (画像をクリックすると拡大されます)
  • けしゴムはんこの作り方について、1~6までを順に写真と説明文で示している
    けしゴムはんこの作り方
    (画像をクリックすると拡大されます)

ステップ5 タオル筆を作る

絵手紙をかくための筆を、タオルとわりばしと輪ゴムで作ります。

  1. 1)8cm×8cmにタオルを切ります。
  2. 2)タオルを半分に折って、三角形にします。
  3. 3)小さい角の一つを大きい角に向かって折ります。
  4. 4)タオルの上に、わりばしを置きます。
  5. 5)筆の形になるように、わりばしにタオルを巻きつけます。
  6. 6)輪ゴムでとめたら、できあがりです。

タオル筆は墨でかいたり、色をぬったりする時に使うので、一人3~5本ぐらい作りましょう。なお、今回は海外でも比較的手に入りやすい道具で行うために、「タオル筆」を作って行いましたが、筆ペンや絵の具の筆、色えんぴつを使ってかくこともできます。

  • 絵手紙をかくタオル筆を作る時に必要な道具である「タオル、はさみ、わりばし、わゴム」を写真とことばで示している。
    タオル筆の道具
    (画像をクリックすると拡大されます)
  • タオル筆の作り方について、1~6までを順に写真と説明文で示している。
    タオル筆の作り方
    (画像をクリックすると拡大されます)

ステップ6 絵手紙をかく

  1. 1)ステップ2で書いたマインドマップを見返して、伝えたい経験と相手を選び、絵手紙にかくモチーフを決めます。
  2. 2)タオル筆を使って、画仙紙(はがき)に墨で絵をかきます。墨が乾くまで少し待ちます。
  3. 3)他のタオル筆を使って、絵の具で色を塗ります。絵の具がない場合は、色えんぴつやペンでもだいじょうぶです。
  4. 4)墨で短い言葉を書きます。
  5. 5)ステップ4で作ったはんこを押します。
  • 絵手紙をかく時に必要な道具(はがき、えのぐ、パレット、水、すみ)を写真とことばで示している。
    絵手紙の道具
    (画像をクリックすると拡大されます)
  • 絵手紙のかき方について、1~5までを順に写真と説明文で示している。
    絵手紙のかき方
    (画像をクリックすると拡大されます)

ステップ7 作品を鑑賞する

  1. 1)全員の作品を掲示して、作者の気持ちを想像しながら絵手紙を読みます。
  2. 2)全員の作品の中から最も「気持ちが伝わる」と思った作品に投票をします。
  3. 3)一番多くの票を集めた作品の作者に、どんな気持ちでかいたのかインタビューをします。
  • 研修参加者がかいた、いろいろな絵手紙の作品がパーテーションにきれいに飾ってあるのを写した写真。絵手紙には、ケーキやたこやきなどの食べた物、桜やだるま、看板など町で目にした物、町で出会った人の絵などが描かれ、「一緒に食べよう」「君と一緒に」「ありがとう」などの短い文が添えられている。
    研修参加者の作品の一部
  • 2つのパーテーションにきれいに並べて貼られた参加者の絵手紙作品を前に、談笑しながら鑑賞する大勢の研修参加者の後ろ姿が写っている
    作品を掲示して鑑賞
  • 1つのパーテーションにきれいに並んで貼られた絵手紙を前に、作者の女性と彼女にインタビューする教師、それを見守る参加者の後ろ姿が写っている
    作者へのインタビュー

4.活動のバリエーション

絵手紙を用いた表現活動は、人数や教室の大きさ、活動の時期や学年に合わせて進め方を変えることができます。前段で紹介した研修での実践とは少し異なるやり方として、クラスサイズや活動の目的に応じたアレンジを紹介します。

その一例が、ニュージーランドの中等教育機関の日本語教師を対象に行った研修での実践です。日本での経験をテーマに、印象に残った出来事や場面を絵手紙にして「大切な誰か」に伝える活動をしました。参加人数6名の小規模研修だったため、全員の作品を一つずつ鑑賞できるように、絵手紙をかいた後に全体の前で一人ずつ作品について語ってもらい、互いに感想やコメントを共有し合いました。作品を通して互いの感じ方を言葉にしながら対話しつつ鑑賞できる点が、この共有方法の特徴です。

  • 教室の右側には参加者の作品が貼られたホワイトボードがあり、左側には絵手紙のテーマ「日本で私の心が動いたこと」がモニターに映し出されていて、一人のニュージーランドの日本語教師の参加者が、他の参加者の前で自分の作品について語っている。
    一人ずつ絵手紙について語る様子
  • ニュージーランドの日本語教師6人の参加者がそれぞれ自分の絵手紙作品を手にもって見せている写真。絵手紙にはもみじ、とんぼ、風鈴、街並み、湯飲み等の絵がかかれ、「一緒に日本に行こう」「涼しい風」「歩こう」などの短い文が添えられている。
    参加者それぞれの作品

書き手の気持ちを想像しながら絵手紙を読む活動のバリエーションとして、以下のような方法も考えられます。

  • 想像する力を促す
    作者名を見せずに作品を掲示し、まず「どんな人が、どんな気持ちでかいたと思うか」を話し合う。その後、作者に実際の気持ちを語ってもらう。
  • 鑑賞から対話につなげる
    自分がかいた絵手紙を持って教室を歩き回りながら互いに鑑賞し、気になった作品があったら立ち止まって作者と一対一で話す。
  • 一つの作品に対する受け取り方の多様性を認める
    作品を壁に掲示して、自由に鑑賞して回る。作品の感想をふせんに書いて作品の近くに貼る。

また、実際に切手を貼って姉妹校などに送ることで、「誰かに届く日本語」としての実感を伴った活動に発展させることもできます。次の写真は、研修参加者の学校で生徒が絵手紙をかいて、日本の中学校に贈ったものです。研修の成果を帰国後に自身の教室で実践したといううれしい報告です。

  • 日本の中学校の廊下に、ニュージーランドの高校生から届いた絵手紙が並べて飾ってある。
    研修中に交流した中学生と絵手紙交換
  • 左の写真をフォーカスしたニュージーランドらしい絵柄の作品が並んでいる。絵手紙には、花や川などの自然、羊やキーウィなどの動物、キウイフルーツ等の果物が描かれている。
    ニュージーランドらしい絵柄と、けしゴムはんこ

5.まとめ

授業で絵手紙をかいた参加者からは、次のようなコメントがありました。

  • 初めてやってみたけれど、こんなに楽しいとは思いませんでした。
  • 周りの簡単なもので絵手紙をつくるのは、とてもおもしろかったです。
  • タオル筆でかいた絵手紙で、自分の気持ちを伝えられて、とてもよかったです。
  • 日本語を習い始めたばかりのクラスで、この楽しい活動ができそうです。
  • 私は美術が苦手なので不安でしたが、「へたでいい、へたがいい」という考え方によって、楽しむことができました。

今回はノンネイティブの教師を対象に実践しましたが、参加して楽しかった、というコメントに加えて、自分の国で手に入る材料でできそう、自分のクラスでもやってみたい、との声が多く聞かれました。
みなさんも、タオル筆で絵手紙をかいて、心の贈り物をしてみませんか。 

右側に女性のイラストが配置され、「こんな先生におすすめ」と題して3つの説明文が書かれている。1つめに書かれているのは、「コミュニケーションを意識した「書く」活動がしたい!自分の気持ちを表現し、相手の思いを想像しながら伝え合う活動ができます。」2つめに書かれているのは、「コンピテンシーを意識した活動を取り入れたい!創作活動を通して、思考力・表現力・創造力を育てることができます。」3つめに書かれているのは、「ことばと文化を組み合わせた授業がしたい!身近な材料で気軽に取り組めて、日本語レベルに関わらず書道的な表現体験ができます。」

注:

  1. 1.「画仙紙(がせんし)」というのは、墨で字を書いたり、絵を描いたりするための紙のことで、タオル筆でも書きやすいです。日本であれば、はがきサイズの画仙紙を100円ショップなどで買うことができるので、準備できる場合は使ってみてください。
  2. 2.「タオル筆」は日本タオル発祥の地、大阪・泉佐野で、絵手紙作家の宮脇泰彦氏によって考案されたものです。タオル筆の作り方は動画で見ることができます。

参考文献:

  • 須田剛(2015)『描く・切る・貼る 季節を楽しむ絵手紙』朝日新聞出版
  • 小松麻美(2024)『日本語教育に創作活動を!詩や物語を書いて日本語を学ぶ』ココ出版
  • 日本絵手紙協会ホームページ

イラスト:
イラストAC  https://www.ac-illust.com/

(武田素子・岡本拓・川嶋恵子/関西国際センター日本語教育専門員)

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