日本語教育ニュース 日本語国際センターでは「外国人材」の来日前教育を担う現地日本語教師のための研修を行っています
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- このコーナーでは、国際交流基金の行う日本語教育事業の中から、海外の日本語教育関係者から関心の高いことがらについて最新情報を紹介します。
2026年7月
国際交流基金日本語国際センター
本記事は2026年7月1日時点の情報に基づいています。今後、制度の内容や社会状況等により、記事内容に変更が生じる可能性があります。
1.外国人材の受入れに伴う海外日本語教育ニーズの高まり
少子高齢化が進む日本では、産業によっては人手不足が深刻になっています。2019年度には「特定技能制度」(注1)が創設され、ある程度の専門性・技能を持つ外国人を労働者として受け入れるようになり、その数は年々増加しています。2025年12月末現在、約39万人の外国人が日本の各地で「特定技能」の在留資格で働いています(出入国在留管理庁「特定技能制度運用状況(令和7年12月末)」)。

図1:国籍・地域別特定技能在留外国人数(2025年12月末)
図2:分野別特定技能在留外国人数(2025年12月末)
- *出入国在留管理庁「特定技能制度運用状況(令和7年12月末)」をもとに作成
- *構成比は小数点第二位で四捨五入
こうした中で、2027年度からは「技能実習制度」に代わり「育成就労制度」が始まります。「技能実習」は多くの場合3年で帰国しなければなりませんが、「育成就労」は日本で働きながら技能と日本語力を高め、「特定技能」にキャリアアップを目指すことが可能な制度です(注2)。このような制度の成立に伴い、東南アジアをはじめとする一部の国・地域では、日本での就労を希望する人たちに対する日本語教育のニーズが拡大し、その重要性も増しています。
国際交流基金(JF)では、「特定技能制度」が開始された2019年度より「特定技能」外国人材向け日本語事業の一環として、来日前日本語教育の基盤整備に取り組んでおり、日本語教材『いろどり 生活の日本語』(以下、『いろどり』)や、「いろどり日本語オンラインコース」などが開発されました。そのほかにも、現地の日本語教師の育成、支援のために、JFの海外拠点や派遣専門家によるセミナーや研修会などが各国で幅広く展開されています。日本国内においては、日本語国際センターで、外国人材の送り出しを担う海外の日本語教師を対象とした約1か月間の訪日研修が行われています。この記事では、日本語国際センターの訪日研修の内容を紹介しながら、外国人材の来日前日本語教育について読者の皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
2.日本語国際センターの教師研修
日本語国際センターでは、2019年度から「特定技能制度による来日希望者のための日本語教授法研修」を実施し、就労希望者への来日前日本語教育を行っている教師のスキルアップを支援しています。2025年度からは、研修名を「外国人材受入れのための日本語教師研修」に改め、日本語教授法を中心に学び、教授力の向上を目指す研修に加え、新たに教師の日本語運用力の向上に特化した日本語研修をスタートさせました。2025年度末までに、14か国417名の日本語教師がこの訪日研修に参加しています(注3)。国別の内訳は以下のとおりです。
| 地域 | 国(人数) |
|---|---|
| 東アジア | モンゴル(27) |
| 東南アジア | インドネシア(154)、カンボジア(16)、タイ(48)、フィリピン( 27)、ベトナム (64)、ミャンマー(19)、ラオス(4) |
| 南アジア | インド(6)、スリランカ(12)、ネパール(27)、バングラデシュ(10)、パキスタン(2) |
| 東欧 | ウズベキスタン(1) |
表:研修参加者の所属機関の国別内訳(2019~2025年度)
日本で生活しながら働くためには、職場や周りの人たちとさまざまな場面で日本語でコミュニケーションをとらなければなりません。また、「特定技能1号」の在留資格で来日するためには、日本の生活場面でのコミュニケーションに必要な日本語能力を測定する「国際交流基金日本語基礎テスト」(JFT-Basic)に合格することなどが必要です(注4)。
日本語教授法を中心とした研修では、日本語を知識として教え込むのではなく、学習者が実際の場面で日本語によるコミュニケーションができるようになるための授業の方法として、課題遂行型の教授法を実践的に学びます。講師による『いろどり』を使ったモデル授業を体験し、研修参加者同士でディスカッション、模擬授業などをしながら、効果的な日本語の教え方について理解を深め、所属機関や自分の授業の改善を目指します。

『いろどり』の教え方についてディスカッションする研修参加者
模擬授業の様子
そして、この研修では「来日後の学習者を知ること」も重視しています。来日前日本語教育を担う教師のすべてが、日本での生活や就労を経験しているわけではありません。むしろ、そういった経験を持たない教師が大勢います。研修では、自身の所属機関で勉強し、現在日本で働いている卒業生のところに会いに行き、現在の生活や日本語でのコミュニケーションの実際についてインタビューをするという活動を行っています。来日後の学習者がどのような日本語を必要としているのか、どのようなコミュニケーション上の課題、文化の違いによる困難を抱えているのか、現在の生活や自分自身についてどう考えているのか、どのような将来設計を描いているのかなどをインタビューし、来日前教育の参考にします。
そのほかにも、実際の就労現場の見学や、外国人材と共に働く日本人の意見を聞くなど、日本側の視点にも触れられる機会も設けています。2025年6月に行われた研修では、日本語国際センターの近隣にある高齢者施設を訪問し、施設見学と、日本人及び外国人介護スタッフとの意見交換を行いました。

介護施設見学
車いすの体験
介護スタッフの方との意見交換
同年11月に行われた研修では、埼玉県内の食品会社から15人の日本人及び外国人スタッフに日本語国際センターまで来ていただき、食品製造現場の実際や、その企業が取り組む外国人材支援について教えていただきました。交流会では、外国人材に求められる資質や日本の労働文化、文化の違いなどについて活発な意見交換が行われました。

作業着の試着体験
スタッフの皆さんとの意見交換
これらの活動を通して、研修参加者は、これまで自分たちが行ってきた日本語教育が学習者のニーズに合っていたのか、来日前教育で身につけるべきものは何かなど、来日前教育の意義や内容、教師の役割を問い直すようになります。「仕事や生活で困らないように日本語でコミュニケーションできる力を身につけることが大事」「職場で必要なマナーと、日本人がなぜそれを大切と考えるのかを教えたい」「卒業生たちが困っていることだけでなく楽しんでいることを伝えたい」「教師は学習者のキャリア形成を支える重要な仕事」など、来日前教育の指針を見出すとともに教師としてのモチベーションの向上にもつながっています。
ここまで、日本語教授法を中心とした訪日研修について紹介してきましたが、もう一つ、2025年度より日本語運用力向上を目指す日本語研修を実施しています。日本語力不足のため、生活で必要となるA2レベルの日本語を自信をもって教えられないと感じている教師を対象に、生活場面の日本語コミュニケーション力をしっかりと身につけることを目的とした研修です。この研修では、日本で生活する際に必要となる日本語を『いろどり』を使って学習者として学びながら、コミュニケーション力を伸ばす教え方を体験的に学びます。また、実際のさまざまな生活場面で日本語を使ったり、日本の社会や文化を体験したりできるような活動も取り入れられており、来日前教育をより実感をもって考えられる機会となっています。
3.これからの教師研修
外国人材の来日前教育を担う日本語教師は、ただ日本語を教えるだけの存在ではありません。学習者たちが安心して日本での生活と仕事を始め、自らの力を発揮し将来の道筋を描いていけるよう、日本語力だけでなく、日本社会で働くための知識や心構えを授け、背中を押す役割も期待されています。 世界の日本語教育は、日本社会の変化や国際的な人の動きに密接に関わりながら、その役割の幅を広げています。日本語国際センターでは、これからもこうした時代の変化を踏まえつつ、外国人材の来日前日本語教育を支える学びの場を、世界の日本語教師の皆さんとともに築いていきたいと考えています。
- 注:
-
- 1.「特定技能制度」とは、人手不足の分野で即戦力となる外国人を受け入れるための在留資格制度です。一定の技能や日本語能力を持つ外国人が、介護や建設、農業などの特定の産業分野で働くことができます。在留資格には、「特定技能1号」と、さらに熟練した技能が必要な「特定技能2号」があります。詳しくは、出入国在留管理庁のウェブサイト等をご覧ください。
- 2.2025年3月11日に閣議決定された基本方針では、「育成就労」は、就労開始前にA1相当以上の日本語能力が求められており、JFT-Basic 国際交流基金日本語基礎テストにてA1以上と判定されるか(2026年8月以降)、日本語能力試験(JLPT) のN5以上の試験に合格しているか、あるいは、入国後講習等においてA1相当以上の日本語講習を受講する必要があります。詳しくは、出入国在留管理庁のウェブサイト 等でご確認ください。
- 3.新型コロナウイルス感染症の流行の影響で、2020~2021年度は訪日研修が一部を除いて中止となり、同期型のオンライン研修に切り替えて本研修を実施しました。また、2022~2024年度は、仕事や家庭の都合等で訪日研修への参加が難しい教師を対象としてオンライン研修を開催しました。これらのオンライン研修には8か国110名の日本語教師の参加がありましたが、訪日研修参加者417名にこの人数は含まれていません。
- 4.2025年3月11日に閣議決定された基本方針では、「特定技能1号」はA2相当以上の日本語能力が必要とされており、JFT-BasicまたはJLPTで確認します。JFT-Basicでは2026年7月までは総合得点が判定基準点以上、2026年8月からはA2.2(A2)と判定、JLPTの場合はN4以上の試験での合格が求められます。詳しくは、出入国在留管理庁のウェブサイト等でご確認ください。
- 参考文献・資料:
(岩本雅子/日本語国際センター日本語教育専門員)
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