平成28(2016)年 受賞者

蔡 國強(現代美術家) [中国]

授賞理由

蔡 國強氏の写真
Cai Guo-Qiang, Qatar, 2016. Photo courtesy of Wen-you Cai, Cai Studio

蔡國強氏は、中国で生まれ、日本でアーティストとして開花した世界的美術家である。

「海のシルクロード」ともよばれる東西貿易で栄えた中国福建省泉州に生まれた蔡氏は、1986年に来日し、火薬を爆発させて制作する「火薬ドローイング」の手法を確立した。自らの故郷の記憶に結びつく「東洋的」な世界観に基づきつつ、本来破壊的で武器にもなる火薬を表現の手段とし、国内外で多くの展覧会、プロジェクトを行って世界との対話を続けてきた。

1995年、ニューヨークに移住後、活動を世界各地に広げ、1999年にはヴェネチア・ビエンナーレ金獅子賞を受賞。2008年北京オリンピック・パラリンピック開会式・閉会式の視覚特効芸術監督を務めた。1980年代末から続く「外星人のためのプロジェクト」では、宇宙から人類を見ることで地上の壁や対立を軽々と乗り越える試みを提示した。近年は欧米はもとよりエジプト、ブラジル、カタール、オーストラリアなどに活動を広げ、各地でその場所の歴史を遡り、現地の人々と協働し、宇宙や自然を題材に、大規模プロジェクトを実現してきた。

日本では2011年東日本大震災後、「いわき万本桜」プロジェクトの支援を続け、越後妻有里山現代美術館企画展にも参加した。2015年には横浜美術館での大規模な個展「帰去来」において色彩を用いた「火薬絵画」を発表。横浜の学生、市民と共に日本の自然を題材にした大がかりな作品を制作した。

蔡氏のこのような作家としての取り組みそのものが、異なる地域、宗教、言語の人々をつなぎ合わせる国際交流の実践である。昨年の日本での活動は、その長年の成果を日本に持ち帰り、再び世界の多様性と連続性に気づかせる機会を提供するものであった。このように長年にわたり国際相互理解の促進に大いに貢献されてきた蔡氏の業績は特筆すべきものであり、今後のさらなる活躍を期待し、国際交流基金賞を授与する。

協力:日本航空

スーザン・J・ファー(ハーバード大学教授/同大学ウェザーヘッド国際問題研究所日米関係プログラム所長) [米国]

授賞理由

スーザン・J・ファー氏の写真

スーザン・J・ファー氏はアメリカにおける日本研究を長年にわたり牽引してきた。1975年にコロンビア大学で政治学博士号を取得後、米国社会科学研究評議会、ウィスコンシン大学マディソン校、戦略国際問題研究所などを経て、1987年にハーバード大学に迎えられ、1991年にエドウィン・O・ライシャワー記念日本政治学講座教授に就任。1987年以降、同大学ウェザーヘッド国際問題研究所日米関係プログラム所長を務めるほか、2011年までの7年間、ライシャワー日本研究所所長を兼務した。

女性の参政権や両性の平等の原則を掲げた革新的な日本国憲法の制定過程に関心を抱き、戦後日本における女性の政治参加を調査したのが日本専門家としての同氏の出発点である。以後、先進諸国における比較政治学、日本と東アジアにおける民主化と社会変容、市民社会と非営利組織、政治倫理と汚職、環境をめぐる政治学、政治におけるメディアの役割、女性の活躍とリーダーシップへと研究対象を広げてきた。いずれも今日、重みを一層増しているテーマであり、その先見性と比較政治学の視点に基づいた日本政治への洞察は、多方面から高く評価されている。

ハーバード大学では、これまで約2000件のセミナーやシンポジウムを実施し、約600人のフェローの研究を支援してきた。その多くが現在、日本やアメリカをはじめ、世界各国の学界、メディア、財界、官界、政界、市民社会などで指導的立場にある。

また、日米友好基金やアジア財団の理事、日米文化教育交流会議(CULCON)委員、マンスフィールド財団「日米次世代パブリック・インテレクチュアル・ネットワーク事業」の諮問委員等を務め、日米間の知的交流の深化のために尽力してきた。

ファー氏のバランス感覚に富んだ、フェアな日本理解の姿勢は柔和で誠実な人柄とともに敬意を集めている。

このように日米を中心とした国際相互理解の増進に長年にわたり顕著な貢献があり、その業績は国際交流基金賞にふさわしい。

協力:日本航空

ブラジル日本語センター(CBLJ) [ブラジル]

授賞理由

ブラジル日本語センターの写真

「お餅つき、餅のごはんがとんでくる」

これは、ブラジルの9歳女児の日本語学習者の俳句である。

ブラジルの日本語教育は、1908年の移民開始以来、日系人子弟向けの継承語教育として発展してきた。近年アニメなどのポップカルチャーに魅了された非日系人向けの外国語教育の需要も高まっている。しかし、学習者には依然として幼少児を含む初等・中等の子供たちが多く、正規の学校教育以外の機関(日系人が経営する日本語学校)で学んでいる学習者が7割近くを占める。

ブラジル日本語センター(CBLJ)は、このようなブラジルの日本語教育事情を背景に、1985年日本語普及センターとしてサンパウロに設立され、日本語教師養成、教材・教授法の開発研究、国際交流を通して、延べ1千名を超える日本語教師の育成、毎年約2万人の学習者を支援してきた。(2003年ブラジル日本語センターと改称)。

CBLJによる教師支援は、子供のための独自の教材開発、教員養成、中南米各国の教員のための研修など、ニーズに応じた多種多様なプログラムが用意されている。

学習者支援では、「硬筆、書道、絵画、マンガ・アニメ、作文」など広範囲のジャンルを含む生徒作品コンクール、子供日本語テストなど、年少者が参加しやすいプログラムを多く提供している。さらに、日本語の実践を目的とした学習者同士の交流「ふれあいセミナー」や日本語・日本文化体験を目的とした「ふれあい日本の旅」など意欲的な活動を展開し、国際友好親善に努めている。

CBLJの活動はブラジルにとどまらず、教員養成や学習支援のプログラムを通して、ペルー、ボリビア、パラグアイなどブラジル同様に日系人の学習人口が多いラテンアメリカ諸国における日本語教育の中核的役割を果たしている。

このように、CBLJは30年以上の長きにわたり日本語教育を通じた国際相互理解の促進に貢献してきており、その業績は国際交流基金賞にふさわしい。

[お問い合わせ]

国際交流基金(ジャパンファウンデーション)
コミュニケーションセンター
電話:03-5369-6075 ファックス:03-5369-6044

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