2020年度国際交流基金地球市民賞 受賞団体

多様な文化の共生の推進

2020年度 受賞

高田馬場さくらクリニック

東京都新宿区

代表者
冨田 茂
設立年
2014年
ウェブサイト
https://www.sakuraclinic.info/
高田馬場さくらクリニックの写真 クリックすると紹介動画にリンクします。

授賞理由

外国人住民が気軽に通えるまちのクリニックを開院

高田馬場さくらクリニックは、外国人が多く暮らす新宿区高田馬場にある、街中の医院です。日本の医療機関が、一般に制度の違いや医療・健康に関わるコミュニケーションの難しさから、外国人患者の受け入れに苦労しているところ、本クリニックでは、ミャンマーやネパール、カンボジア、ベトナム、タイなどアジアの国々にルーツのある人々をスタッフとして協働し、地域の外国人コミュニティーと連携しながら多言語で受診者のニーズに寄り添った対応をすることで、外国人患者が気軽に通える場となっています。外国人住民の予防医療やスタッフの人材育成にも尽力し、通常の業務を工夫することで、持続性のある多文化共生への貢献を行っています。

受賞団体活動紹介

高田馬場さくらクリニックは2014年に高田馬場駅近くのビルの中に開院した小さな医院です。整形外科医師、内科非常勤医師、看護師、医療事務、東南アジア・南アジアの国々出身の医療通訳等のチームで地域の多文化共生に健康の面から取り組んでいます。クリニックのある新宿区高田馬場は東京のリトルヤンゴンとも呼ばれ、ミャンマー人が多く住んでいる他、比較的新しく日本に増えたネパールやベトナムなどの国の出身者も多く住んでいます。
外国人住民のなかには、慣れない肉体労働や母国と異なる食生活から体調を崩したり、不調を抱えていても言葉や制度の違いに不安を感じて受診にいたらず、母国の薬や売薬による自己治療に頼ったりしている人が少なくありませんでした。日本人・外国人の区別なく、病気が重くなり働けなくなってから病院に運ばれる前に気軽に相談できる場を目指して、外国人当事者もスタッフとして参加し日本人スタッフと協働しています。2020年には1日に20~40人ほどの外国人住民が受診されています。診療以外にも電話や窓口で話を聞き、どのような医療機関または保健所などへ行ったらよいかという案内も行っています。
外国人住民の健康増進意識を高める活動にも取り組んでいます。都内で行われるミャンマーの水かけ祭りなどに参加して身体測定や血圧測定、健康相談を行ったり、他団体と連携して外国人住民への健康セミナーを行ったりもしています。また、言葉や制度に不慣れで住民健診を受けられない人もいます。制度を案内し、問診票等の翻訳や手続き書類作成の手伝いを通じて受診し易くするとともに、結果説明や事後指導も通訳や多言語リーフレットを通じて行っています。
これらの活動を通して、日本人スタッフは学会・論文での発表を行い、外国人スタッフは日本で初めての医療通訳士に認定されるなど、お互いに学びの場となっています。
2020年は新型コロナウイルス流行下で外国人観光客が途絶え、お祭りやセミナーへの参加もできなくなりました。その中で外国人住民の受診は過去最高を記録しており、今後も身の丈に合った持続性のある取り組みを目指します。

受賞の言葉

このたびは歴史ある国際交流基金地球市民賞をいただき、感謝と御礼を申し上げます。
日本人・外国人の区別なく皆が安心して保健医療にアクセスできる地域社会が理想です。その一つの提案として私たちを例に選んでいただいたのだと思います。
いつもこころよく対応してくださる周囲の病院、医院、薬局、保健所や行政、NPO、外国人コミュニティーの皆様の助けと、日々訪れてくださる日本人・外国人住民の皆様のご理解のおかげで活動ができています。一同心から感謝いたします。今回の栄誉を励みとし、今後も地域医療と多文化共生の推進に尽力する所存です。


市民連携・国際相互理解の推進

2020年度 受賞

特定非営利活動法人 海外に子ども用車椅子を送る会

東京都福生市

代表者
森田 祐和
設立年
2004年
ウェブサイト
https://kaigaikurumaisu.org/
海外に子ども用車椅子を送る会の写真 クリックすると紹介動画にリンクします。

授賞理由

多様な担い手によって海外の障がいを持つ子どもたちに車椅子を送る

海外に子ども用車椅子を送る会は、国内で利用されなくなった子ども用車椅子を回収、整備した上で、発展途上国へ無償で提供することを通じて、障がいを持つ子どもの命を守り、社会生活への参加を促進することを目指しています。車椅子の清掃、整備に参加する合計50人ほどのボランティアの約半数は日本で生活する外国人であり、自国に車椅子を送りたいという気持ちで参加しています。また、活動の傍ら自国料理をふるまうなど、国際交流の場が生まれています。これまでに、8500台余りの子ども用車椅子を24か国に届けており、国内および現地の協力団体選び、届けた後の整備など、継続的な取り組みとしての体制をしっかり構築しています。

受賞団体活動紹介

海外に子ども用車椅子を送る会は、2004年からの活動で、24か国8500台以上の車椅子を、必要とする子どもたちに届けてきました。家の中に閉じこもったままではなく、身体の成長に不可欠な太陽の光、外気を感じる屋外活動を増やし、より健康な生活を楽しんでもらいたい、また絶対に必要だ、と自ら障がい児をもつ代表者の思いから始まった活動です。
子ども用車椅子のほとんどは国内の特別支援学校から収集します。福祉制度のもと使用後3年前後で成長した子どもに合わせ、新しい車椅子に乗り換えることができるため、国内ではリユースの場がないのが実情です。全体清掃、機能整備をボランティアの作業定例会で行います。高校生、大学生、社会人、社会人OB/OG、海外からの日本居住者も多く参加しています。現在は分散したミニ例会を余儀なくされていますが、コロナ禍以前では月一回の定例作業会で50~70名が一同に集まって活動しました。準備した車椅子は各国のNGO団体、福祉団体、公共機関と連携しながら、家庭・学校・病院に届けます。機会あれば家庭訪問・スタディーツアー・NGOとの交流など、現地活動も経験しています。
私たちの願いは、必要とする子供たちに車椅子が一台でも多くが行き渡ること。現地での車椅子のリユースの輪をつくるため、現地NGOの中にはエンジニアリングショップを開設し、現地での整備、製作に取り組む動きも始まっており、私たちも様々な形で協力を続けています。

受賞の言葉

このたび歴史ある国際交流基金地球市民賞受賞のご連絡をいただき、驚きながら大変うれしく思っています。私たちの活動への大きな励ましとなります。大変ありがとうございました。
16年にわたり活動が続いているのは、ボランティア、車椅子を提供いただく方々、資金支援をいただいている企業、グループ、個人、公益団体、また現地NGOの皆さんの協力の賜物です。これら支援者の皆さんと一緒に受賞の喜びを分かち合いたいと思っています。
国外へつなぐ活動ゆえに、コロナ禍で思うように進められないもどかしさに悩んでいるところですが、今回の受賞を大きな励ましとして、一台でも多くの子ども用車椅子を届け続け、子どもたちの笑顔に会い、さらなる活動展開へのエネルギーにしたいと思います。ありがとうございました。


文化・芸術による地域づくりの推進

2020年度 受賞

特定非営利活動法人 こえとことばとこころの部屋

大阪府大阪市

代表者
上田 假奈代
設立年
2003年
ウェブサイト
http://cocoroom.org/
ソーシャルメディア
https://twitter.com/info_cocoroom
こえとことばとこころの部屋の写真 クリックすると紹介動画にリンクします。

授賞理由

出会いと表現の場を開き、社会との関わりを後押しする

こえとことばとこころの部屋「ココルーム」は、「生きることは表現」をテーマに、高度経済成長を支えた労働者のまち、大阪市西成区・釜ヶ崎に深く根ざしながら、さまざまな背景の人々が表現を通じて他者と出会い、社会との関わりを回復するための活動に取り組んでいます。喫茶店やゲストハウスの運営により持続的な活動基盤を作り、多様な相談に耳を傾け、滞在する外国人旅行者も巻き込みつつ、誰でも参加可能な学びあいの場である「釜ヶ崎芸術大学」や、俳句会、朗読会、「まちかど保健室」などを折々に開催。海外の同種の団体やアーティストとの交流にも活動の幅を広げながら、元労働者や生きづらさを抱える人々が、未来を生きるための自立・自律を後押ししています。

受賞団体活動紹介

「人生において、出会いが大きな要素を果たす。芸術とは『生きる術』である。」と捉え、2003年の活動当初から「喫茶店のふり」をして、「出会いと表現の場」を営み、地域・社会との関わりをさぐる。制度や補助金という下支えがないため運営の基盤は脆弱だが、喫茶業・宿泊業、アートマネジメント業を生業として活動を続けてきた。出会う人々は近所の人たちや通りすがりの人々、活動に興味を持っている人、ニートやホームレス、障がいを持つ人たち、依存症の人たちなど、ともかく多様。社会で周縁化された人々と関わりながら、彼らがこころをひらいていくときの表現の力、すごみに勇気づけられ、「支援する/される」を越えてゆく「生きる術」のありかたを模索する。
2005年から「アジアアートマネジメント会議」に毎年参加し、アジア各国のアーティストやアートマネージャーと交流、2007年からブリティッシュ・カウンシルを通じてイギリスの「ストリートワイズ・オペラ」と交流をはじめ、これまで共同作品制作などに取り組み、「Arts & Homelessness International」に参画している。
拠点をおく大阪市西成区・通称釜ヶ崎の街を大学に見立てた「釜ヶ崎芸術大学」を2012年に開講し、地域内外をつなぐ人々の学び合いが生まれている。2016年に同地域でゲストハウスを開業し、外国人との交流の拠点となっている。2019年、アフガニスタンで井戸掘りを実践してきたペシャワール会の蓮岡氏と釜ヶ崎の元日雇い労働者を先生に、こどもや若者、外国人など700名でゲストハウスの庭に手作業で井戸を掘った。また難民の人々との関わりも増えている。釜ヶ崎というローカルな場での芸術実践であるからこそ、国際的なネットワークにつながり、共生社会への具体的な一歩を積み重ねている。

受賞の言葉

受賞の知らせが届いた現場に居合わせた10歳の子どもが、すかさず「地球市民賞?釜ヶ崎のおっちゃんも地球市民やで!」と言いました。その場のみんなが頷きました。釜ヶ崎の人々、この場を開き続けたスタッフたち、応援してくださったみなさん、地球を家と考える人々とともに受賞をわかちあいます。励みになります。ほんとうにありがとうございます。
これからも変わりゆく社会のなかで自らの言葉を携えて、顔をあげて、「出会いと表現の場」の可能性を拓きます。

What We Do事業内容を知る