令和8年度舞台芸術専門家交流事業『BIOTOPE―劇作家のためのキャンプ』
国際交流基金(JF)は、SPAC -静岡県舞台芸術センターと共催し、日本と東南アジア地域の舞台芸術関係者を対象とした人的交流事業「BIOTOPE(ビオトープ)」を2026年から2028年までの3年間にわたり展開します。本事業の一つとして、東南アジアと日本の劇作家が交流しながら創作に取り組むインキュベーション・プログラム「BIOTOPE―劇作家のためのキャンプ」を実施します。
本キャンプは、SPACの創作拠点である「舞台芸術公園」をひとつの実験場として、アジア地域の視点からの演劇/舞台芸術とは何か、戯曲とは何か、という問いに果敢に挑むアーティストたちと共に対話と実験を積み重ねるプラットフォームです。選ばれた劇作家7名は、3年間にわたり静岡を拠点としながら、フィリピンやインドネシアへ共に旅をし各国のフィスティバルに参加します。あわせて、参加者それぞれの関心に応じ、訪問先の都市でリサーチも行います。さらに本プロジェクトにはディレクターやプロデューサー、コラボレーター、ファシリテーターが伴走し、専門的な視点から助言を行いながら、参加者は創作への思考を深めます。
多様なバックグラウンドをもつ劇作家たちが、国際的なプラットフォームに定期的に集い、自身の創作に関する探究や互いの交流・対話を深めながら、新作創作へ取り組んでいきます。
なお、本プロジェクトを通して完成した作品は、2028年の「SHIZUOKAせかい演劇祭」にて、リーディング上演予定です。
概要
| 実施期間 |
|
|---|---|
| 実施国 | 日本(静岡)、インドネシア(ジョグジャカルタ) |
| 訪問先 | SHIZUOKAせかい演劇祭2026(静岡)、Asia Playwrights Meeting 2026(ジョグジャカルタ) |
| 参加アーティスト |
※名前アルファベット順 |
| クレジット | 主催:国際交流基金、SPAC-静岡舞台芸術センター |
関連プログラム概要
せかいの劇作家がふるまうランチ会
キャンプに参加する劇作家たちが、出身地のご飯を振舞いながら、彼らの生活や創作についてカジュアルに話すランチ会を開催。
| 日時 | 2026年5月2日(土曜日) 12時 開始 |
|---|---|
| 会場 | 舞台芸術公園 せかいの劇場ミュージアム「てあとろん」 |
| 参加費 | 参加費:1,000円(食事付/要予約)※1 |
| 通訳 | 日本語、英語 |
| クレジット | 主催:国際交流基金、SPAC-静岡舞台芸術センター |
【SHIZUOKAせかい演劇祭 公式ウェブサイト】 https://spac.or.jp/project/biotope
※1【チケット購入・参加予約】 詳細はこちらから:https://festival-shizuoka.jp/ticket/
3年間の主なスケジュール(予定)
- 2026年4月~5月:日本・静岡(SHIZUOKAせかい演劇祭2026期間中)
- 「SHIZUOKAせかい演劇祭2026」期間中、キャンプ参加者は、舞台芸術公園に滞在。東南アジア諸国より招へいする舞台芸術作品などの観劇に加えワークショップへの参加、静岡でのリサーチ、ディスカッションを通して、参加者それぞれが今後3年間で掘り下げるテーマを探っていく。また、演劇祭の観客との交流の場として、公開イベントなども開催。
- 2026年7月~8月:インドネシア・ジョグジャカルタ
- ジョグジャカルタで開催される「アジア劇作家ミーティング(Asian Playwrights Meeting: APM)」期間中に滞在し、観劇・リサーチ・ディスカッションを実施。
- 2027年:フィリピン・マニラ/日本・静岡
- マニラの若手劇作家の作品を取り上げる短編作品の演劇祭ザ・ヴァージン・ラボフェスト(The Virgin Labfest)期間中に滞在(6月頃)。舞台芸術公園にて、合宿形式でゲスト講師を招き、作品完成に向けてディスカッション・執筆を行う(2028年1月頃)。
- 2028年:成果発表(SHIZUOKAせかい演劇祭)
- 「SHIZUOKAせかい演劇祭2028」にて、全ての参加者の作品をリーディング形式で発表。
アーティストプロフィール
アドリアーナ・ノルディン・マナン Adriana Nordin Manan(マレーシア)

Photo by SueAnne Koh
作家、翻訳者、劇作家、研究者、キュレーター、ドラマトゥルク、教育者、起業家という8つの専門的役割を兼ね備えている。政策調査のキャリアから芸術分野へと進み、Cocoon Creative Lab(CCL)を創設し、芸術監督を務める。遊び場でありシンクタンクでもあると評されるCCLは、言語、ストーリーテリング、新作のインキュベーションを通じた文化交流に取り組み、多声的な世界に橋を架ける活動を行っている。
2023年、初の長編戯曲『Fault Lines』で劇作家としてデビューし、ニューヨークのThe Playwrights Realm 主催「International Scratchpad Series」準決勝進出(2021年)をはじめ、BOH Cameronian Arts Awards(2024年)で助演俳優賞、最優秀オリジナル脚本賞、最優秀演出賞、2023年ベスト作品賞など、多くの評価を受けた。2019年には、ロクマン・ハキム作『Pengap』の翻訳が、マレー語作品として初めてコモンウェルス短編小説賞の最終候補に選ばれた。2025年には、メキシコ文学の古典であるフアン・ルルフォ『ペドロ・パラモ』をスペイン語からマレー語に翻訳した。
現在は、映画のキュレーション、人材育成、語学教育へとクリエイティブな活動領域を広げている。全体として、創造性と社会のあらゆる層―特に無国籍者、受刑者、芸術へのアクセスから伝統的に排除されてきた人びと―のエンパワーメントの交差する領域に関心を寄せている。
ニューヨーク大学で政治学修士号、コルビー大学(メイン州)で学士号を取得。クアラルンプールで生まれ育ち、現在も拠点としている。マレー語、英語、スペイン語を話す。
ゲラン・ヴァレラ・ルアールカ Guelan Varela-Luarca(フィリピン)

俳優、劇作家、翻訳者、演出家。近年の主な作品には、マイク・デ・レオンの名作映画『Kisapmata』の舞台脚色と演出、戯曲『Dogsblood』のリーディング公演、ニック・ホアキンの代表的戯曲『Portrait of the Artist as Filipino』をジェリー・レスペトによる新たなフィリピン語訳を基に翻案し『Quomodo Desolata Es?』として演出、ジャンカルロ・アブラハン監督による高い評価を受けた映画『Dagitab』の舞台化・演出、時間と喪失をテーマにした『3 Upuan』の脚本・演出などがある。
アテネオ・デ・マニラ大学の美術学部で教えるほか、新しい劇団 Scene Change の創設メンバーでありプログラマーでもある。ニューヨーク市立大学ハンター校で劇作(戯曲執筆)の芸術学修士号を取得し、2024年ドン・カルロス・パランカ記念賞殿堂入りを果たした。
チャトゥラチャイ・シーチャンワンペン Jaturachai Srichanwanpen(タイ)

バンコクを拠点とするタイのシアターメーカー、俳優、作家。彼の作品は、日常と静かな演劇の魔法の間を行き来し、恋人、家族、友人、見知らぬ者などの関係の中での小さな瞬間が、社会の深いリズムを映し出す様子を探求する。オリジナル脚本と翻案を組み合わせ、感情の真実性と人と人とのつながりを重視している。
タイの演劇界で多くの作品を執筆・演出しており、代表作に『Big Head Monster』(2013)、『The Comments』(2014)、『Monrak Transistor』(2022)がある。国際的なプロジェクトとしては、シンガポールの劇作家タン・ショウチェンとの協働『Open Waters』(2016–2018)があり、シンガポール芸術評議会の助成を受け、バンコクとシンガポールの関係性を探る脚本が生み出された。2019年には、ポルトガルとタイの外交関係500周年を記念し、在タイ・ポルトガル大使館の委嘱で『My Mother’s Kitchen』を執筆。
俳優としても国内外の舞台に出演し、とりわけ『เพลงนี้พ่อเคยร้อง(This Song Father Used to Sing)』では出演と共に作品創作にも携わる。2015年にタイで初演され、2019年以降アジアとヨーロッパを巡演している。 バンコク大学で広告学の学士号、シンガポールのラサール芸術大学で芸術・文化マネジメントの修士号を取得。
ジャン・バプティスト・プー Jean-Baptiste Phou(カンボジア)

Photo by Annie Gozard
2008年に俳優としてキャリアを開始し、その後、舞台作品の執筆・演出へと活動を広げた。代表作に『Cambodge, me voici』(L’Asiathèque, 2017)があり、2023年には『80 mots du Cambodge』(L’Asiathèque)、続いて2024年に回想録『La Peau hors du placard』(Le Seuil)を出版し、それを舞台作品にも発展させた。2022年には映画『La Langue de ma mère』を監督し、ヴズール国際アジア映画祭で観客賞(最優秀ドキュメンタリー)を受賞。2026年にはサンフランシスコのヴィラ・アルベルティーヌ・フェローに選出されている。
西尾佳織(日本)

1985年東京生まれ。劇作家、演出家、鳥公園主宰。幼少期をマレーシアで過ごす。東京大学にて寺山修司を、東京藝術大学大学院にて太田省吾を研究。2007年に鳥公園を結成以降、全作品の脚本・演出を担当してきたが、2020~2022年は3人のアソシエイトアーティストに演出を委ねる体制に移行。2024年より演出を再開。社会の中で人と人のあいだに引かれる境界線を、さまざまな形で問い直す作品をつくっている。2014年に『カンロ』、2018年に『ヨブ呼んでるよ』、2020年に『終わりにする、一人と一人が丘』で岸田國士戯曲賞最終候補にノミネート。フェスティバル/トーキョー、SPACふじのくに⇄せかい演劇祭、瀬戸内国際芸術祭、アジア女性演出家展(ソウル)など、国際演劇祭への招聘多数。近年のプロジェクトに、マレーシアのダンサー・振付家のLee Ren Xinとの「からゆきさん」共同リサーチや、そこから生まれた『泳ぐ彼女は果てを見ている』など。2025年よりセゾン文化財団フェローⅡ。
山田カイル(日本)

Photo by Megumi Oku
演劇作家、ドラマトゥルク、翻訳家。抗原劇場代表。1993年テキサスに生まれ、その後青森で育つ。大学院在籍中にダンスドラマトゥルクとして活動を始め、修了後、自身の創作活動を始動。地域に残る民話や近代以前のテクストに取材し、演劇というメディアの仮設性を通して、悠久の時間感覚を描き出すパフォーマンスを制作している。自ら演出する戯曲のほかに、ブラッドベリの『華氏451度』に着想を得て、観客が本を暗記するプロジェクト『華氏同盟』や、熊害のリサーチプロジェクト『A CALL TO BEAR ARMS』など、「舞台芸術」の枠外での「演劇」の制作にも取り組んでいる。
ショヒフル・リドイ Shohifur Ridho’i(インドネシア)

Photo by Farhan Rizki
パフォーマンス、リサーチ、キュレーションの交差点で活動する作家・演出家。ジョグジャカルタとマドゥラを拠点に、日常の身体を「生産・分配・権力交渉」の場として見つめ、いかに小さな振る舞いが社会関係を媒介し歴史を反映するのか探求している。身体化された社会の規範、思索、歴史記述の交差する領域、また同時代のインドネシアのパフォーマンスにおける表象(representation)と現前(presentation)の関係に関心がある。
rokateaterの創設者兼芸術監督、インドネシア・東ジャワ州のマドゥラの芸術コレクティブ Lembâna Artgroecosystem の共同イニシエーター、インドネシアのパフォーマンス実践者が集うガラシ・パフォーマンス・インスティテュートのネットワークコーディネーターを務める。
スタッフプロフィール
ディレクター:石神夏希(日本)

Photo by Natsumi Makita(F4,5)
劇作家。国内外で都市やコミュニティのオルタナティブなふるまいを上演する演劇やアートプロジェクトを⼿がける。ディレクションの仕事として「東アジア⽂化都市2019豊島」舞台芸術部⾨事業ディレクター、ADAM Artist Lab 2019(台北)ゲストキュレーター、静岡市まちは劇場『きょうの演劇』企画・ディレクター(2021年度)他。SPACでは『弱法師』(作:三島由紀夫)、『お艶の恋』(原作:谷崎潤一郎『お艶殺し』)を演出、「ふじのくに⇄せかい演劇祭2024」にて間食付きツアーパフォーマンス『かちかち山の台所』を作・演出。「SPAC秋のシーズン2025-2026」よりアーティスティック・ディレクターを務める。
プロデューサー:前原拓也(日本)

Photo by Christian Hartmann
ドラマトゥルク、翻訳家、制作。2022年より、文化庁新進芸術家海外研修制度にて2年間ミュンヘンに滞在し、アウグスト・エヴァーディング演劇アカデミーのドラマトゥルギー科修士課程修了。2025年より、SPAC-静岡県舞台芸術センターに勤務し、SHIZUOKAせかい演劇祭のプログラミングにも携わる。またフリーランスとして、演劇やオペラのドラマトゥルクとして活動。これまで、小野寺修二、稲葉賀恵、佐藤美晴、額田大志などの演出作品や、向井航などの作曲作品にドラマトゥルクとして携わる。字幕を中心にドイツ語翻訳家としても活動する。
コラボレーター:マルコ・ヴィアナ Marco Viaña(フィリピン)

Photo by Paw Castillo
俳優、演出家、デザイナーとして高く評価され、授賞経験を持つ。劇団タンハラン・フィリピノの俳優としてキャリアをスタートし、フィリピンで基礎演技クラス、フォーラム・シアター・ワークショップ、子ども向けのアート・ワークショップを指導するユニセフ認定の俳優ファシリテーターの一員としても活動した。一方で、劇団タンハラン・フィリピノ作品の舞台や衣装のデザインを担当し、創作活動の幅を広げている。携わった作品は『Lam-ang』、『Batang Mujahideen』、『Sandosenang Sapatos』など。『Nang Dalawin ng Pag-ibig si Juan Tamad』はロシアのモスクワ開催の「2018年ワールド・シアター・コングレス」で上演された。その後、アートマネジメントの分野へと活動の幅を広げ、センターステージ米国アーティスト・イン・レジデンス(2023)、YPAM(横浜国際舞台芸術ミーティング)(2024)・Asian Producers’ Platform (APP)キャンプ(2025)に参加。現在は、フィリピンの若手劇作家の登竜門であるザ・ヴァージン・ラボフェストの共同ディレクター、およびフィリピンの国立劇団であるタンハラン・フィリピノのアソシエイト・アーティスティック・ディレクターを務めている。
コラボレーター:ムハンマド・アベ Muhammad Abe(インドネシア)

ムハンマド・アベはジョグジャカルタを拠点に活動している。ガジャマダ大学大学院にてパフォーマンス&ビジュアルアーツ研究を専攻し修士課程を修了。インドネシア・ドラマティック・リーディング・フェスティバル(IDRF)のディレクターであり、インドネシア・アーツ&シアター・カンファレンスの副ディレクターを務めるほか、Gymnastik Emporium の共同イニシエーター兼プロデューサーでもある。2019年には、ジョグジャカルタにおいてアジア劇作家ミーティング(APM)のプロデューサーを務めた。また、2024年にインドネシア・アーツ&シアター・カンファレンスと共にポストドラマ演劇ワークショップを開催し、さらにクローラ財団にて 2023〜2024年に実施されたインドネシア・プロデューサー・ワークショップではファシリテーターを務めた。インドネシアの舞台芸術に関わるアーティストたちと、インディペンデントなプロデューサーとしても協働している。
ファシリテーター:山口惠子

Photo by Koichiro Kojima
京都在住。演劇をつくる人。The Rose Bruford College にて西欧演劇の実技と理論を学ぶ。帰国後、国際共同制作に多数携わる。2011年に演劇グループ BRDG を立ち上げ、日々出会う人々へのインタビューやワークショップを通して作品を創作。2024年、共同制作『Sali-Sari Portal Café』をマニラにて上演。2021〜23年 東京芸術祭 Asian Performing Arts Camp ファシリテーター。2023〜24年度 セゾン・フェロー。
[お問い合わせ]
国際交流基金(JF)
文化事業部 舞台芸術チーム
電話:03-5369-6063
E-mail:pa@jpf.go.jp (メールを送る際は、全角@マークを半角に変更してください。)