アゼルバイジャン(2020年度)

日本語教育 国・地域別情報

2018年度日本語教育機関調査結果

機関数 教師数 学習者数※
5 12 255
※学習者数の内訳
教育機関の種別 人数 割合
初等教育 46 18.0%
中等教育 50 19.6%
高等教育 95 37.3%
学校教育以外 64 25.1%
合計 255 100%

(注) 2018年度日本語教育機関調査は、2018年5月~2019年3月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 2000年9月、バクー国立大学で日本語講座が新設され、同大学には翌年2001年から国際交流基金より日本語教師が派遣されている。現在、同大学はアゼルバイジャン共和国内における日本語教育普及の中心的な役割を担っている。
 2009年9月、教育大臣の発案から、3つの中等教育機関において日本語正規授業が開始され、学習者数が大幅に増えた。また、2011年9月よりアゼルバイジャン言語大学において、地域研究・国際関係学部の外国語学科履修科目として日本語講座が開設され、日本語が専門的に学べる高等教育機関はこれで2つとなった。さらに、同大学では2013年より社会人向けの一般コースも開設された。
 高等教育機関以外でも、日本文化やサブカルチャーに興味を持ち、日本語の学習を始めた若い世代の独習者を中心に、「Yapon.az」という団体でサークル活動が行われている。現在は、独習者だけではなく、日本語講座を持つバクー国立大学、アゼルバイジャン言語大学の学生も参加するようになっている。アゼルバイジャン国内の大学生を対象とした日本語弁論大会等では、「Yapon.az」所属の大学生が常に高い能力を発揮している。
 今後は能力の高い日本語指導者の需要が増えるとともに、国内における日本語教育の裾野が広がっていくことが期待される。

背景

 1991年に独立後、混乱期を経て国内情勢が安定したことにより、1995年以降、日本を含め西側資本が流入した。これに伴い、日本に関する情報も増え、対日関心が高まった。

特徴

 日本語教育が行われている大学や中等教育機関はバクー市内に集中している。

最新動向

 2017年3月、アゼルバイジャンにて「第5回コーカサス日本語教育セミナー」が開催され、アゼルバイジャン、グルジア、トルコの日本語教育関係者による研究発表やワークショップなどが行われた。2014年6月にはアゼルバイジャン言語大学において「第2回GUAM諸国合同日本語弁論大会」が開催された。この大会は、グルジア、ウクライナ、アゼルバイジャン、モルドバ、ベラルーシで日本語を学ぶ大学生による弁論大会として前年にウクライナにて始まったものである。上記のような国際的な事業を主催することにより、近隣国との交流や連携、情報交換を深めている。また、アゼルバイジャン国内最大の行事として「バクー弁論大会」が毎年行われている。大会参加者はバクー国立大学、アゼルバイジャン言語大学の学生のみであったが、2016年より、大学で日本語を専攻していない大学生も参加できるようになった。2017年からは大学生以下の「子供部門」が新設され、アゼルバイジャン国内の日本語学習者の多くが大会に参加できるようになっている。大会優勝者はモスクワで行われる「モスクワ学生日本語弁論大会」に参加する権利を得るが、モスクワ大会でも、2016年度4位、2017年度3位と好成績を収めている。

教育段階別の状況

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 2004年秋、バクー市内の中等教育機関1校(エリタル・ギムナジア)でバクー国立大学の学生が教師となって課外科目として日本語の講座が開始された。その後、2009年10月より、バクー市内3か所の中等教育機関(エリタル・ギムナジア、テレギ・リセ、第225番学校)が試験校となり、第二外国語の選択必須科目として正規授業が開始された。当地の初等・中等教育機関は1年生から11年生(6歳から17歳)までの一貫校であり、日本語教育は2017年10月現在、中等部にあたる5年生から9年生において実施されている。ただし、エリタル・ギムナジアでは2013年9月より、テレギ・リセでは2014年9月より機関の事情により休止しており、225番学校のみで日本語教育が実施されている。

高等教育

 2017年10月現在、主専攻として日本語が学べるのは、バクー国立大学、アゼルバイジャン言語大学の2大学であるが、バクー国立大学のみ修士課程も開設している。

学校教育以外

  • 日本語会話クラブ
     2005年よりバクー国立大学日本語講座がバクー日本人会及び日本大使館の協力を得て開始され、2012年10月からはアゼルバイジャン言語大学日本語講座の学生も参加するようになった。月1回、大使館文化室で在留邦人と日本語学習者との会話の場を設けている。具体的には、身近なことから時事問題に至るまで毎月テーマを決めておき、邦人の人数に分かれて班を構成し、話し合っている。2016年より学習者の希望により時間を従来の1時間から90分に延長して行っている。
     開始:2005年12月13日
     学習者数(毎回出席者):学生約30名、邦人約6名
  • アゼルバイジャン言語大学日本センター
     2013年より社会人向けの一般コースが開設された。講師はアゼルバイジャン言語大学日本語講座の講師が兼任している。
  • 上記のセンター以外にも日本ファンのサークル「Yapon.az」が日本語講座を行っている。日本語や日本文化に関する興味が高い学習者20名ほどが学んでいる。年齢層は幅広く、学校の生徒や40代の社会人なども所属している。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 4-5-2制。
 学習開始年齢は6歳または7歳。
 初等・中等教育機関は、「オルタメクテブ」と呼ばれ、日本の教育制度における小中高一貫校にて9年または11年(高等教育進学希望者)の教育が行われている。1年生から4年生までの4年間が初等部、5年生から9年生までの5年間が中等部、10年生と11年生の2年間が高等部に当たり、そのうちはじめの9年間が義務教育期間。
 高等教育機関は、普通大学(4年)、コレジ(2年または3年)、その他、技術学校、商業学校等。

教育行政

 教育省が管轄する。

言語事情

 アゼルバイジャン語が公用語であるが、首都バクーを中心にロシア語も広く使用されている。しかし、政府の公的文書などは全てアゼルバイジャン語の使用が義務付けられている。近年、アゼルバイジャン語使用の傾向は進んでおり、大学で日本語を専攻する学生の大半はアゼルバイジャン語のみの教育を受けてきた学生となっている。

外国語教育

 すべてのオルタメクテブで、外国語教育は法律により5年生から始められる。主として英語、ドイツ語、フランス語の中から選択必修する。しかし、多くの学校では、実際上、英語教育が2年生から行われている。
 ロシア語で教育を行うオルタメクテブでは、1年生からロシア語で教育を行い、アゼルバイジャン語授業は週2回行われる。他方、アゼルバイジャン語で教育を行うオルタメクテブでは、ロシア語の扱いは教育機関により異なり、必修とは限らない。

外国語の中での日本語の人気

 歴史的背景からロシア語を学ぶ生徒が多いが、近年はトルコ語を学ぶ生徒も増えている。
 上記の2言語以外では英語の人気が高い。またフランス語、ドイツ語の民間語学学校でのコースも多くみられる。そのような中、経済、文化等に興味関心を持って、日本語、中国語、韓国語といった東アジア言語を学び始める生徒もいる。日本語については学習できる機関が限られているが、日本ファンサークルやプライベートレッスンで学んでいるケースがある。

大学入試での日本語の扱い

 大学入試で日本語は扱われていない。

学習環境

教材

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

第225番学校 『ひらがな・カタカナ練習帳 かなマスター』アークアカデミー教材作成委員会(専門教育出版)、『こどものにほんごⅠ』西原鈴子監修(スリーエーネットワーク)など。

高等教育

バクー国立大学: 初級 主教材は、『みんなの日本語 初級Ⅰ、Ⅱ』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)、『Kanji Look and learn』坂野永理ほか(ジャパンタイムズ)。副教材は、『みんなの日本語 初級で読めるトピック25』牧野昭子ほか(スリーエーネットワーク)、『みんなの日本語 聴解タスク25』牧野昭子ほか(スリーエーネットワーク)等、適宜初級教材を使用。
中級 主教材は、『ニューアプローチ中級日本語[基礎編]』小柳昇(日本語研究社)、『KANJI IN CONTEXT Workbook vol.1』アメリカ・カナダ大学連合日本研究センター(ジャパンタイムズ)。副教材は、適宜中級教材を使用。
上級 主教材は、『ニューアプローチ中上級日本語[完成編]』小柳昇(日本語研究社)、『KANJI IN CONTEXT Workbook vol.2』(前出)。副教材は、適宜中級・上級教材、または生教材を使用。
アゼルバイジャン
言語大学
初級 主教材は、『みんなの日本語 初級Ⅰ、Ⅱ』(前出)、『BASIC KANJI BOOK』加納千恵子ほか(凡人社)。副教材は、『みんなの日本語 初級で読めるトピック25』(前出)等、適宜初級教材を使用。
中級 主教材は、『ニューアプローチ中級日本語[基礎編]』(前出)、『KANJI IN CONTEXT Workbook vol.1』(前出)。副教材は、適宜中級教材を使用。
アゼルバイジャン
国立経済大学
初級 『みんなの日本語 初級Ⅰ』(前出)
ハザル大学 初級 『みんなの日本語 初級Ⅰ』(前出)

学校教育以外

 『みんなの日本語 Ⅰ、Ⅱ』(前出)がよく使用されている。

IT・視聴覚機材

中等教育

 日本語教育にIT・視聴覚機材は使用していない。

高等教育

 アゼルバイジャン言語大学では学生が自由に使用できるパソコンがあり、自習用などに使用されている。2017年にバクー国立大学の日本語学科教室が草の根文化無償資金協力により改装され、ノートパソコン、プリンター、プロジェクター等が設置された。また教室内でインターネットも使用できるようになった。

学校教育以外

 Yapon.azではSkypeSNSなどを使用して日本人との交流を図り、アゼルバイジャンの情報を日本語で発信するなど、インターネットを使っての交流を適宜行っている。

教師

資格要件

初等教育

 初等教育機関では、学士号取得が望ましいが、大学最終学年から採用が可能。

中等教育

 中等教育機関では、学士取得が望ましいが、大学最終学年から採用が可能。

高等教育

 大学で教える場合は、基本的に修士号以上の学位が必要とされている。また、大学院生であれば、学部授業のための非常勤講師として採用が可能。

学校教育以外

 特に規定なし。大学で日本語を専攻した卒業生や、英語教師などが教えているケースが見られる。

日本語教師養成機関(プログラム)

 国内において日本語教師養成プログラムは実施されていない

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 バクー国立大学に1名(国際交流基金派遣の日本語専門家)。他の現地人教師と同様に日本語の総合的な授業を担当しているほか、現地人教師の研究活動支援、及び教授法の研修なども行っている。在留邦人は50名程度と数少ないが、教師以外の在留邦人、大使館員、日本人留学生などによるゲストとしての授業参加は、時折行われている。

教師研修

 現職の日本語教師対象の研修はない。

現職教師研修プログラム(一覧)

 特になし。

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 日本語能力試験実施のため、2016年度より『日本語能力試験実施委員会』が設置されている。委員会はバクー国立大学講師、アゼルバイジャン言語大学講師、その他訪日経験者を中心として構成されている。

最新動向

 2018年より、日本語教師間の交流を目的とした「日本語教師間情報交換会」が不定期に開催されている。国際交流基金専門家を中心として、参加者を募り、日本語教授の際の疑問点、教育機関間の情報交換等が行われている。

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣(2019年10月現在)

日本語専門家

 バクー国立大学 1名

国際協力機構(JICA)からの派遣

 なし

その他からの派遣

 なし

シラバス・ガイドライン

 統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。

評価・試験

評価・試験の種類

 2016年12月より日本語能力試験が開始された。大学在学者に限らず、大学の卒業生、独習者なども受験している。また、受験者の増加に伴い、2019年7月より年2回開催されている。

日本語教育略史

1995年 私立アジア大学に日本語学科設立(2000年度に同学科閉鎖)
2000年9月 バクー国立大学東洋学部アラビア語学科において日本語学科設置
2004年9月 バクー国立大学東洋学部に修士課程が開講
2004年 バクー国立大学東洋学部アラビア語学科内日本語講座が極東言語学科日本語講座に名称変更
イルヤス・エフェンディフ記念エリタル・ギムナジアで日本語講座(課外科目)開始
2005年 日本大使館にて日本語会話クラブ開催
(バクー国立大学・バクー日本人会共催)
2007年9月 私立ハザル大学にて日本語授業(選択必修科目)を開始
2009年9月 中等教育機関において日本語正規授業(選択必須科目)開始
2009年10月 アゼルバイジャン国立経済大学にて、課外活動で日本語教育が開始
バクー市内の中等教育機関(エリタル・ギムナジア、テレギ・リセ、第225番学校)、で、日本語教育開始
2011年9月 アゼルバイジャン言語大学地域研究・国際関係学部に、日本語講座開設
2013年 アゼルバイジャン言語大学日本センターに、社会人向け一般コース開設
エリタル・ギムナジアの日本語授業が休止
2014年 テレギ・リセでの日本語授業が休止
2016年12月 日本語能力試験開始
What We Do事業内容を知る