ベラルーシ(2020年度)

日本語教育 国・地域別情報

2018年度日本語教育機関調査結果

2018年度日本語教育機関調査結果に関する帯グラフ。機関数は9件、教師は27名。初等教育は0名で全体の0.0%、中等教育は0名で全体の0.0%、高等教育は136名で全体の32.8%、学校教育以外は279名で全体の67.2%。

(注) 2018年度日本語教育機関調査は、2018年5月~2019年3月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 ベラルーシにおける日本語教育は、旧ソ連時代末期に商工会議所や一部の工科系大学で、日本の先進技術を学ぶための翻訳者養成などを目的として開始された。本格的な日本語教育が始まったのは、ソ連崩壊2年後の1993年、ミンスク国立言語大学(当時ミンスク国立外国語教育大学)に日本語学科が開設されてからである。その2年後、ベラルーシ国立大学においても日本語教育が開始されている(当初第二外国語、2002年から主専攻)。ベラルーシ国内の高等教育機関で日本語の専門教育を実施しているのは、2020年10月現在もこの2校のみで変化がない。
 大学以外では、NGO東洋伝統文化協会「葉隠」が日本語教室を開設した2005年以降、ミンスク国立言語大学の一般人対象講座や、NGO日本文化情報センターの日本語教室が開かれている。さらに私営の日本語教室や語学学校での日本語講座においても継続的な日本語教育が行われている。初等・中等教育では、これまで継続的に日本語教育を行った例は確認されていない。
 2003年より毎年開催されている国内日本語弁論大会に加え、2017年にはミンスクで、ベラルーシ国内初となる日本語能力試験の実施が開始され、日本語学習の裾野拡大に貢献している。

背景

 ベラルーシの人々の対日感情は伝統的に良好で、ベラルーシと同様、天然資源に乏しいながら技術大国に発展した日本への敬意・畏怖の念や、チェルノブイリ原発事故という核の悲劇を体験したベラルーシが唯一の戦争被爆国日本に抱く共感もはたらいている。一方で、旧ソ連時代の日本語教育は、モスクワ、レニングラード(現サンクトペテルブルグ)、極東地域など、現在のロシアで行われており、ベラルーシには日本語を解したり日本通と呼べる人材は数少なかった。1980年代中頃からミンスクの商工会議所や国立ラジオ工科大学(現ベラルーシ国立ラジオ工科・情報学大学)で日本語講座が開講されたのは、技術先進国日本に学ぼうという目的からであった。1991年にソ連が崩壊した後は、旧ソ連諸国で外国語教育が重視されるようになり、ベラルーシでも独自に人材を育成する必要性が生じ、本格的な日本語教育が開始されるに至った。

特徴

 ベラルーシにおける日本との政治・経済関係は発展途上にあり、これまで日本語学習の動機となっていたのは多くの場合、「神秘的な国」日本や日本文化、「珍しい」日本語自体への関心であり、通訳や翻訳を除き、仕事のために日本語を学ぼうという学習者は比較的少数であった。旧ソ連時代に教育を受けた世代には、日本への関心が伝統文化に向く傾向があるが、最近は、日本文化のなかでも特にアニメやマンガ、コスプレをはじめとするポップカルチャーに対する関心から学習を始める者が若年層に多い。また、大学での日本語学習者も増加しているが、非営利団体を含む民間の学習機関における学習者数が大学での学習者の倍以上になっているのも、ベラルーシの日本語教育界の特徴である。

最新動向

 インターネットの普及や、2018年に日本とベラルーシが相互に行った入国査証取得手続きの簡略化が手伝って、両国の人的交流は急速に拡大している。日本人との婚姻や仕事、留学に加え、観光旅行に向けた準備を理由に日本語を学習する者も以前に比べ増えてきている。ミンスクでの日本語能力試験は2019年7月で3回目の実施となり、いずれも200名近い受験者を集めている。ロシア・モスクワで毎年実施される国際学生日本語弁論大会でも、ベラルーシ代表は2017年より3年連続で6位内入賞を果たしており、ベラルーシにおける学習者の日本語能力向上が伺われる。日本とベラルーシの二国間関係発展に伴い、日本語能力を活用する場が徐々に広がっていく一方で、大学を含む各機関では日本語教師の不足が顕著になっており、講座の休止を余儀なくされる場合もみられる。学習者のみならず、教師の環境を改善し、労働意欲を向上させることが重要な課題となっている。2020年は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、弁論大会や能力試験など日本語関連イベントが中止になったほか、大学を含む日本語教育機関の多くはオンライン形式での授業に移行した。コロナによって急速な整備を余儀なくされたこうした授業形式は、日本語教育の新たな形態として定着するとみられる。また、首都ミンスクに次ぐ国内第2の都市であるゴメリでは、ゴメリ国立大学で4月から日本語講座が開講された。留学生の予備教育や一般人希望者を対象とする外国語教育を行う学部での授業であるが、これまでミンスク以外の教育機関が日本語教育を行った例は確認されておらず、今後の動向が注目される。

教育段階別の状況

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

高等教育

 ベラルーシで日本語の専門教育を行っている大学は、いずれも首都ミンスクにあるミンスク国立言語大学とベラルーシ国立大学の二つである。ミンスク国立言語大学の日本語主専攻者は、通訳学部東洋語学科に所属しており、通訳者・翻訳者の養成を主な目的とし、語学能力の向上に学習の重点が置かれる。日本語専攻の学生募集は5年に1度に限定され、この方針は開設以来変更がないが、募集人数は当初1グループ15名程度だったのが、現在は1学年2~3グループ計30~40名程度まで拡大している。これに加え、現在は副専攻での日本語教育も行われており、異文化コミュニケーション学部、通訳学部、英語学部などで2~3年次より日本語を選択することが可能である(年によって休止の場合あり)。これら副専攻の学生を合わせると、同大学の日本語学習者数は100名を超える。このほかミンスク国立言語大学では、一般人を対象とする夜間外国語講座も開設されており、日本語講座も2007年に開始されたが、教師の都合がつかずに開講を見送る年もある。
 ベラルーシ国立大学では、日本語教育を始めた当初には国際関係学部で国際関係、国際経済などの専攻学生を対象に、第二外国語として日本語教育が行われていたが、授業時間数も少なかった。2002年秋に設立された同学部の言語地域研究科(旧称東洋語学科、日本学専攻)では、日本語学習により力を入れているほか、社会・経済・文化といった日本事情学習にも時間を割き、総合的な日本専門家の育成を目指している。また、同学部の国際関係専攻生にも日本語を第一外国語、第二外国語として学ぶグループがあるほか、国際経済専攻グループが第二外国語として日本語を学習している。これら日本語学習グループはいずれも2~3年に一度と、募集は不定期である。なお、日本学を含む地域研究専攻者は、2018年より学部の在籍年限が5年から4年に短縮されている。
 両大学の卒業生の日本語関係の進路先としては、在ベラルーシ日本大使館、システム開発会社、日系企業、外務省、在京ベラルーシ大使館などがあるが、留学を経て日本国内で就職する者、より機会の多い隣国ロシアで就職する者など、国外に出る者が相対的に多い。日本留学は、主に文部科学省の奨学金を得て実施されており、1996年以降、日本語・日本文化研修留学生プログラムで平均して毎年2名程度の採用者がある。ベラルーシ国立大学からは、大学推薦枠で早稲田大学への留学(毎年1名)が2005年以来続いているほか、近年は筑波大学、福島大学などの大学協定先への留学が可能となり、私費の場合を含め各学年の大半が在学中に日本留学するようになっている。
 この他、ベラルーシ南部ゴメリ市のゴメリ国立大学では、2020年4月に同大学生を含む一般希望者を対象とする日本語講座が開講されている。

学校教育以外

 大学以外の教育機関では、2005年にNGO法人東洋伝統文化協会「葉隠」が日本語教室を開講している。また、NGO日本文化情報センターでは、1999年のセンター開設に先だってベラルーシ人に対する日本語学習支援を開始、日本の絵本の翻訳や日本語能力試験受験者への支援を続けているほか、2007年からは日本語の授業も行っている。
 このほか、民間の日本語学校や語学学校でも日本語教育が行われている。学習者は、高校生・大学生など若年層が中心であり、近年はこれら機関からも国費留学や仕事、観光を目的に訪日するケースが増加している。こうした学習機関は首都ミンスクに集中しており、地方都市では小規模な学習サークルなどを除けば独学が中心とみられるが、2020年の新型コロナウイルス感染拡大を契機に、スカイプ、ZOOMなどを利用したオンライン形式での学習もより一般的となり、地方在住者にとっては学習機会の拡大が期待される。

教育制度と外国語教育

教育制度

 初等教育(6~9歳、1~4年生)、前期中等教育(10~14歳、5~9年生)、後期中等教育(15~16歳、10・11年生)が「シュコーラ」と呼ばれる中等一般教育で、多くは一貫校である。このうち前期中等教育までが「基礎教育」と呼ばれる義務教育で、9年次修了後は職業技術学校(コレッジ、職業リツェイ)などに進学する選択肢もある(中等専門教育)。
 高等教育機関(大学、アカデミー)へは、中等一般教育ないし中等専門教育修了が入学の条件となる。高等教育制度は旧ソ連時代のものから西側のものに合わせる動きがあり、従来の学部5年間(医学系は6年間)から、4年で学士(bakalavr)課程修了とする大学も増えつつある。
 学部修了後の教育課程としては、従来からの博士候補養成課程(aspirantura、3年)、博士課程(doktorantura、3年以内)に加え、西側に合わせた修士課程(magistratura、マスターコース、1~2年)がアスピラントゥーラの前段階として設置されるようになった。規定の課程を修了し、論文審査に合格すれば、それぞれ修士(magistr)、博士候補(kandidat nauk)、博士(doktor nauk)の学位が授与される。

教育行政

 国内の教育機関は、その教育段階により、州、市、地区など各レベルの行政機関にある教育局・教育課が直接の管轄機関となるが、それら全てを監督し、国家の教育方針策定に携わるのは、ベラルーシ教育省である。また、一部の高等教育機関、中等専門教育機関(職業技術学校、専門学校など)は、その内容により、保健省、国防省、文化省など、教育省以外の省庁が管轄機関となる。

言語事情

 東スラブ語族に属するベラルーシ語及びロシア語が公用語であるが、特に都市部ではロシア語の使用が一般的となっており、ベラルーシ語は一部の表示(駅名や通りの名前)や公的文書、マスコミ(テレビ・ラジオ、新聞など)の一定部分などに限定される。学校教育も、ベラルーシ語・ロシア語がいずれも「国語」として全ての学校で必須教科であり、他の科目も両方の言語での教科書が用意されてはいるが、ベラルーシ語で教授する学校は少数で、生徒数にして国内全体の1割程度にとどまっている。ロシア語で教授する学校では、一部の科目(ベラルーシ語、ベラルーシ文学、ベラルーシ史など)のみがベラルーシ語で教授される。高等教育機関では一部の科目を除き、ロシア語で授業が行われている。旧ソ連からの独立後に教育を受けた世代では外国語能力が向上しているが、全体として英語をはじめとする非スラブ言語の理解度は、他の東欧諸国と比較しても未だ高いとは言えない。

外国語教育

 旧ソ連時代、外国語教育は初等教育修了後の5年生からであったが、独立後は外国語教育が重視されるようになり、通常は3年生より、学校によっては1年生から外国語の授業を開始する場合もある。第一外国語(必須科目)は大多数の学校で英語であるが、他にフランス語、ドイツ語、スペイン語の選択肢があり、学校によって特定されているが、2006年からはこれに中国語が加わった。英語を重視する傾向は強く、幼稚園でも英語を教えるケースが珍しくない。外国語教育に重点を置いている学校では、学年が進んでから第二外国語(フランス語・ドイツ語など)の学習も開始される。

外国語の中での日本語の人気

 日本語の人気は年々高まってはいるが、教育機関も限られており、西欧の言語や中国語と比べても学習者は未だ少なく、希少言語の扱いである。

大学入試での日本語の扱い

 大学入試での日本語は扱われていない。

学習環境

教材

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

高等教育

 大学での教材選定はおおむね各教師にゆだねられているが、『みんなの日本語』『まるごと』の使用が中心となっている。主な教科書は以下のとおり。
『みんなの日本語初級Ⅰ・Ⅱ』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)
『みんなの日本語中級Ⅰ』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)
『まるごと 日本のことばと文化』独立行政法人国際交流基金編著(各レベル、三修社)
AN INTEGRATED COURSE IN ELEMENTARY JAPANESE初級日本語 げんきⅠ・Ⅱ』坂野永理・他(ジャパンタイムズ)
『中級を学ぼう日本語の文型と表現56』平井悦子・他(スリーエーネットワーク)
『中級を学ぼう日本語の文型と表現82』平井悦子・他(スリーエーネットワーク)
『中級へ行こう 日本語の文型と表現59』平井悦子・他(スリーエーネットワーク)
『国境を越えて 本文編―留学生・日本人学生のための一般教養書』山本富美子(改訂版)
KANJI LOOK AND LEARN』坂野永理、池田庸子他(ジャパンタイムズ)
『留学生のための漢字の教科書』佐藤尚子/佐々木仁子(初級~上級、改訂版)(図書刊行会)

学校教育以外

 教材の選定は各教師にゆだねられる場合が多いが、『みんなの日本語』『まるごと』の使用が中心となっている。主な教科書は以下のとおり。
『みんなの日本語初級Ⅰ・Ⅱ』(前出)
『まるごと日本のことばと文化』(前出)
『ニューアプローチ』小柳昇 (語文研究社)
BASIC KANJI BOOK ~基本漢字500~』加納千恵子(凡人社)

IT・視聴覚機材

 各大学にはLL教室や視聴覚室があるが、日本語の授業で使用されることはほぼ無い。各機関とも、教室内で機関や教師所有の機器を使用してビデオなどを閲覧することがある。機関での学習者・独習者のいずれについても、各種Webサイトやアプリケーションの利用は一般的になっているほか、2020年以降は特にオンライン形式での授業の導入が広がっている。

教師

資格要件

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

高等教育

 学歴などで明確な採用基準・制限はないが、現地人・日本人とも、日本語能力と教師としての適正を各機関で判断した上で教師の採用を行っている。日本語教師を養成する機関は存在せず、大学においても、一般科目として外国語教授法があるのみである。

学校教育以外

 特に基準はない。

日本語教師養成機関(プログラム)

 機関内で勉強会や研修(セミナー)を行う例はあるが、専門的に日本語教師養成を行っている機関やプログラムは確認されていない。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 2020年10月時点では、各機関における日本人日本語教師の数は0~1名であり、邦人教師を雇用する機関が大半となっている。多くの場合、日本人教師は日本語の総合的な授業や会話の授業を中心に担当している。

教師研修

 2006年、2008年、2013年にいずれも国際交流基金派遣専門家の主導で日本語教師会セミナー及び勉強会が行われた。その他、大半の現地人教師が国際交流基金の訪日日本語教師研修に参加している。

現職教師研修プログラム(一覧)

 なし

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 日本語教育を行っている2大学の教師陣により、「ベラルーシ日本語教師会」が2003年末に設立された。2016年には会則などを整えて再発足しており、会員は大学以外の教育機関にも広がっている。ベラルーシ日本語弁論大会や日本語能力試験の実施が活動の中心である。

最新動向

 2019年3月 第16回ベラルーシ日本語弁論大会開催
2019年7月 日本語能力試験実施(ミンスク、3回目)
2020年3月 第17回ベラルーシ日本語弁論大会(中止)
2020年7月 日本語能力試験(ミンスク、中止)
2020年12月 ベラルーシ・オンライン日本語弁論大会(予定)

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣(2020年10月現在)

日本語専門家

 ベラルーシ国立大学・ミンスク言語大学 1名

国際協力機構(JICA)からの派遣

 なし

その他からの派遣

 (情報なし)

シラバス・ガイドライン

 統一されたシラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。

評価・試験

 2017年7月よりベラルーシ(ミンスク)でも日本語能力試験実施が開始され、日本語学習における共通評価基準となりつつある。大学での日本語専攻者にとっては、卒業時までに能力試験N2~N1程度の取得が目標とされる。

日本語教育略史

1980年代中頃~1990年代初頭 旧ソ連ベロルシア共和国における日本語教育実施(商工会議所、ラジオ工科大学)
1993年 ミンスク国立言語大学(当時ミンスク国立外国語教育大学)にて日本語学科開設
1995年 ベラルーシ国立大学国際関係学部にて日本語教育(第二外国語)開始
1997年 ミンスクのNGO日本文化情報センターが日本語支援を開始
2002年 ベラルーシ国立大学国際関係学部の日本語教育が言語地域研究科(日本学専攻)に変更
2003年 ベラルーシ日本語教師会設立、第1回ベラルーシ日本語弁論大会実施
2005年 ミンスクのNGO東洋伝統文化協会「葉隠」が日本語教室開講
2007年 ミンスク国立言語大学日本語夜間講座開講
NGO日本文化情報センター日本語コース開講
2016年 ベラルーシ日本語教師会再発足
2017年 ミンスクで日本語能力試験実施開始

参考文献一覧

ページトップへ戻る