チェコ(2020年度)

日本語教育 国・地域別情報

2018年度日本語教育機関調査結果

2018年度日本語教育機関調査結果に関する帯グラフ。機関数は21件、教師は73名。初等教育は0名で全体の0.0%、中等教育は51名で全体の4.1%、高等教育は651名で全体の52.2%、学校教育以外は544名で全体の43.7%。

(注) 2018年度日本語教育機関調査は、2018年5月~2019年3月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 1947年に、プラハにあるカレル大学に日本研究学科が創設され、チェコスロバキア(当時)における日本語教育が本格的に始まった。
 1993年にはオロモウツにあるパラツキー大学にも日本学科が設置された。また、1990年代以降、チェコ第二の都市ブルノにあるマサリク大学、オストラヴァのオストラヴァ大学で、選択科目として日本語のコース(エキゾチック言語コースの一つとして)が開設された。中等教育機関では、1991年にプラハにあるギムナジウムにおいて初めて外国語教育に日本語が取り入れられた。ボローニャ宣言(1999年)以降の大学の制度改革により、日本語・日本研究の主専攻があるカレル大学、パラツキー大学では3年で学士号取得、さらに2年で修士号取得という新システムに変更された。現在は、新カリキュラムでの授業が行われている。2008年10月にはブルノのマサリク大学に日本研究学科が設立され学士号取得が可能になった。
 中等教育機関(ギムナジウムと呼ばれ日本の高等学校にあたる4年間から6年間の教育機関)でも、自由選択科目第三外国語として設けている高校が増えてきた。
 一般教育機関では、プラハ市立言語学校(当時はプラハ国立言語学校)が1952年から、またチェコ・日本友好協会でも1998年から日本語のコースを開設している。
 2020年10月現在は、私立の語学学校等でも日本語を取り上げる学校が増えている。例えば専門的に毎日日本語を学習する「高校卒業後学習pomaturitne studium」も開催されている。2020年10月現在、2校がこのコースを設置しており、高等教育機関への予備コースとしてこのコースで大学入学準備をする学習者もいる。
 2007年秋に日本センター・ブルノがオープンし、大学生や一般成人向けの日本語授業がスタートした。プラハなどの都市部だけではなく、地方の小都市などでも日本語を学ぶ機会が増え、希望すればいろいろな方法で日本語学習ができるようになってきている。また、インターネットを通じてチェコまたはチェコ以外の国の日本語教師から習ったり、インターネットで独学したりしている学習者もいる。
 2008年度よりプラハ市立言語学校が国家試験実施校となり、2009年度からはチェコ国内で唯一CEFR(Common European Framework of Reference for Languages)基準の試験が実施されている。 日本語教師会が主体となって、2003年より日本語能力試験の模擬試験が開始され、2010年からはブルノ市で、日本語能力試験が実施されるようになった。2019年は、受験者数297名。
 その他、教育機関以外では、日本企業での従業員に対する日本語教育もある。

背景

 1989年のビロード革命、1993年のチェコの分離・独立以降、日本・チェコの両国は友好な関係を築いている。また、近年チェコの経済発展はめざましいものがあり、2018年時点で、250社以上の日本企業がチェコに進出している。なかでも製造業の比率が高く、習得した日本語をビジネスの場面で生かしている者も多い。さらに武道、邦楽等伝統的な文化や、マンガ・アニメ等日本のポップカルチャーの人気が高い。

特徴

 高等教育機関での日本語教育が従来盛んであったが、中等教育機関、あるいは学校教育以外の機関での日本語学習者も増えつつあり、特に近年では若年層で急増の傾向にある。
 学習動機は、以前は日本の伝統文化への興味が主であったが、アニメ等のポップカルチャーの影響から日本語学習を始める若い学習者が多い。また、自らの母語とは大きく異なる「めずらしい言語」「おもしろい言葉」として日本語を学習しようとする人やシニア世代の間からも、生涯学習の一環として日本語を学習しようとする動きが現れてきた。近年は、日本旅行を体験し、日本文化に実際に触れ日本文化に興味を持ったので、日本語を習いたいという中高年の学習者も多くなってきている。さらに、日本人とチェコ人夫婦の間に生まれ、継承語として日本語を学習する子供も存在する。

最新動向

 2020年の時点におけるチェコではIT産業が隆盛で、その顧客として日本のIT企業との取引に日本語による対応が求められていることや、チェコ人以外の外国人(例えばチェコ国内に居住するロシア人など)の日本語学習者の増加が挙げられる。日本企業では、日本文化理解を促す行事なども行われ、自社内で日本語教育に興味を持つ企業もある。一方で、国内に存在する日系企業にはかつて通訳業務なども多かったが、近年は日本語能力よりもむしろマネジメント能力が評価され、日本語を話さないチェコ人が管理職として採用されるケースも現れてきた。
 2020年時点の学習者の特徴としては若年層の急増が挙げられる。例えば、チェコ・日本友好協会が主催する日本語教室では、2019年に10〜13歳程度の子どもクラスをこれまでの1クラスから3クラスに増設した。子どもの学習者が増加した理由としては、両親の「英語とは異なる言語を習わせたい」という希望による。中には3歳児の親からの問い合わせもあったという。チェコでは幼児向けの英語教室などが多数存在するため、同様な発想から他言語である日本語にも幼児クラスを期待したと思われる。

教育段階別の状況

初等教育

 トヨタ・プジョー・シトロエン・オートモビル(TPCA)社の工場があるコリーン市において、2006年より小中学校3校でクラブ活動の一環として日本語教育が行われていたが、2010年に同社による支援が終了して以来、行われていない。

中等教育

 ギムナジウム等の中等教育機関で外国語教育に日本語を取り入れるところが現れている。2020年現在、プラハ市内を中心に数校のギムナジウムにおいて、選択科目として第三外国語としての日本語クラスが設けられている。日本語クラス開設の可否は学校長の裁量により決定される。プラハ市のサーザフスカー高校では、選択クラスとして45分の授業が週に3コマ実施されており、CEFRB1レベルが到達目標として掲げられている。またリトミシュル市は日本との文化交流に熱心で、市内の高校でも選択科目として週1回の日本語のクラスがあり、日本の高校への短期留学も行われている。他にも2017年以降の新しい動向としてプラハ市にあるアマゾン高校(私立)で日本語が正規の第2外国語として採用されたことを取り上げておきたい。週に4時間の授業があるほか、学習者からの相談に応じるコンサルタントが1時間ある。成績はこまめに数値化され、オンラインで父兄にフィードバックされるシステムを持つ。

高等教育

 レル大学、マサリク大学には日本研究、パラツキー大学には日本語専攻の学科がある。これらの学科では毎年数名が日本へ留学し、卒業後は通訳者・翻訳者として活動する者、教師・研究者となる者もいる。このほかには、オストラヴァ大学、チェコ工科大学、ニューヨーク大学プラハ校、メトロポリタン大学(プラハ)、あるいはピルゼン市の西ボヘミア大学でも、選択科目として日本語の授業が開講されている。また、地方の観光関係の高等専門学校においても、従来の日本人ビジネスマンとの関わりを想定した日本や日本語に関する知識へのニーズのほか、日本へ観光旅行に行くチェコ人の増加により、日本語の需要が高まっている。

学校教育以外

 プラハ市立言語学校は主に成人の学習者を対象としている。一方、同じくプラハにあるチェコ・日本友好協会の日本語講座には、成人のほか高校生の学習者もいて、日本語教育だけでなく、書道、墨絵、歴史講座、さまざまなワークショップなど文化紹介のプログラムも作られているほか、2019年に10〜13歳の子どもクラスを増設した。
 ブルノ市にある日本センター・ブルノでも、小学校低学年から70歳代までの幅広い年齢層の学習者が日本語学習に取り組んでいる。
 また、プラハ市内および日本センター・ブルノでは、日本人とチェコ人夫婦の間に生まれた子どもたちを対象に、継承語としての日本語クラスが開講されており、年齢や時間に応じてクラス分けされ、文化理解も含めた日本語が学ばれている。
 在チェコの日本企業、また日本企業と取引のあるチェコの企業の中には、ビジネスのための日本語クラスを開講しているところもある。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 9-3制。
 初等教育は通常9年間(6~15歳)、中等教育は3~4年間(15~19歳)でギムナジウム、専門学校等で行われる。少数であるが成績優秀者は、5年で初等教育機関から中等教育機関へ移り、中等教育を8年間受ける者もいる。6歳からの9年間が義務教育。
 高等教育機関は主に大学で、専門によって3年から5年の教育を受ける。ボローニャ宣言を受けて、新たに学士制度が設けられ、従来の5年間で修士号取得のシステムから、学士課程(3年)と修士課程(2年)に分けるシステムへと変更している。

教育行政

 初等、中等、高等教育機関のほとんどが教育省の管轄下にあるが、公立校においても授業内容など、かなりの部分を校長の裁量で決めることができる。

言語事情

 主要言語、公用語ともチェコ語。

外国語教育

 初等教育課程では第3学年から外国語学習が開始されるが、主に英語である。
 中等教育では第1学年から外国語学習が必修科目になっており、主に英語、他にもドイツ語、フランス語、ロシア語から選択する場合もある。

外国語の中での日本語の人気

 カレル大学において、アジア言語では、日本研究学科への入学希望者は依然として多いと言えるが、2019年頃から韓国語学習希望者数の台頭が見られる。2020−21年度の学部受験者数と入学者数は、日本語が130名中24名、韓国語が135名中19名、中国語が50名中21名であった。日本研究学科の学生は韓国のポップカルチャーを通じ、東アジア全般の風俗や文化に関心を持つ者が増加傾向にある。日本語学習の動機は、大学生の場合は主に学問的な興味からであり、そのほかアニメ等の趣味が挙げられている。

大学入試での日本語の扱い

 大学入試で日本語は扱われていない。
 ただし、カレル大学とマサリク大学では、日本研究科の入学試験が実施されており、日本語の表記(ひらがな・カタカナ)および日本に関する知識を問う試験が含まれている。カレル大学では、漢字知識も出題される傾向にある(約30字程度)。

学習環境

教材

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 『みんなの日本語 初級』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)、『初級日本語 げんき』坂野永理ほか(ジャパンタイムズ)、『まるごと』独立行政法人国際交流基金(三修社)のほか、チェコ語で書かれた教科書『初級日本語Japonstina』(LEDA)が使用されている。

高等教育

 『みんなの日本語 初級』(前出)、『中級へ行こう』『中級を学ぼう』平井悦子ほか(スリーエーネットワーク)、『文化中級日本語』文化外国語専門学校(凡人社)、『中級の日本語』三浦昭ほか(ジャパンタイムズ)等のほか、パラツキー大学では独自に編纂した初級教科書を使用している。

学校教育以外

 チェコ・日本友好協会から2007年に出版された『絵でおぼえるひらがな』、同じく2010年に出版された『絵でおぼえるカタカナ』、『絵でおぼえる漢字』(2014年出版)、『Situational Functional Japanese』筑波ランゲージグループ(凡人社)、『みんなの日本語 初級』(前出)、『初級日本語 げんき』(前出)、『Japanese for Busy People』国際日本語普及協会(講談社USA)、『会話の授業を楽しくするコミュニケーションのためのクラス活動40』安部達雄ほか(スリーエーネットワーク)、『毎日の聞き取り』宮城幸枝ほか(凡人社)等のほか、言語学校で独自に編纂された教科書も使用されている。また、一部の機関の成人向けクラスでは『まるごと』(前出)が主教材として使われている。

IT・視聴覚機材

 大学等では学生の成績管理はオンラインで一括管理されており、カリキュラム情報等の提供にもインターネットが利用されている。学内ネットワークが完備されており、講師から個々の学生への連絡、教材の配布、課題の提出等にもこれらが活用されている。
 各教室にはプロジェクターが設置されており、オンラインによる国外との交流授業や、パワーポイントを使ったプレゼンテーション授業なども行われている。

教師

資格要件

初等教育

 修士号以上

中等教育

 修士号以上

高等教育

 修士号以上

学校教育以外

 教育機関によって様々であるが、チェコの大学を卒業していることを条件としているところもある。

日本語教師養成機関(プログラム)

 日本研究、日本語専攻を持つ大学は3つ(カレル大学、マサリク大学、パラツキー大学)あるが、日本語教授法等の教師養成のためのコースや講義は開講されていない。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 マサリク大学とパラツキー大学では、それぞれ複数名の日本人教員(専任・非常勤を含む)を雇用しているほか、他の言語学校や教室でも現地採用の日本人教師を雇用している。数ヶ月から2年程度の雇用契約で採用され、複数の学校・機関をかけもちで教えている講師も少なくない。

教師研修

 現職の日本語教師対象の研修制度は国内にはないが、国際交流基金日本語国際センターの公募研修プログラムへの参加や、ブダペスト日本文化センターの中東欧日本語教育研修会(2008年度から実施)等に参加している。また、日本語教師会の月例会での勉強会や、弁論大会開催時に合わせるなどして、国外から講師を招いてワークショップ等を開催することもある。

現職教師研修プログラム(一覧)

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 当初は国際交流基金派遣の日本語専門家を中心に勉強会が行われ、2005年からメーリングリストが整備等の段階を経て、2007年1月に教師会が正式に発足した。毎月1回(年10回)の定例会やメーリングリストでのやりとりは教師会の活動の一環として続いており、2013年には教師会のサイトも開設されたhttp://kyoshikai.wixsite.com/czkyoshikai-jp2007年秋には、教師会メンバーによる自主制作教材『絵でおぼえるひらがな』、2010年春には『絵でおぼえるカタカナ』、2014年3月には同シリーズの漢字教材『絵でおぼえる漢字』を出版した。その他、日本や隣国から講師を招いてワークショップ等も開催している。メンバーは2019年10月時点で20名ほどである。
 2007年秋には、教師会メンバーによる自主制作教材『絵でおぼえるひらがな』、2010年春には『絵でおぼえるカタカナ』、2014年3月には同シリーズの漢字教材『絵でおぼえる漢字』を出版した。その他、日本や隣国から講師を招いてワークショップ等も開催している。メンバーは2019年10月時点で20名ほどである。

最新動向

 2020年5月、教師会は自主教材第4弾となる『初級読解教材 読みましょう』を出版した。
 また、毎年春、教師会主催で弁論大会と作文コンテストを開催しているが、2020年4月に予定されていた第44回弁論大会はコロナ禍の影響を受け、11月にオンラインによる弁論大会へと変更を余儀なくされている。
 2019、20年で目立った動向としては、オンラインによる個人教授の増加や、数名程度で運営されている地域に根ざした日本語教室の存在が確認されたことである。しかしながら、これらは小規模であるがゆえに実態の把握を困難にしている。また、オンライン、例えばSNSなどのネットワークを活用した交換会や交流会も多く開催されているが、これらは日本語コースと異なる単発のイベントである場合が多い。
 コロナ禍における授業提供は、Zoom、Skype、マイクロソフトTeamsなどを用いた同期型で行われている。また、非同期教材の開発は個人レベル、あるいは、教育機関毎での対応により準備している。

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣(2020年10月現在)

日本語専門家

 カレル大学 1名

国際協力機構(JICA)からの派遣

 なし

その他からの派遣

 (情報なし)

シラバス・ガイドライン

 統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。

評価・試験

評価・試験の種類

 共通の評価基準や試験はない。

日本語教育略史

1947年 カレル大学に日本語研究学科創設
1952年 プラハ市立言語学校で日本語コースを開設
1991年 プラハにあるギムナジウムが、中等教育で初めて外国語教育に日本語教育を開始
1992年 マサリク大学(ブルノ)で選択科目として日本語コース開設
1993年 バラツキー大学に日本学科設置
1998年 チェコ・日本友好協会で日本語コース開設
西ボヘミア大学(ビルゼン)で選択科目として日本語コース開設
2006年 コリーン市の学校でクラブ活動の一環として、初等教育で初めて日本語教育を実施
2007年 日本センター・ブルノが開所し、大学生や一般成人向けの日本語授業開始
2008年 プラハ市言語学校が国家試験実施校となる
マサリク大学(ブルノ)に日本研究学科設立
2009年 プラハ市言語学校がチェコ国内で唯一CEFR基準の試験を実施
2010年 チェコ南東部のブルノ市においてチェコで初めてとなる日本語能力試験JLPTを実施、現在に至る。

参考文献一覧

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