イラン(2020年度)

日本語教育 国・地域別情報

2018年度日本語教育機関調査結果

機関数 教師数 学習者数※
2 15 215
※学習者数の内訳
教育機関の種別 人数 割合
初等教育 0 0.0%
中等教育 0 0.0%
高等教育 97 45.1%
学校教育以外 118 54.9%
合計 215 100%

(注) 2018年度日本語教育機関調査は、2018年5月~2019年3月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 イランにおける日本語教育は、1989年にテヘラン大学外国語学部内に必修選択第二外国語科目として日本語コースが開設されたことに始まる。1994年にテヘラン大学外国語学部に日本語・日本文学科が設置されて以降、日本語教育は順調に発展してきている。

背景

 日本の先進技術への関心は高く、歴史的経緯やアジアの一員という意識からも親日的であり、日本への漠然とした興味を有する人は多い。近年では、イランにおいてもアニメやマンガをはじめとするポップカルチャーへの関心が高まりつつあり、これに伴い、日本語学習へ関心を示す人も増えている。
 テヘラン大学外国語学部日本語・日本文学科を第1志望とし、確固たる目的や動機をもって同学科に入学する学生は少数であり、大多数は統一大学入学試験の結果、同学科に割り当てられ、入学している(注:イランでは、統一大学入学試験の後、入学を希望する大学・学科名を希望順に150学科まで記入できる)。しかし、イランの最難関であるテヘラン大学には良質の学生が集まるため、日本語・日本文学科に入学した学生は、日本語学習が進むにつれて日本語、日本文化、日本の経済発展等に強い関心を持つようになる。また文部科学省国費留学生制度などを利用して日本に留学することが、学習者の主要な目標の一つとなっている。一方、日本語公開講座では、将来日本へ留学を考えている学生、日本に出稼ぎに行った際に身につけた日本語能力を維持したい人、日本のアニメやマンガに興味を有する若者等が受講している。

特徴

 学習者は、各機関の登録者数から見ると、2017年10月現在、200人強ほどいると見られる。テヘラン大学外国語学部日本語・日本文学科の他には、テヘラン大学公開講座において一般人向けの日本語講座が開講されている。

最新動向

 日本語能力試験の応募者数が2017年97名、2018年152名、2019年212名と増加している。
 タブリーズ大学においても、夏季公開講座などで日本語授業の実施が報告されている。

教育段階別の状況

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

高等教育

 現在のところ、テヘラン大学外国語学部日本語・日本文学科がイランにおける高等教育機関で唯一、専門課程として日本語教育を行っている。テヘラン大学外国語学部日本語・日本文学科には毎年25名程度の学生が入学しており、2017年10月現在、同学科には約100名の学生が在籍する。卒業生の中には、文部科学省国費留学生制度などを利用して日本に留学する者、日系企業やイラン国営放送に就職する者もいるが、卒業後日本語を活かした仕事に就く者は非常に少ない。また、2008年にはラーズィー大学において、短期日本語講座が実施された。

学校教育以外

 テヘラン大学公開講座において、一般人向けに講座(受講登録者数約140名・2019年10月現在)が行われている。受講者は、日本への留学を目指す学生や日本で出稼ぎをしていた際に習得した日本語能力を維持したい人、アニメやマンガに関心を有する若者等である。
 2018年にはタブリーズ大学においても夏季公開講座で日本語授業の実施が報告されている。
 エルメ・カールボルディ大学においても日本語講座(受講者若干名)が行われていたが、2017年現在は休講中。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 6-3-3(-1)制。
 小学校(6年間)、中学校(3年間)、高校(3年間)、及び大学の4段階。通常7歳で小学校に入学する。憲法第30条によれば、「政府は高校教育の修了まで、全国民に対し無料の教育を提供する義務を負う」旨が規定されており、小学校から高校まで12年間の教育は無料(国立の場合のみ)。

教育行政

 初等教育、中等教育については教育省が管轄。
 医学教育を除く高等教育は科学技術省(高等教育省を改称)、医学教育については厚生省が管轄している。

言語事情

 公用語はペルシャ語(ファールスィー)。
 地方語としてアゼリ語(トルコ語)、クルド語、アラビア語など、多言語が使用されている。

外国語教育

 小学校1~5年生を対象に、厳密な意味での語学教育ではないが、「コーラン」の授業(アラビア語)が行われる。
 中学1年からアラビア語及び英語が必修、中学2年からフランス語・ドイツ語のいずれかが選択必修(通常は英語)となる。

外国語の中での日本語の人気

 日本語を含む8の言語の専攻語教育課程が設けられているテヘラン大学外国語学部では、非ヨーロッパ言語の中では日本語及び韓国語の人気が高い。

大学入試での日本語の扱い

 大学入試で日本語は扱われていない。

学習環境

教材

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

高等教育

 テヘラン大学外国語学部日本語・日本文学科では、初級・中級とも『学ぼう!にほんご』(専門教育出版)等が用いられている。
 ラーズィー大学の短期日本語講座では、『みんなの日本語』(前出)、『日本語かな入門』河原崎幹夫(凡人社)、『エリンが挑戦!にほんごできます。』国際交流基金日本語国際センター(凡人社)が使われた。

学校教育以外

 テヘラン大学の公開講座では『みんなの日本語』『まるごと 日本のことばと文化』やJLPT対策問題集などが使われている。

IT・視聴覚機材

 日本語教育にIT・視聴覚機材 は使用されていない。

教師

資格要件

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

高等教育

 通常、当該分野専攻の博士号取得が大学教員の資格要件となっている。テヘラン大学外国語学部日本語・日本文学科では、例外的に修士号取得が教師の最低要件となっている。他の教育機関では日本語教師としての資格要件はない。
 修士課程では博士号取得者のみが教えることができる。なお、本来は「日本語学」「日本語教育学」「日本文学」の博士号取得者でなければ教えることは出来ない。

学校教育以外

 テヘラン大学公開講座では、日本語に関する証明書所有者(学士号または修士号)を採用条件としている。

日本語教師養成機関(プログラム)

 イラン国内には、日本語教育養成機関(プログラム)はない。国際交流基金のプログラムに、「海外日本語教師短期研修」等、日本語教師を対象としたものがある。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 テヘラン大学外国語学部日本語・日本文学科の日本語教師数は、2017年10月現在7名(日本人1名、イラン人6名)であり、うちイラン人6名が正規教員である。ネイティブ教師の担当授業は、日本語(上級)、日本語会話等。
 日本語公開講座においては、全教師9名中、2名がネイティブ教師である。

教師研修

 現職の日本語教師対象の研修はない。

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 イラン国内に日本語教育関係のネットワークはない。中東諸国(エジプト、アラブ首長国連邦、イエメン、イラン、カタール、サウジアラビア、シリア、チュニジア、トルコ、バーレーン、モロッコ、ヨルダン、レバノンほか)の日本語教師のネットワークとして「中東日本語教師会」があり、国際交流基金カイロ日本文化センターが取りまとめをしている。しかし、イランとエジプトには国交がないためイランの教師がエジプトに行って研修を受ける手段はなく、ネットワーク形成上取り残された形となっている。

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣(2019年10月現在)

日本語専門家

 テヘラン大学 1名

国際協力機構(JICA)からの派遣

 なし

その他からの派遣

 (情報なし)

日本語教育略史

1989年 テヘラン大学外国語学部内に必修選択第二外国語科目として日本語コース開設
1994年 テヘラン大学外国語学部に日本語・日本文学科設置
2008年 テヘラン大学外国語学部日本語・日本文学研究科(修士課程)が開設
ラーズィー大学にて短期日本語講座実施
2013年 テヘラン大学世界研究部日本研究コース開講(修士課程)
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