カザフスタン(2020年度)

日本語教育 国・地域別情報

2018年度日本語教育機関調査結果

機関数 教師数 学習者数※
10 35 451
※学習者数の内訳
教育機関の種別 人数 割合
初等教育 0 0.0%
中等教育 48 10.6%
高等教育 149 33.0%
学校教育以外 254 56.3%
合計 451 100%

(注) 2018年度日本語教育機関調査は、2018年5月~2019年3月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 カザフスタンでは、以前より日本の伝統文化に対する関心が高くなっている。また、自動車やロボット等ハイテク技術は若者にとって憧れであり、近年では、日本語学習の動機の一つとなっている。これまでは旧首都のアルマティにおける日本語学習が主体であったが、新首都のヌルスルタン(旧アスタナ(2019年3月に改称))の日本語教育機関との連携強化が見られるようになった。さらに、地方都市においても自主的に日本語を学習する例が見られる。
 1992年にアル・ファラビ名称カザフ民族大学(現アル・ファラビ名称カザフ国立大学、以下、カザフ国立大学)東洋学部中国語学科において日本語コースが設置されたのが、カザフスタンにおける日本語教育の本格的な始まりと言える。2020年10月現在、日本語専攻コースを持つ大学は、上記のカザフ国立大学東洋学部韓国日本学科、アブライ・ハン名称カザフ国際関係外国語大学東洋学部極東言語学科(以下、カザフ外国語大学)、首都アスタナにあるL.N.グミリョフ名称ユーラシア国立大学国際関係学部東洋学科(以下、ユーラシア大学)の3校である。2020年10月現在、カザフ国立大では84名(内修士10名、博士4名)、カザフ外国語大学では78名(内修士2名)、ユーラシア大学では31名(内修士54名)である。また、ユーラシア大学は30名(内修士1名)が副専攻として日本語を学んでいる。
  2009年度までカザフ経営経済戦略大学(KIMEP)とアバイ名称カザフ民族教育大学においても日本語教育が行われていたが、現在は行われていない。また、第二外国語コースがあったカザフ国立大学国際関係学部においても2013年度夏に閉講された。ナザルバエフ大学においても日本人教員により「日本クラブ」が組織され、学生90名ほどに対して日本語教育が行われていたが、この日本人教員が8月に日本へ帰国、2014年秋よりカザフスタン日本人材開発センターJF講座より講師を派遣(出前講座)した。しかし2016年秋よりクラブが独自に日本人講師を雇い出前講座は終了した。その後2017年日本人講師の帰国により、現地教師を新たに雇用し50名ほどを対象に継続していたが、講師の都合により、2020年度は活動していない。2021年春から再開する予定である。
 高等教育機関においては、2007年9月にカザフ国立大学において、日本語専攻の大学院修士課程が設立され、2019年までに約40名の修了者を出している。2012年度には日本学科東洋歴史コースから博士課程への進学者が出ており、カザフスタンの日本語専攻で、はじめての博士号取得者の誕生が期待されている。またこれ以外にも、日本の大学の修士課程、博士課程へ進学する者もいる。
 初等・中等教育においては、1996年にアルマティ第2学校で日本語教育が開始され、続いて1998年には、アルマティ第12、123学校、及びジャンブール第45学校、2002年からは第58中学校、第120言語ギムナジウムでも開始されるなど一時的に勢いを見せたが、2013年に、専門家が開発したカリキュラムがないとの理由で教育科学省から初等・中等教育の日本語コース閉鎖が命じられた。そのため、現在、初等・中等教育では日本語は教えられていない。
 しかし、2018年秋よりヌルスルタン、アルマティの中等教育で選択科目ではあるが、日本語の科目化が行われ授業が開始した。(各1校)また、ヌルスルタンの中等教育において、クラブ活動としての日本語を始めた学校もある。また、第90番学校において、2020年10月から日本語教育が始まる予定である。

背景

 元来、カザフスタン人は、日本に対して、経済・技術大国でありながら独自の文化を伝承し続けている国として憧れが強く、国造りのモデルとして高い関心を持っている。また、民族的な類似性等から日本に親近感を抱いている者も多く、その流れで日本そのものや日本文化をより深く知りたいとの思いから日本語を学習し始める学生が多い。2019年で14回目の開催を迎えた日本文化デー(日本大使館、日本センター、日本人会共催)では、5,000人の来場者があり、日本文化への関心が高いことがわかる。(2020年日本文化デーは、新型コロナ感染拡大の影響で実施不可)近年経済的に豊かになりつつあるカザフスタンでは、経済的に発展・成功した国の言葉を学んで、自国の発展を担う人物になるべく、日本語学習を始める者も多い。また、着物や書道、日本料理などの伝統文化にとどまらず、アニメを中心とするポップカルチャーへの関心も高まっている。地理的に距離はあるものの、日本文化の波は確実に押し寄せ、日本語学習の動機の一つとなっている。さらに学年が上がると、各自がより具体的な関心を持ち始め、現代文学や日本史を研究テーマとして勉強する学習者も高等教育機関では見られる。

特徴

 大学等高等教育機関を中心に、日本語学習者数は概ね2010年ごろまでは増加してきた。しかし、大学卒業後、通訳業への従事や、日本企業への就職を希望する学生の思いとは裏腹に、実際の卒業後の進路は非常に困難な状況にある。対照的に同じ極東の言語である中国語・韓国語学習者の留学の機会が多いことや就職状況がいいこともあり、高等教育機関においては、年々日本語学習者数が減少している。ただし依然としてポップカルチャーへの関心は高く、学校教育機関以外の学習者数は横ばいとなっている。教員の賃金水準が低いため、優秀な人材が他分野に流れる傾向にあることは否定できず、優秀な教員が教職を離れることで大学の日本語教育の質が下がり、それが学生の就職難に繋がるという悪循環が見られる。また、日本語教育を続ける教員にしても、学内事務の処理に追われ、スキルアップに割く時間もないのが現状であり、日本語教育を巡る環境は厳しい状況にある。
 カザフスタンは現在外国語学習ブームに沸き立っているが、その中心は英語、中国語、韓国語、カザフ語と似ているトルコ語など就職に有利な言語であり、最近ではフランス語およびドイツ語の人気も上昇している。一方、日本語はまだ特殊な言語と見なされている。

最新動向

 前項中等教育の項目で述べたが、初代大統領の名を冠する、Nazarbayev Intellectual School(以下NIS)特において、2018年2月より日本語のパイロットコースがスタートし、同年9月より選択科目の一つとして取り入れられた。(アルマティ、ヌルスルタン各一校)しかしながら、まだ正課の科目とはなっていない。
 また、これまでキリル文字を使用していたカザフ語が、2025年までにラテン文字に切り替えられることが決まっている。2018年から学校教育でのラテン文字教育がスタートし、すでに一部の広告やダイレクトメッセージなどではラテン文字に変わってきているものも見られる。

教育段階別の状況

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 上述のNISにおいて、ヌルスルタンNISでは入門と初級前半の2レベル2クラスで、計19名が日本語を選択している。アルマティNISでは入門A1が55名、初級1が9名、初級2が6名、合計70名となっている。どちらも12歳から17歳の生徒たちである。
 使用教材は『まるごと 日本のことばと文化』で、クラス名とそのレベルは教科書のレベルに対応している。

高等教育

 カザフ国立大学とカザフ外国語大学において主専攻(第一外国語)、ユーラシア国立大学において主専攻、選択科目(第二外国語)として日本語が教えられている。
 カザフ国立大学がカザフスタンで最も日本語教育の歴史が古い高等教育機関であり、2020年10月現在、修士課程博士課程を含めて約84名が在籍している。学科の設置目的は、日本語・日本研究者及び教師、企業において日本語で業務が行える人材、日本語通訳者・翻訳者の育成である。現在は、言語のみならず、歴史などの専門科目にも重点を置いた教育が行われている。卒業生は日本語教師、日本企業の現地スタッフ等、幅広い分野で活躍している。一方、毎年の卒業生で日本語関係の職業に就く者は決して多くなく、年に数名程度である。
 留学に関しては、大学間交流協定などにより、筑波大学、北海道大学、東京外国語大学、埼玉大学などに各機関毎年2~10名程度の交換留学を行っている。
 上述のカザフ国立大学をはじめとした主専攻コースにおいては、日本語能力試験のN2まで到達する学生も多いが、第二外国語コースにおいては初級レベルである。そのため、日本語能力が就職に結びつくことはほとんどない。

学校教育以外

 2002年よりアルマティにカザフスタン日本人材開発センター(日本センター)が創設され、ここでは初級・中級のレベル毎に様々な日本語コースが開設され、当初は年間を通じて約400名近くが受講していた(春コース、秋コース、夏期インテンシブコース合計)。2019年の秋コースの受講者数は12名であった。カザフ国内の経済状態の悪化等で受講生が減少傾向であったが、2010年代後半に入り緩やかであるが受講生の回復傾向が見られ、その後安定している。
 また、2006年より首都アスタナの日本センター分室でも日本語コースが開かれており、年間約120名が受講していた。
  2020年春コース途中より、カザフスタン国内でも新型コロナウィルスの感染拡大が深刻になり、約2か月にわたる都市封鎖となった。その為授業はすべてオンライン授業(オンライン会議システムZOOM使用)に切り替えられた。そして、秋コースも全てオンラインでの受講生募集となり、ヌルスルタン、アルマティの別なく合同での開講となった。 2020年10月現在、入門から中級まで全14クラス、154名が学んでいる。(ヌルスルタン国立アカデミー図書館出前講座含む)受講生の中には、ヌルスルタン、アルマティ以外の地方都市在住者もおり、オンライン授業の可能性が感じられる。学習者の年齢層は10代から50代まで、学生から社会人までと幅広く、学習目的も就職や留学、旅行、趣味などから伝統文化やアニメ、音楽などに対する興味など様々である。
 最近の傾向として、中高生の受講生が増えている。上記コース以外には、アルマティ市内において、民間学校1校で50名を対象に日本語が教えられている。(日本人教師1名)手毬や書道などの日本文化のクラスも人気がある。ヌルスルタンにも民間の日本語学校が1校あり、こちらでも30名ほどの学習者がいる。
 また、セメイ市(旧セミパラチンスク市)では、ソ連時代に核実験場があった関係で、広島市の市民団体との交流が20年以上も続き、毎年2名の高校生が広島市の高校に留学し、日本語を学んできた。しかし、2018年に20回目を迎え終了した。このプログラムの修了生による日本語教室が不定期ではあるがセメイ国立医学大学で開催されている。2013年より、セメイ市の在留邦人がボランティアとしてナザルバエフ学校で国際理解教育の一環として不定期で日本語講座を担当していたが、現在は行われていない。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 4-7制。
 初等・中等一貫教育(シュコーラ)。従来は11年制であったが、2006年度より一部の学校が試験的に12年制を導入している。2015年にはすべて12年制とする計画があったが、まだ完全に移行していない。シュコーラの1~4年生が初等教育(6~9歳)、5~11年生が中等教育(10~17歳)にあたる。このうち1年生から9年生までが義務教育である。私立のギムナジウム、リッツェイもある。大統領の名前を冠した「ナザルバエフ学校」という12年制の学校が各地に作られ、10年生以上の生徒は英語で他教科の授業を受講しており、外国語学習への関心の高まりが見られる。NISは12年生を取っており、フランス語、ドイツ語、トルコ語などと共に2018年より日本語が選択科目として取り入れられた。NISは2020年現在カザフスタン全土に20校作られている。(日本語を開講しているのは、ヌルスルタンとアルマティに2校のみ)
 高等教育機関には大学(4年制)、アカデミー、音楽院、高等専門学校などがある。大学の教育システムは、高等基本教育(スペツィアリスト)5年間に続き、高等専門教育(アスピラントゥーラ)3年間があり、日本の博士課程に相当していた。これは旧ソ連時代からの独自の教育制度であるが、ヨーロッパスタンダードに移行するため段階的に廃止され、高等基本教育(バカラーブル)4年間、高等科学教育(マギストラトゥーラ)2年間、高等専門教育(ドクトラントゥーラ)3年間に移行した。ボローニャシステムも導入されている。

教育行政

 初等、中等、高等教育機関のほとんどが教育科学省の管轄下にある。

言語事情

 カザフ言語法によると、カザフ語は国家語であり、ロシア語は公用語として位置づけられている。また、英語を加えた3言語を習得すべきとの意向を大統領は繰り返し強調している。しかし、近年、国家機関における統計、資本、技術などの専門分野に関する書類等は、カザフ語で作成され、教育の現場においてもカザフ語による教育が増えつつあり、カザフ語の国家語としての位置づけが強化されてきている。また、現在カザフ語はキリル文字で表記されているが、2025年までにラテン文字へ完全移行することが決定され、徐々に進められている。

外国語教育

 2013年度、大統領の命令により、初等教育にあたる1年生からカザフ語・ロシア語に加えて英語も必修科目となった。言語ギムナジウムでは2言語(英語と、ドイツ語・フランス語・中国語・アラビア語・トルコ語のうちの一つ)を同時に勉強している。

外国語の中での日本語の人気

 東洋言語の中で最も人気が高いのは就職に結びつく中国語である。次に最近、企業進出が目覚ましい韓国語の人気が高まっている。韓国はテレビドラマなどのポップカルチャーの人気の高まりも影響があると思われる。日本の文化や経済に対する関心は決して低くはないが、他言語に比べ、奨学金獲得の機会が少なく、就職につながりにくい日本語は、学習者数が2008年をピークに下降傾向である。

大学入試での日本語の扱い

 大学入試で日本語は扱われていない。

学習環境

教材

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 ヌルスルタンのNIS1校において『みんなの日本語 初級Ⅰ』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)『まるごと 日本のことばと文化』国際交流基金(三修社)が使用されている。他に、第90番学校においても上記教材を用いて日本語教育を開始する準備をしている。また、アルマティに於いても、2018年9月より日本語が開講された。使用教材は『みんなの日本語初級Ⅰ』(スリーエーネットワーク)を使用していたが、2019年11月より国際交流基金の『まるごと 日本のことばと文化』(三修社)に移行する予定である 。

高等教育

 『みんなの日本語Ⅰ、Ⅱ』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)、『中級へ行こう』平井悦子ほか(スリーエーネットワーク)、『ニューアプローチ中級日本語[基礎編]』小柳昇(日本語研究社)、『ニューアプローチ中上級日本語[完成編]』小柳昇(日本語研究社)、『みんなの日本語中級』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)、『BASIC KANJI BOOK VOL. 1、VOL2』加納千恵子ほか(凡人社)、『INTERMEDIATE KANJI BOOK VOL. 1、VOL2』加納千恵子ほか(凡人社)等、『まるごと』国際交流基金(三修社)が主に使用されている。
 また日本語以外の科目として、日本文学の授業も展開されており、『古事記』なども取り上げられている。(カザフ外国語大学)

学校教育以外

 2002年9月、カザフスタン日本人材開発センター(日本センター)が創設され、様々な日本語のコースが開講されている。主に使用されていた教科書、教材としては、『みんなの日本語 初級Ⅰ、Ⅱ』(前出)、『文化中級日本語Ⅰ』(前出)、『みんなの日本語中級』(前出)、『INTERMEDIATE KANJI BOOK Vol.1、2』(前出)等がある。
 2012年春に開設されたJF講座では、『まるごと 日本のことばと文化』国際交流基金(三修社)を使用しており、2017年秋時点で『まるごと入門A1』『まるごと初級1A1』『まるごと初級2A2』『まるごと初中級A1-B1』『まるごと中級1』『まるごと中級2』を使用している。
 また、『まるごと』をすべて修了したクラスが2017年春コースより始まり、市販の教科書をアレンジし、使用している。
 その他、私立の語学学校がヌルスルタンに1校、アルマティに1校ある。アルマティの学校では、日本語以外にも日本文化体験などの講座を多く展開している。(日本人講師1名)ヌルスルタンにも、日本人日本語教師の配偶者が経営する語学学校があり、30名ほどの学習者が在籍している。

IT・視聴覚機材

 以前は、外国語大学などでLL教室を用いてビデオ、テープなど視聴覚機材を使ったLL教育が行われていたが、校舎の移転によりLL教室が使用できない状況となっている。カザフ国立大学においても、日本の援助によって作られたLL教室の老朽化が進み、使用できない機能が多く、通常の教室として使われている。
 インターネット環境の整備は、あまり進んでいない。カザフ国立大学では筑波大学の支援で数台のノートPCを教室に導入し、インターネットを使った授業ができるように環境を整えているが、他の高等教育機関においてはインターネットを用いた授業はあまり行われていない。教員によっては、PCを持ち込み、パワーポイントを利用した授業を行う者もいる。

教師

資格要件

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 ヌルスルタンNIS1校においては4年制大学主専攻日本語卒業、日本語能力試験N2以上とされている。
 アルマティでも同等の条件を求められているが、新卒や経験のない教師は採用されにくい状況である。

高等教育

 大学では、助教授職以上は博士候補の学位を持っていることが最低要件となっている。常勤講師は、現地人の場合は5年制大学で日本語を専攻した者または修士号を取得した者となっている。日本人の場合は日本で得た修士号以上を持っていることが要件になっているが、外国人の査証取得が年々厳しくなっており、日本語教育や言語学の専攻でなければ、査証が発給されない。

学校教育以外

 カザフスタン日本人材開発センター(日本センター)で教える日本語教師は、大学の日本語専攻学科を卒業した者、または日本語能力試験N2以上の水準が要求される。筆記試験と面接を行った上で採用を決定し、その後1ヶ月半の研修(OJT含む)を行い、授業を担当している。

日本語教師養成機関(プログラム)

カザフ国立大学東洋学部
 2年生と4年生の時に「日本語教授法」、最終学年では「教育実習」がある。
カザフ外国語大学東洋学部
 2年生と4年生の時に「外国語教授法」の授業が行われており、3、4年次には「教育実習」がある。
カザフスタン日本人材開発センター(日本センター)
 現在、一般的な日本語教師養成のためのコースは開講されていないが、この春に『まるごと新人教師研修』を行った。(2週間の座学と2回の実習。すべて無料)
また、年に1回『まるごと』教師研修も行っている。(7月に2日間の日程)
国際交流基金のプログラム
 「日本語教師研修(短期・長期)」などの日本語教師を対象としたものがある。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 高等教育機関で最も日本語学習者が多いカザフ国立大学に1名(国際交流基金派遣の日本語専門家は2019年2月末で終了)、ユーラシア大学に1名、カザフスタン日本人材開発センター(日本センター)に2名(国際交流基金派遣の日本語専門家 アルマティ、ヌルスルタンにそれぞれ1名)、民間日本語学校に2名、日本人教師がいる。カザフ国立大学においては、主に大学院の授業を担当しているが、その他の教育の現場においても、発音や微妙なニュアンス、及び日本文化、日本事情を教授できる日本人教師の果たす役割は大きく、ネイティブ教師数の増加が望まれている。特に2017年度、ユーラシア大学が日本人教員の公募を行い、新規に1名が採用された。2019年2月に帰国したが、その後2019年度(9月より)に新たな日本人教師が採用された。他大学でもこれをモデルに日本人講師の採用が進むことが期待されている。

教師研修

 2012年8月に『第4回トゥルク諸国日本語教育セミナー』(国際交流基金助成)が開かれ、日本から2名の講師を招聘したほか、キルギス、ウズベキスタン、トルコ、アゼルバイジャンから日本語教師が参加した。ほかにも2013年11月中央アジア国際研究集会『日本語学習辞書開発の支援を考える』(筑波大学共催)、2017年4月『第21回中央アジア日本語教育セミナー』(国際交流基金助成)などのセミナーが開催されている。これらのセミナーにおいては、カザフ国内だけではなく、中央アジア各国からも教師がそれぞれ総勢30~40名前後、参加している。
 その他、国際交流基金日本語国際センターで実施される訪日研修には、長期、短期合わせて毎年数名の教師が参加している。

現職教師研修プログラム(一覧)

 不定期に教師会、カザフ国立大で勉強会が開かれている。また、カザフスタン日本人材開発センター(日本センター)において、国際交流基金派遣日本語専門家による『まるごと 日本のことばと文化』(前出)を使用した教師研修や、アスタナの日本語教師向けの教授法研修もカザフスタン日本人材開発センター(日本センター)およびカザフ国立大の国際交流基金派遣日本語専門家が不定期で行っている。
 国際交流基金のプログラムのうち、訪日研修としては公募による日本語教師研修がある。

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 1998年に日本語教師の発意により「カザフスタン日本語教師会」が発足した。同会は日本語教育の発展を図ることを目的とし、日本語教育に関する情報交換の場、日本語教師相互の親睦・交流の場としての意義を有する。不定期の例会を行っている。また、メーリングリストで情報共有も行っている。
 教師会行事としては、毎年JF助成申請により弁論大会を実施、2020年2月29日に第22回目を開催する予定であった。しかし、ここでも新型コロナウィルスの影響で開催中止を余儀なくされ、様々な方法を模索し、9月5日(土)にオンライン(オンライン会議システムZOOM使用)にて実施した。

最新動向

 専門家主導の教師会運営が長年行われてきたが、教師たちの自立を促すため、専門家はオブザーバーとしての立場に移行。現地教師での運営となっている。

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣(2019年10月現在)

日本語専門家

 カザフスタン日本人材開発センター(ヌルスルタン) 1名

国際協力機構(JICA)からの派遣

 なし

その他からの派遣

 (情報なし)

シラバス・ガイドライン

 高等教育においては、教育科学省が作成する国レベルの基準(ガイドライン)が存在する。このガイドラインに従って、カザフ国立大学、カザフ外国語大学、ユーラシア国立大学の3大学が、高等教育の年間プログラムを作成する。各大学は、このプログラムに準じ、年間の指導プログラムを作成する。

評価・試験

 現在のところ、カザフスタンで日本語学習者のレベルを測る共通の基準は存在しないが、各教育機関における修了試験は、教育科学省の「修了試験実施法令」に基づいて実施されているため、学習の到達度・レベルを測る効率的な基準とされている。同法令では、初・中教育機関、及び高等教育機関における修了試験の実施方法、科目、合否の判定基準などについて詳細に定められている。
 このほか、全国的、全世界的な基準としては、日本語能力試験がある。カザフスタン国内のみの同種の試験は存在しないため、現在のところ日本語学習者のレベルを客観的に測定する基準は、日本語能力試験のみである。同試験は、日本の公的機関が実施する試験として非常に権威あるものと認識されており、日本語学習者にとって学習意欲の向上に資するものとされる。2011年から、7月と12月の年2回の実施を始めた。また、2012年12月からアスタナ(現ヌルスルタン)での実施を開始した。(2020年は7月12月ともに新型コロナウィルスの影響で中止)

評価・試験の種類

  • 各教育機関における修了試験。各教育機関学習者を対象。
  • 日本語能力試験。日本語学習者全般を対象。

日本語教育略史

1991年 カザフスタン独立
1992年 日本語教育の本格的始まり
アル・ファラビ名称カザフ民族大学(カザフ国立大学)東洋学部中国語学科において日本語コース開設
1993年 カザフスタン共和国内閣管轄下 言語委員会設立
カザフ国立大学中国言語文学科で第二外国語選択開始
1996年 アルマティ第2学校における日本語教育の開始
1997年 「カザフスタン共和国言語法」制定
アブライ・ハン名称カザフ国立国際関係外国語大学東洋言語学部において、第二言語選択開始(2019年現在は行われていない)
1998年 アブライ・ハン名称カザフ国立国際関係外国語大学東洋言語学部において、主専攻コース開始
アルマティ第12、123学校、ジャンブール第45学校における日本語教育の開始
大統領令により「言語開発と機能」国家プログラム承認
カザフ国立大学にて、東洋学部極東学科設立。コース名が「日本語日本文学コース」となる
1999年 L.N.グミリョフ名称ユーラシア国立大学にて日本語学習コース(第二外国語)設置
2000年~ カザフ語教育の活発化
2001年 日本語能力試験実施開始
2002年 コクル学校における日本語教育の開始
カザフスタン日本人材開発センター(日本センター)創設
2003年 「2002-2003年学習期間修了試験実施」法令発布
カザフ国立大学にて、東洋学部極東学科から日本語学科が独立。学科名を「日本語学科」から「日本学科」に変更
カザフ外国語大学において外国語言語学、教育法分野の大学院コース開設
2004年 「2001-2010年にわたる言語開発と機能」国家プログラム採択
2007年 カザフ国立大学東洋学部日本学科に大学院修士課程設置
2009年 KIMEPの日本語コース(第二外国語)が閉講
2010年 カザフ民族教育大学の日本語コース(第二外国語)が閉講
2011年 日本語能力試験、年2回の実施を開始
カザフ国立大学東洋学部日本学科が韓国学科と併合され、「韓国・日本学科」に変更
2012年 日本語能力試験、アスタナ(12月)での実施を開始
2013年 初等・中等教育(シュコーラ)の日本語コースが閉講
カザフ国立大学国際関係学部の日本語コース(第二外国語)が閉講
2018年9月 アルマティ、ヌルスルタンNIS各1校で、選択科目として日本語教育が始まる(非正規)
2019年11月 アルマティ、ヌルスルタンのNIS各1校に於いての日本語教育で、『まるごと 日本のことばと文化』の使用を開始。
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