オランダ(2020年度)

日本語教育 国・地域別情報

2018年度日本語教育機関調査結果

機関数 教師数 学習者数※
16 40 1,496
※学習者数の内訳
教育機関の種別 人数 割合
初等教育 0 0.0%
中等教育 0 0.0%
高等教育 1,079 72.1%
学校教育以外 417 27.9%
合計 1,496 100%

(注) 2018年度日本語教育機関調査は、2018年5月~2019年3月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 オランダの高等教育機関における日本語教育は、1855年、ライデン大学に日本学科が設立されたことを始まりとし、ライデン大学は今日なお欧州でも指折りの日本研究及び日本語教育の拠点として知られている。1980年代初頭より20年以上に亘り、エラスムス大学経済学部内に日本の経済・社会研究と日本語学習を目的とした現代日本学科が存在したが、2000年代に入り大学内部の改革の一環として廃学となった。1980年代半ば以降、南大学(旧マーストリヒト外国語大学、1988年)、ロッテルダムビジネススクール(旧アジア貿易経営専門学校、1998年)等においても日本語教育が行われるようになり、最近では市民大学等でも盛んに成人に対する教育が行われている。

背景

 ライデン大学の所在するライデン市は、出島の商館付医師を務めたシーボルトが日本から帰国した後に居住した地であり、同人が日本から持ち帰った博物学コレクションは、オランダにおける日本への関心を惹き起こすのに寄与したといえる。近年では、両国間の好調な通商関係を背景とした日本の経済及び科学技術への関心にとどまらず、日本の現代文化への関心から日本語学習を始める例も増えてきている。

特徴

 オランダの大学生は、大学進学以前にほとんどが英語、ドイツ語、フランス語等、複数の欧米諸言語を習得しており、日本語学習は追加的な言語習得とみなされている。しかしながら青少年層のみならず幅広い年齢層において現代日本文化(特にアニメ・マンガ)や日本(食文化やスポーツなど広い分野)に対する関心が高まっており、日本語学習者は増加の傾向にある。また、日本語教育を行う高等教育機関では、日本の大学との学生交換協定の締結を積極的に進めており、日本語を専攻する学生のうち相当数が日本留学の機会を得るようになっている。

最新動向

 2015年より年1回、ライデン大学で日本語能力試験(JLPT)が実施されている。しかし、2020年度は新型コロナウイルス感染症の拡大により中止となった。近年見られる動向の一つとして、お金と時間がかけられる中高年で日本語を趣味として勉強する層が近年増えてきていることがあげられる。しかし、2020年春からのコロナ禍の影響でオンライン教育が広まってきた関係上、日本語学習者数を把握するのが難しくなってきている。

教育段階別の状況

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていないが、継承語教育としての日本語教育を行っている私的教育機関が存在する。

中等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。ただし、インターナショナルスクールや補習校といった教育機関での日本語教育は行われている。また、公的な日本語教育が行われていない分、個人で日本語を勉強している10代の学生が多くいることが分かっている。

高等教育

  1. 1.ライデン大学人文学部日本学科は、2017年現在、オランダにおいて日本研究を専攻することができる唯一の学科であり、研究者の育成を目的とした古典の教育も行われている。同大学は京都大学、長崎大学、慶應義塾大学、早稲田大学、立教大学、上智大学、同志社大学、大阪大学、東京外国語大学、神戸大学、東北大学、山形大学等と交流協定を締結している。
  2. 2.日本研究センターを有するフローニンゲン大学でも日本語講座が開講されている(なお、同大学には大阪大学欧州センターが設置されており、大阪大学からの同大学への留学生の便宜を図っている。)。
  3. 3.HBO(【教育制度】参照)である南大学、ロッテルダムビジネススクール、アムステルダム職業大学等では、通訳の養成やビジネスでの活用を主眼とした教育が行われており、学生のなかには交換留学に加えて日本企業での研修も経験する者もいる。

学校教育以外

 社会人向けに様々な講座を開く各地の「市民大学」(Volksuniversiteit)や民間の語学教室で初中級の日本語教室が開かれており、また、若者から壮年層にかけて独学で日本語を学習している例も見られる。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 8-4(~6)-4(~6)制。
 義務教育年齢は5~16(18)歳の12(14)年間。
 初等教育は小学校(12歳までの約8年間。義務教育は満5歳からだが満4歳から入学可)で行われる。
 中等教育は、進路別に、大学進学中等教育(VWO:6年間)、上級一般中等教育(HAVO:5年間)または職業訓練中等教育(VMBO:4年間)で行われる。VMBOの修了者の多くが中級職業教育(MBO:4年間)へ進学する。中級職業教育(MBO)については18歳を上限に一定レベル以上を修了するまでが義務教育期間である。
 高等教育は、大学教育(WO:3~6年)及び上級職業教育(HBO:4年間)で行われ、それぞれVWOHAVOの修了者が主として進学する。従来、WOでは、卒業者に対して学士号ではなく修士号を授与する独自の制度が採られてきたが、2002年以降、学士・修士制度が新たに導入された。HBOは、実務を目的とした教育機関であり、研究を主な目的とするWOとは本来は異なる位置付けにあったが、学士・修士制度の導入により、HBO卒業者も制度上はWOの卒業者と同じく学士号を授与されることになり、HBOも「職業大学」と称されるようになった。

教育行政

 教育機関は基本的には教育文化科学省の拠出金をもとに運営されている。

言語事情

 主要言語はオランダ語。近年、社会人の読み書き能力の向上と移民の社会統合を進めるためにオランダ語教育を強化している。英語に関してはオランダ語と似通っていることもあり、ほとんどのオランダ人が基本的なコミュニケーション能力を有している。

外国語教育

 基礎教育では、ほとんどの初等学校において最終1年間もしくは2年間の英語が必修。中等教育でも英語が必修。さらに、VWOではフランス語、ドイツ語がほぼ必修であるほか、イタリア語・ロシア語・スペイン語・古典ギリシャ語・ラテン語等も選択が可能である。2015年からは中国語もVWOの卒業試験の科目として正式に取り上げられることになった。また、HAVOにおいても、上記の英語以外の外国語の中から第三外国語として一つ以上選択することができる。

外国語の中での日本語の人気

 日本との長い交流の歴史を有するオランダでは、もともと日本語に根強い人気があることに加え、近年は現代日本文化(特にアニメ・マンガ)への関心の高まりなどから、日本語の人気は、青少年層を中心に更に高まっている。

大学入試での日本語の扱い

 いわゆる大学入試にあたる試験は行われていない。

学習環境

教材

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

高等教育

 大学により使用される教材は様々であるが、初級の授業用として『みんなの日本語』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)ならびに『初級日本語げんき』坂野永理ほか(The Japan Times)の人気が高い。

学校教育以外

 成人教育に関しては『まるごと』(国際交流基金)が多くの機関で使用されている。

IT・視聴覚機材

 ほとんどの大学においてオンライン教材を読み書きや聞き取りの訓練に積極的に活用している。2020年は新型コロナウイルス感染症の影響で春頃よりほとんどの教育機関がオンラインにおける日本語教育に切り替わった。ズームなどを用いて授業を行なっている個人、機関がほとんどである。

教師

資格要件

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

高等教育

 資格要件は学校によって異なる。「国語学・日本語教育」関係の修士号が公募の際の最低条件になっている学校もあれば、学士号取得者であれば、むしろ教師経験や、実務社会で働いた経験、オランダ語の能力が重視される場合もある。

学校教育以外

 特になし。

日本語教師養成機関(プログラム)

 日本語教師養成を行っている機関、プログラムはない。(南大学では日本語教師になるための勉強をしている日本人留学生に日本語を指導する機会を提供している。)

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 高等教育機関では、語学部門の半数近くが日本人である。常勤講師のネイティブ教師の割合は更に高い。

教師研修

 現職の日本語教師対象の研修はない。

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 2017年にはオランダ日本語教師会が設立され、各種の研修、情報交換などが行われている。

最新動向

 オランダ日本語教師会では年に1~2回程度,講演会やワークショップを実施し,国内外からの参加者を得ている。近年の実施案件は以下のとおり。

  • ・国立国語研究所野田尚史教授、テーマ「聞く」「話す」「読む」「書く」という4つのコミュニケーション活動のための文法とは』(2017年9月)
  • ・細川英雄教授,テーマ『「活動型日本語教育」の理論と実践』(2018年5月)
  • ・ベルギー日本語教師会櫻井直子会長,テーマ『「行動アプローチ」の観点からのコースデザイン』(2018年秋)
  • ・米国ケースウェスターンリザーブ大学白井恭弘教授,テーマ『第二言語習得理論から見る日本語教育』(2019年6月)
  • ・ケルン日本文化会館松浦とも子専門家,テーマ『第二言語習得理論に基づく学習プロセスを考える-「まるごと」を使って』(2019年11月)
  • ・2020年に予定されていた講演事業はコロナ禍により延期となっている。

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣

国際協力機構(JICA)からの派遣

 国際交流基金、JICAからの派遣は行われていない。

その他からの派遣

 (情報なし)

シラバス・ガイドライン

 統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。

評価・試験

 2015年より年1回、ライデン大学で日本語能力試験(JLPT)が実施されている。

日本語教育略史

1855年 ライデン大学に日本学科設立
1988年 南大学(旧マーストリヒト外国語大学)にて日本語教育開始
1998年 ロッテルダムビジネススクール(旧アジア貿易経営専門学校)にて日本語教育開始
2000年 フローニンゲン大学にて日本語教育開始
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