ノルウェー(2020年度)

日本語教育 国・地域別情報

2018年度日本語教育機関調査結果

機関数 教師数 学習者数※
9 17 640
※学習者数の内訳
教育機関の種別 人数 割合
初等教育 0 0.0%
中等教育 210 32.8%
高等教育 389 60.8%
学校教育以外 41 6.4%
合計 640 100%

(注) 2018年度日本語教育機関調査は、2018年5月~2019年3月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 初めて日本語がオスロ大学で教えられたのは1966年。その後、1986年にはベルゲン大学、1987年にはオスロ商業高校とノルウェー経済大学、1990年にはベルゲン商業高校、2001年にはノルウェー科学技術大学、2005年にはヴォルダ単科大学にて日本語教育が開始された(2009年に中断)。2006年にはソナンス私立高校にて日本語クラスが開設された。2000年代に入り、若年層では日本のアニメ・マンガといったポップカルチャーへの関心から、日本語学習者が増加。また、ノルウェーの中核的日本研究機関であるオスロ大学日本学科及びベルゲン大学日本語学科では、各学科への入学希望者及び日本語を選択科目として受講を希望する者が定員を超える人気ぶりである。実際、2018年のオスロ大学日本学科への第一進学希望者は155名(定員60名)、ベルゲン大学日本語学科への第一進学希望者は86名(定員30名)であった。これは、各大学の中国・中国語学科第一志望者が83名(定員60名)、29名(定員20名)であることと比較すると顕著であるということがわかる。さらに、トロンハイムなどの地方都市でも日本語学習者は増えている。

背景

 1960年代後半、オスロ大学の2教授(内1名は日本人)により東アジア研究所が開設され、その後、大阪万博、札幌オリンピックにより日本への関心が高まった。更にリレハンメル冬季オリンピックに続く長野オリンピック開催、2005年の日本・ノルウェー外交関係樹立100周年時の天皇皇后両陛下によるノルウェー御訪問なども、日本への関心に影響を与えた。また日本が第二次世界大戦後に高度経済成長を通して、高度な技術を発展させたことも、ノルウェーで日本への関心が高まったことと密接に関連している。

特徴

 日本語教育は中学校、高校あるいは大学レベルで行われている。全体的に日本語に対する関心は高まりつつある。最近は、アニメや現代文化への関心から日本語を学ぶ学生が多い。オスロ大学では2003年から、より多くの科目と日本語とを組み合わせて勉強できるように制度改革をしたこともあり、日本語を選択する学生が増加した。また日本語を教える学校が増えつつあり、2005年にはヴォルダ単科大学(Høgskolen i Volda、ヴォルダ市:但し2009年に中断)において、また2006年にはソナンス私立高校(Sonans Privatgymnas、オスロ市)において日本語クラスが開設された。

最新動向

 日本語学習者数が増加している当地現状を受け、2020年12月6日、当地初となる日本語能力試験(JLPT)をコングスヴィンゲル高等教育センターが実施機関となり開催。

教育段階別の状況

初等教育

 外国語としての日本語教育は実施されていないが、日本人を親に持つ児童に対して日本語教育の機会が国の義務教育の中で特殊教育として実施されている。

中等教育

 中学校では外国語としての日本語教育は実施されていないが、上述の「母国語教育(母国語による授業)」を受ける権利は、義務教育期間に行使できる。ノルウェーでは中学校終了までが義務教育となるため、学校側が認定する対象者について日本語教育を実施できる。但し、こういった母国語教育は現在、ノルウェー語特殊教育の一部として実施されている。
 高等学校では、外国語として日本語が選択科目対象になっているため、正に外国語としての日本語教育が実施されている。オスロ商業高校(Oslo Handelsgymnasium:同校の生徒及び放課後に同校で日本語授業を受講する他校の生徒を合わせて約130名)及びアマリエ・スクラム高校(Amalie Skram Videregåendeskole:2019年は、ホルダラン県の高校生対象としたネットベースの日本語クラスのみ開講)の2校で日本語が教えられている。

高等教育

 国内の国立総合大学7校のうち、オスロ大学、ベルゲン大学、ノルウェー科学技術大学(NTNU,トロンハイム)、ノルウェー経済大学に日本語コースが開設されている。オスロ大学(日本語を学ぶ学生の数は約170名、その他日本関連授業を受講する学生も多い)においては、初心者を対象とした学部レベルから修士、博士レベルに及ぶ学習課程が用意されている。ベルゲン大学(日本語学習者約120名)においては初心者を対象に3年生までの授業が行われており、6学期(計3年)に亘って学部レベルで日本語1~4(日本語能力試験N2レベルまでに達する)及び日本文化・社会の課程が実施されている。第4学期後半から第6学期前半の間、日本留学が行われている。ノルウェー科学技術大学(NTNU,トロンハイム)においては、初級レベルの日本語の授業(学生100名)が行われており、現代日本についての講座も開講されている。日本留学を目指す理工系の学生が多く、実用的な日本語教育に重点をおいている。ノルウェー経済大学(Norges Handelshøgskole i Bergen:日本語履修学生22名)においては日本語の授業が行われているほか、日本企業との商取引の際の留意点に関する講義も行われている。第4学期に日本への留学が奨励されている。
 当地の中心的日本研究機関であるオスロ大学日本語学科の学部レベル及び修士レベルのカリキュラム概要は以下のとおり。なお、2017年秋学期より、大幅なカリキュラム変更が実施された。
学部レベル:
 6学期(計3年)に亘って日本語1~4。入学後2年で初級を修了、第5学期(第3学年前期)に日本留学、帰国後第6学期(第3学年後期)に中級を修了。日本語と並行して、日本の文学・歴史・社会・宗教のほか、社会科学系科目などを組み合わせた履修が可能。
修士レベル及びそれ以上:
 2年間コース。第2学年では日本語の授業はなく、修士論文の執筆に専念する。

学校教育以外

 オスロ市及びベルゲン市の、市民大学等の成人向け夜間学校(オスロ市民大学:Folkeuniversitetet i Oslo学習者100名、ベルゲン市民大学:Folkeuniversitetet i Bergen学習者35名)で日本語コースが開講されている。オスロのリング言語センターでも日本語教育が数年間開講されていたが、2014年4月にセンターが閉鎖した時に日本語教育も終了した。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 7-3-3制。
 小学校7年間(6~13歳)、中学校3年間(13~16歳)。
 高等学校は3年間(16~19歳)で、一般課程と職業課程に分かれる。
 高等教育は大学や単科大学(学士号は3~4年間、修士号は2年間)。
 義務教育は、小学校と中学校の10年間。

教育行政

 教育省がすべての教育に責任を有している。

言語事情

 ノルウェー語、サーミ語が公用語。

外国語教育

《第一外国語》
 各小学校は、第1学年から第一外国語として英語の授業を行うことを義務付けられている。中学校においては3年間の英語学習が必修。高校では、第1学年で必修であり、生徒の専攻によっては第2、第3学年で英語学習が必要となる。
《第二外国語》
 第二外国語学習は中学校で習う「第1段階」及び高校で習う「第2段階」に分かれており、高等教育機関への進学のためには「第2段階」を履修しなくてはならない。
 中学校の第1学年から、生徒は第二外国語、あるいは英語かノルウェーの公用語(ノルウェー語かサーミ語)の補足課程のいずれかを選ばなければならない。第二外国語を選んだ場合は、中学校で3年間を通じて基礎を勉強する「第1段階」を学習する。スペイン語、フランス語、ドイツ語の履修者が伝統的に最も多いが、各学校においてどの語学を教授するかについての明確な規定はない。中学校で学習した第二外国語のさらに上級水準の「第2段階」の課程を、高校第1学年及び第2学年において学習することによって、第二外国語学習履修の基準を満たす。
 また、中学校において第二外国語学習を履修しなかった場合、或いは中学校で学習した言語と違う言語の学習を希望する場合は、高校から新しい第二外国語の学習を始める。この場合は、高校3年間を通じてその言語の「第1段階」及び「第2段階」の両方が組み込まれた課程を学習する必要がある。スペイン語、フランス語、ドイツ語のほか、イタリア語、ロシア語、サーミ語、フィンランド語、ラテン語等、中学校よりも広い選択の余地が与えられる。高校における日本語課程は「第1段階」から始まり、さらに上級のクラスに進むことによって、日本語の「第2段階」を学習する。
 日本語の学習を受けられる高校は数が限られているため、日本語授業のある高校では、他校の希望高校生を募って、課業時間内の日本語授業に参加させる場合があり、また、課外授業を設立してそれに参加させる場合もある。

外国語の中での日本語の人気

 前述のとおり、2000年代に入り、日本語学習希望者の数が増加。オスロ大学日本語学科への出願数は、東アジア言語専攻の中で最多となっている。

大学入試での日本語の扱い

 大学入試で日本語は扱われていない(高校での履修科目及び成績に基づいた選考が行われているため、大学入試がない)。

学習環境

教材

初等教育

 外国語としての日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

  • 『初級日本語 げんき 1・2』坂野永理ほか(ジャパンタイムズ)
  • JAPANESE FOR BUSY PEOPLE Kana Workbook』 国際日本語普及協会(講談社USA
  • 『Nihongo på norsk』Tsuruta Miyuki Pedersenほか(Fagbokforlaget 2017)

高等教育

  • 『初級日本語 げんき 1・2』(前出)
  • Kanji Look and Learn』坂野永理ほか(ジャパンタイムズ)
  • AN INTEGRATED APPROACH TO INTERMEDIATE JAPANESE』三浦昭ほか(ジャパンタイムズ)
  • Japanese Step by Step: An Innovative Approach to Speaking and Reading JapaneseGene Nishi(Ntc Pub Group)
  • 『1日15分の漢字練習』学校法人KCP学園KCP地球市民日本語学校(アルク)
  • Naru hodo 1・2』Harry Solvang (Fagbokforlaget 2015)
  • 『日本語学習のためのよく使う順 漢字2200』徳弘康代(三省堂 2014)

学校教育以外

  • 『初級日本語 げんき 1・2』(前出)
  • JAPANESE FOR BUSY PEOPLEⅠ・Ⅱ』国際日本語普及協会(講談社USA
  • JAPANESE FOR YOUNG PEOPLE』国際日本語普及協会(講談社USA
  • JAPANESE FOR YOUNG PEOPLE I Kana Workbook』国際日本語普及協会(講談社USA
  • Basic Kanji Book Vol 1』加納千恵子ほか(凡人社)

IT・視聴覚機材

 オスロ大学では、講義録、教科書に附属のCDの内容、口頭練習用のデータファイルや過去のテスト等、各種日本語教材のデータファイルを学生がアクセスできるようウェブサイトに保存している。また、映像で日本の地域等について学ぶこともある。他の大学レベルの日本語クラスの場合でも、このようなウェブサイトを有している機関が多い。オスロ大学では2018年からは全ての試験がPCで実施される予定。また、ベルゲン大学及びノルウェー経済大学、ノルウェー科学技術大学では教科書『初級日本語 げんき』(前出)に関連する日本語学習用のウェブサイトを利用している。どの教育段階においても、学習者はインターネットにより漢字・文法の練習をしたり、情報を収集したり、自分の発表のためにパワーポイントを使ったりしている。

教師

資格要件

初等教育

 外国語としての日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 中学校で日本語の教師になるためには、高い水準の日本語力と、大学レベルの教育機関で教授法の資格を取得することが求められる。大学で日本語及び教授法を学び学士号を取得したものは、高校で常勤の日本語教師になることが可能。

高等教育

 大学では、国籍を問わず、修士号を有するものは日本語講師(University Lecturer)に、学士号を有するものは会話クラスの教師になる資格を有する。大学で常勤ポストを得るためには、博士号が必要。

学校教育以外

 大学レベルの教育機関で日本語の(教授)資格を取得していることを、採用の条件とする機関が多い。

日本語教師養成機関(プログラム)

 オスロ大学ではPPU(Praktisk Pedagogisk Utdannelse 教職課程)に2013年日本語が導入され、オスロ商業高校における実習等が行われている。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 日本語教師の資格および修士号もしくは博士号(日本語教育または言語学)を有することが必須、永住者が講師として活躍している。オスロ大学では6名の正規日本語教員のうち3名が日本人、ベルゲン大学は日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用は確認されていない。ノルウェー科学技術大学では正規雇用の日本語教員は日本人1名となっている。

教師研修

 現職の日本語教師対象の研修はないが、2017年より、ノルウェー全国の日本語教師グループによる自主セミナー等が行われている。

現職教師研修プログラム(一覧)

2017年には、国際交流基金の助成により、オスロ商業高校において、教師グループによる新たな日本語教材の使用に関する自主セミナーが開催された。

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 日本語教育関係者・日本語学習者の情報交換のためのネットワークとして、2013年、Facebookグループ「Nihongo i Norge」が設立された。
 オスロ大学及びベルゲン大学では、交換留学提携先の日本の大学とのネットワークがあるほか、個人レベル(例えば、市民大学の講師とオスロ商業高校の講師)での情報交換も行われている。
 また、北欧5か国(デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、アイスランド)が共同運営するNIAS(Nordic Institute of Asian Studies)が存在し、研究活動、ニュースレター発行、講演会実施等を中心に北欧5か国における日本を含めたアジア研究のコーディネートを行っている。(本部:デンマーク・コペンハーゲン大学アジア研究所内)。

最新動向

 北欧現代日本社会研究会(NAJS - Nordic Association for the Study of Contemporary Japanese Society)が2010年にオスロで会議を開催し、日本研究関係者間の交流が促進された。また、2013年8月に北欧日本・韓国研究会(NAJAKS - Nordic Association of Japanese and Korean Studies)の学会がベルゲンで開催され、北欧各地から日本研究関係者が多く集まった。2017年には日本資料専門家欧州協会(EAJRS)の年次総会がオスロにて開催され、日本語教育関係者にとっても欧州内ネットワーク強化の機会となった。

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣

国際協力機構(JICA)からの派遣

 国際交流基金、JICAからの派遣は行われていない。

その他からの派遣

 (情報なし)

日本語教育略史

1966年 オスロ大学にて日本語教育開始
1986年 ベルゲン大学にて日本語教育開始
1987年 オスロ商業高校、ノルウェー経済大学にて日本語教育開始
1990年 ベルゲン商業高校にて日本語教育開始
2001年 ノルウェー科学技術大学にて日本語教育開始
2005年 ヴォルダ単科大学にて日本語教育開始
2006年 ソナンス私立高校にて日本語クラス開設
2008年 ノルウェー科学技術大学にて、単位認定の日本語の授業設立
2009年 ヴォルダ単科大学にて日本語教育が中断
2011年 オスロのトーセン小学校にて日本語教育開始
2012年 オスロのトーセン小学校にて日本語教育が中断(日本語教師の異動のため)
2014年 オスロのリング言語センターにて開講されていた日本語教育が閉講(センター全体が閉鎖したため)
2016年 ソナンス私立高校にて日本語クラスが閉講
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