カタール(2020年度)
日本語教育 国・地域別情報
2018年度日本語教育機関調査結果
機関数 | 教師数 | 学習者数※ |
---|---|---|
5 | 12 | 256 |
教育機関の種別 | 人数 | 割合 |
---|---|---|
初等教育 | 0 | 0.0% |
中等教育 | 60 | 23.4% |
高等教育 | 100 | 39.1% |
学校教育以外 | 96 | 37.5% |
合計 | 256 | 100% |
(注) 2018年度日本語教育機関調査は、2018年5月~2019年3月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。
日本語教育の実施状況
全体的状況
沿革
液化天然ガス(LNG)大国として急速な経済発展を遂げているカタールでは、「2030国家ビジョン」の一環として人材育成のための教育が重要なテーマとして掲げられており、カタール財団の教育都市をはじめ、国を挙げて教育に関する様々な投資が行われている。海外の教育制度への関心も高く、「伝統と近代化の融合を成し遂げ、勤勉な国民を生んだ国」として、日本の教育制度及び日本語教育への関心も強い。カタール大学では2017年10月より社会人向けの夜間の日本語講座が開講,Hamad Bin Khalifa University大学院の社会人向け日本語クラスは2020年より開講した。
背景
カタール人は、日本が第二次世界大戦の敗戦から復興し、自動車をはじめ優れた経済・技術力を有する国となったことにある種の憧憬の念を抱いている。また、日本人は道徳観・倫理観の高い国民であるという印象を持っている。
ハマド前首長は首長時代より、カタール国民が日本式教育を受けることのできる「日本学校」の設立を自ら強く希望していたが、実現には至っていない。
特徴
会話及び簡単な読み書きが中心になっているが、DVDやスライドを用いた日本文化の紹介も行われており、日本文化全般に親しむことを目的とするコースが多い。全体として、初級レベルのコースが中心となっている。
最新動向
ターリク・ビン・ズィヤード男子高校にて、第二選択外国語としての日本語教育が導入されていたが2020年9月から教育省の方針により廃止となった。
カタール大学では2017年10月より社会人向けの夜間の日本語講座が開講されているが,2020年9月よりコロナ禍の影響によりオンライン授業に移行している。
Hamad Bin Khalifa University大学院の社会人向け日本語クラスは2020年より開講した。
教育段階別の状況
初等教育
日本語教育の実施は確認されていない。
中等教育
日・カタール外交関係樹立40周年(2012年)の節目に、第二選択外国語として日本語教育の試験的導入が開始し、ターリク・ビン・ズィヤード男子高校にて長きにわたり日本語教育が行われていた。しかし,近年教育省による全公立学校の授業カリキュラム統一を意図した制度改革を背景とし,教育省からの選択外国語科目数削減要請に伴い2020年9月より廃止された。
高等教育
カタール大学で2014年から選択科目として日本語講座が開設された。 2020年11月時点でオンライン授業が継続されている。
学校教育以外
私的機関が二校存在するが、2020年現在コロナ禍の影響で一時閉校、又はオンライン授業を併用するなどしている。
教育制度と外国語教育
教育制度
教育制度
6-3-3制。
教育行政
Ministry of Education and Higher Education(教育省)が管轄
言語事情
アラビア語が公用語だが、人口の9割が外国人ということもあり英語が広く通用する。
外国語教育
英語が主流。課外授業としてフランス語等の教育が行われている。
外国語の中での日本語の人気
学習者の多くは、日本のアニメ、ゲームなどポップカルチャーの影響を受けていて、最近では旅行先として日本に興味をもち、趣味として日本語を学習している人が増加傾向にある。
大学入試での日本語の扱い
大学入試で日本語は扱われていない。
学習環境
教材
初等教育
日本語教育は実施されていない。
中等教育
2020年6月まで日本語教育を行っていたターリク・ビン・ズィヤード男子高校では、講師自らが教材を用意しているほか、日本からの教材を利用していた。(教育省の方針により2020年9月から廃止)
高等教育
学校教育以外
『みんなの日本語』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)を基本とし、講師が自ら作成。 その他、ベルリッツが独自に利用している教材がある。
IT・視聴覚機材
学校やコースには参加せずに、携帯のアプリやユーチューブ等インターネットを活用し独自で勉強している人が多い。
教師
資格要件
初等教育
特になし。
中等教育
特になし。
高等教育
カタール大学およびハマド・ビン・ハリーファ大学で教える教師は、最低でも修士号を保持していることが必須。
学校教育以外
特になし。
日本語教師養成機関(プログラム)
日本語教師養成を行っている機関、プログラムはない。
日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割
2020年11月時点では、カタール大学に日本人日本語教師が各1名、プライベートの語学学校で1名。また,個人で日本語を自宅等で教えている方も数名いる。私立公立問わず日本人講師のニーズは常に高く、需要は大変大きい。
教師研修
現職の日本語教師対象の研修はない。
教師会
日本語教育関係のネットワークの状況
「カタール日本語教師会(JALTAQ)」(2010年設立)
日本語教師のみならず、日本語教育に関心がある在留邦人や日本や日本文化を発信していくことに関心のあるメンバーを中心として活動中。また、カタールでは日本語教師の不足も課題となっているため、日本語教育への関心がある者への勉強会の開催や情報交換を行っている。2020年11月現在の会員数は3名(この他賛助会員が2名)。
2013年3月以降,日本語スピーチコンテストを在カタール大使館とカタール日本語教師会が共催で開催。それ以後、毎年カタール大学にて継続して年一回日本語弁論大会を実施している。
その他、カタール日本語教師会は、不定期に日本語で会話を行う「話そう会」を実施している。カタール国内での新型コロナウイルスの蔓延を受け,2020年度は全イベントの開催中止又は延期が決定されている。
日本語教師派遣情報
国際交流基金からの派遣
国際協力機構(JICA)からの派遣
国際交流基金、JICAからの派遣は行われていない。
その他からの派遣
(情報なし)
日本語教育略史
2006年 | カタール教育省附属語学教育センター成人向け講座開始 アル・バヤーン女子学校にて日本語講座開始 |
---|---|
2009年 | アル・バヤーン女子学校日本語コース中止 |
2010年7月 | カタール教育省附属語学教育センター閉校 |
2010年9月 | カタール安全保障国際アカデミー(内務省付属)「Qatar International Academy for Security Studies;QIASS」開校 |
2011年3月 | Qatar Eastern Language Center開校 |
2012年9月 | ターリク・ビン・ズィヤード男子高校にて日本語学習が開始 |
2013年6月 | Qatar Eastern Language Center閉校 |
2014年9月 | カタール大学にて日本語講座が開設 |
2016年12月 | カタール安全保障国際アカデミー(内務省付属)「Qatar International Academy for Security Studies;QIASS」閉校 |
2017年 | ハングル日本語センター開校 |
2017年10月 | カタール大学、社会人向け夜間の日本語講座を開講 |
2018年12月 | カタール大学において湾岸初のJLPT開催 |
2019年8月 | ハマド・ビン・ハリーファ大学院大学、社会人向け夜間の日本語講座を開講 |
2020年6月 | ターリク・ビン・ズィヤード男子高校で副専攻だった日本語学習が教育省の指示で閉講 |