レバノン(2022年度)
日本語教育 国・地域別情報
2021年度日本語教育機関調査結果
機関数 | 教師数 | 学習者数※ |
---|---|---|
2 | 2 | 25 |
教育機関の種別 | 人数 | 割合 |
---|---|---|
初等教育 | 0 | 0.0% |
中等教育 | 0 | 0.0% |
高等教育 | 15 | 60.0% |
学校教育以外 | 10 | 40.0% |
合計 | 25 | 100% |
(注) 2021年度日本語教育機関調査は、2021年9月~2022年6月に国際交流基金(JF)が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。
日本語教育の実施状況
全体的状況
沿革
レバノンでは1990年の内戦終了後より日本語教育がいくつかの高等教育機関で採用されてきたが、不安定な治安情勢、教師不足などが原因で継続的に講座を開講している教育機関は存在しなかった。2001年より2004年までハリーリ・カナディアン大学(Hariri Canadian Academy of Sciences and TechnologyJFの日本語教師助成プログラムにより日本語講座が開講されていたが、学習者数の減少及び当地治安情勢から閉講となった。 その後、2005年2月からベイルート・サンジョセフ大学(Saint-Joseph University of Beirut)言語・翻訳研究所にて、慶應義塾大学との交換留学プログラムで在留していた日本人学生によって日本語初級講座が開講された後、2008年3月に同大学に設立された学術交流日本センター(Japan Academic Center)がその運営を引き継ぐ形で発足した。2013年時点で、同大学と慶應義塾大学と協定プログラムを結んでいるものの、慶應義塾大学側からの日本語教師の派遣は行われていない。2012年から2015年夏までは現地採用の日本人専任講師(1名)が同センターの副所長を務め、講座運営を担ってきたが、同講師の離任後はJFの「日本語普及活動助成」(現「日本語教育機関支援(助成)」)も受けつつ(2016年度から2018年度まで)、元国費留学生のレバノン人講師が講座運営を担ってきた。3年間に亘る助成金の受領終了後、同センターの運営は一層厳しいものとなり、その結果、同レバノン人講師は転職し海外へ移住した。2022年9月からは、現地採用の日本人専任講師(1名)が講座運営を担っている。
背景
レバノンでは、地理的・歴史的観点より欧米とのつながりが深く、これらの言語を学ぶ者は多いが、日本語を始めとするアジア言語の学習者は少ない。近年は若い世代を中心に、日本のアニメなどのポップカルチャー、ゲームソフト、最先端技術、生け花や空手などの伝統文化、武道に興味を持つものが多く、そのような興味をきっかけとして、日本語を学ぶ学習者がいる。
特徴
サンジョセフ大学には、2005年2月に初級レベル修了を目標とした日本語講座が、また2010年9月には中級コースが開講された。同大学は2学期制をとっており、秋学期は9月から1月まで、春学期は2月から6月まで開講されている。同大学では2017年9月現在6レベルのコースが開講され、計29名が受講している。
最新動向
2019年10月以降のレバノンにおける経済状況の急激な悪化に伴い、日本語講座の受講者は減少しているとみられる。サンジョセフ大学では、十分な受講者が確保できなかったことから、2021年の春学期の開講は見送られた。2022年9月からは秋学期が開始し、初級コースのみとなった。
教育段階別の状況
初等教育
日本語教育の実施は確認されていない。
中等教育
日本語教育の実施は確認されていない。
高等教育
サンジョセフ大学において、通訳・翻訳学部の学生に対しては選択必修科目の一つとして、その他の学生に対しては、選択外国語科目の一つとして日本語講座を開講している。卒業時の到達レベルは日本語能力試験N4程度である。また、卒業生の中には、文部科学省国費留学生(研究留学生)として、日本に留学した者もいる。
学校教育以外
サンジョセフ大学で行われている講座が、一般開放されており、大学内部の学生よりも外部からの受講生の方が多くなっている傾向にある。そのほかにも、語学学校(私立)で不定期に個人向け日本語講座が開講されていた時期もある。
教育制度と外国語教育
教育制度
教育制度
教育制度は大別して5-4-3制(フランス式)、6-3-3制。初等教育が義務教育となっている。
教育行政
教育行政は教育省が所掌し、教育大臣が統括している。このほか、パレスチナ難民キャンプではUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)により初等教育施設(小・中学校)及び高等学校が運営されている。
言語事情
公用語はアラビア語。
都市部では、フランス語、英語が広く使われている。
外国語教育
学校により異なる。
外国語の中での日本語の人気
フランス語、英語など欧米の言語と比べて、日本語の人気は高いとは言えない。
大学入試での日本語の扱い
大学入試で日本語は扱われていない。
学習環境
教材
初等教育
日本語教育の実施は確認されていない。
中等教育
日本語教育の実施は確認されていない。
高等教育
サンジョセフ大学:『みんなの日本語初級Ⅰ Ⅱ』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)
学校教育以外
サンジョセフ大学一般公開講座:『みんなの日本語初級Ⅰ Ⅱ』(前出)
語学学校:独自の教材
IT・視聴覚機材
サンジョセフ大学では、パワーポイントによるプレゼンテーションや、ビデオ、リスニング教材が導入されている。
教師
資格要件
初等教育
日本語教育の実施は確認されていない。
中等教育
日本語教育の実施は確認されていない。
高等教育
レバノン人日本語教師はいない。
学校教育以外
レバノン人日本語教師はいない。
日本語教師
サンジョセフ大学の日本語講座で元国費留学生のレバノン人講師が非常勤講師として勤務していた。
養成機関(プログラム)
日本語教師養成を行っている機関、プログラムはない。
日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割
初等教育
日本語教育の実施は確認されていない。
中等教育
日本語教育の実施は確認されていない。
高等教育
日本語講師常勤ポストは、サンジョセフ大学のみ。
学校教育以外
2015年夏以降、日本人講師は勤務していない。
教師研修
現職の教師対象の研修は行われていない。
教師会
日本語教育関係のネットワークの状況
国内に日本語教育関係のネットワークはないが、中東諸国(エジプト、アラブ首長国連邦、イエメン、イラン、カタール、サウジアラビア、シリア、チュニジア、トルコ、バーレーン、モロッコ、ヨルダン、レバノンほか)の日本語教師のネットワークがある(JFカイロ日本文化センターが主催)。
日本語教師派遣情報
国際交流基金からの派遣
国際協力機構(JICA)からの派遣
JF、JICAからの派遣は行われていない。
その他からの派遣
国際親善文化交流協会(NGO)が、2001年からハリーリ・カナディアン大学に対して、毎年1名の日本語教師を派遣していたが、日本語学習者の減少及び治安情勢から2004年の講座を最後に閉講となった。
日本語教育略史
1990年 | 高等教育機関で日本語教育開始(すべて閉講) |
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2001年 | ハリーリ・カナディアン大学にて日本語講座実施 |
2004年 | ハリーリ・カナディアン大学にて日本語講座閉講 |
2005年 | ベイルート・サンジョセフ大学言語・翻訳研究所にて日本語講座開講 |
2008年 | ベイルート・サンジョセフ大学に学術交流日本センター設立 |