カタール(2022年度)

日本語教育 国・地域別情報

2021年度日本語教育機関調査結果

機関数 教師数 学習者数※
4 9 71
※学習者数の内訳
教育機関の種別 人数 割合
初等教育 0 0.0%
中等教育 0 0.0%
高等教育 40 56.3%
学校教育以外 31 43.7%
合計 71 100%

(注) 2021年度日本語教育機関調査は、2021年9月~2022年6月に国際交流基金(JF)が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 液化天然ガス(LNG)大国として急速な経済発展を遂げているカタールでは、「2030国家ビジョン」の一環として人材育成のための教育が重要なテーマとして掲げられており、カタール財団の教育都市をはじめ、国を挙げて教育に関するさまざまな投資が行われている。海外の教育制度への関心も高く、「伝統と近代化の融合を成し遂げ、勤勉な国民を生んだ国」として、日本の教育制度及び日本語教育への関心も強い。
 カタール大学では2017年10月より社会人向けの夜間日本語講座が開講し、またハマド・ビン・ハリーファ大学でも2019年に社会人向け夜間日本語講座が開講した。

背景

 カタール人は、日本が第二次世界大戦の敗戦から復興し、自動車をはじめ優れた経済・技術力を有する国となったことにある種の憧憬の念を抱いている。また、日本人は道徳観・倫理観の高い国民であるという印象を持っている。
 ハマド前首長は首長時代(1995年~2013年)に、カタール国民が日本式教育を受けることのできる「日本学校」の設立を自ら強く希望していたが、実現には至らなかった。

特徴

 会話及び簡単な読み書きが中心になっているが、時折ITを用いた日本文化の紹介も行われており、日本文化全般に親しむことを目的とするコースが多い。全体として、初級レベルのコースが中心となっている。

最新動向

 特になし。

教育段階別の状況

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 日・カタール外交関係樹立40周年(2012年)の節目に、当地にて第二選択外国語としての日本語教育の試験的導入が開始され、ターリク・ビン・ズィヤード男子高校で長きにわたり日本語教育が行われていた。しかし、近年の教育省による全公立学校の授業カリキュラム統一を意図した制度改革を背景に、教育省から選択外国語科目数削減要請が発出されたことに伴って、同校での日本語教育は2020年9月に廃止された。

高等教育

 カタール大学で2014年から選択科目として日本語講座が開設されている。

学校教育以外

 民間語学学校が一校(ベルリッツ)存在する。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 6-3-3制。  

教育行政

 Ministry of Education and Higher Education(教育省)が管轄。

言語事情

 アラビア語が公用語だが、人口の9割が外国人ということもあり英語が広く通用する。

外国語教育

 英語が主流。課外授業としてフランス語などの教育が行われている。

外国語の中での日本語の人気

 学習者の多くは、日本のアニメ、ゲームなどポップカルチャーの影響を受けていて、最近では旅行先として日本に興味をもち、趣味として日本語を学習している人が増加傾向にある。

大学入試での日本語の扱い

 大学入試で日本語は扱われていない。

学習環境

教材

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。(2020年9月まで日本語教育を行っていた前述のターリク・ビン・ズィヤード男子高校では、講師自らが教材を用意したり、日本からの教材を利用したりしていた。)

高等教育

学校教育以外

 『みんなの日本語』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)を基本とし、講師が自ら作成。その他、民間語学学校(ベルリッツ)が独自に利用している教材がある。

IT・視聴覚機材

 学校やコースには参加せずに、携帯のアプリやユーチューブなどインターネットを活用して独自に勉強している人が多い。

教師

資格要件

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

高等教育

 カタール大学及びハマド・ビン・ハリーファ大学で教える教師は、最低でも修士号を保持していることが必須。

学校教育以外

 民間語学学校(ベルリッツ)では日本人の方が日本語を教えている。

日本語教師養成機関(プログラム)

 日本語教師養成を行っている機関、プログラムは確認されていない。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 2023年1月現在、日本人日本語教師はカタール大学に1名、民間語学学校(ベルリッツ)に1名それぞれ在籍している。また、個人で日本語を自宅などで教えている方も数名いる。私立公立問わず日本人講師のニーズは常に高く、需要は大変大きい。

教師研修

 現職の日本語教師対象の研修は確認されていない。

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 「カタール日本語教師会(JALTAQ)」(2010年設立)
 日本語教師のみならず、日本語教育に関心がある在留邦人や、日本や日本文化を発信していくことに関心のあるメンバーを中心に活動中。また、カタールでは日本語教師の不足も課題となっているため、日本語教育への関心がある方を対象とした勉強会の開催や情報交換を行っている。2023年1月現在の会員数は3名(この他賛助会員が2名)。
 2013年3月以降、カタール大学に於いて在カタール大使館とカタール日本語教師会が共催で日本語スピーチコンテストを年一回開催している(2022年は在カタール大使館で実施)。
 その他、カタール日本語教師会は日本語で会話を行う「話そう会」を不定期に実施していたが、カタール国内での新型コロナウイルスの蔓延を受け、全イベントが開催中止又は延期となっていた。

最新動向

2023年1月現在、上記「話そう会」の再開の目処は立っていない。

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣

 なし

国際協力機構(JICA)からの派遣

 なし

その他からの派遣

 その他からの派遣は確認されていない。

シラバス・ガイドライン

統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムは確認されていない。

評価・試験

 2018年に湾岸地域で初となる日本語能力試験が当地で実施された(2023年1月現在、カタール及びサウジアラビアで実施)。それ以降、当地での日本語能力試験は毎年カタール大学で実施されている(2022年は当地でFIFAワールドカップが開催されたため中止)。

日本語教育略史

2006年 カタール教育省附属語学教育センター成人向け講座開始、アル・バヤーン女子学校にて日本語講座開始
2009年 アル・バヤーン女子学校日本語コース中止
2010年7月 カタール教育省附属語学教育センター閉校
2010年9月 カタール安全保障国際アカデミー(内務省付属)「Qatar International Academy for Security Studies;QIASS」開校
2011年3月 Qatar Eastern Language Center開校
2012年9月 ターリク・ビン・ズィヤード男子高校にて日本語学習が開始
2013年6月 Qatar Eastern Language Center閉校
2014年9月 カタール大学にて日本語講座が開設
2016年12月 カタール安全保障国際アカデミー(内務省付属)「Qatar International Academy for Security Studies;QIASS」閉校
2017年 ハングル日本語センター開校
2017年10月 カタール大学にて社会人向けの夜間日本語講座が開講
2018年12月 カタール大学にて湾岸初のJLPT開催
2019年8月 ハマド・ビン・ハリーファ大学にて社会人向けの夜間日本語講座が開講
2020年6月 ターリク・ビン・ズィヤード男子高校にて副専攻だった日本語学習が教育省の指示で閉講
2021年 ハングル日本語センター閉校
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