ロシア(2022年度)
日本語教育 国・地域別情報
2021年度日本語教育機関調査結果
機関数 | 教師数 | 学習者数※ |
---|---|---|
151 | 666 | 12,426 |
教育機関の種別 | 人数 | 割合 |
---|---|---|
初等教育 | 964 | 7.8% |
中等教育 | 3,197 | 25.7% |
高等教育 | 4,129 | 33.2% |
学校教育以外 | 4,136 | 33.3% |
合計 | 12,426 | 100% |
(注) 2021年度日本語教育機関調査は、2021年9月~2022年6月に国際交流基金(JF)が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。
日本語教育の実施状況
全体的状況
沿革
ロシアにおける日本語教育の起源は、18世紀初期の皇帝ピョートル一世統治下に遡る。1705年、ピョートル一世の命により、サンクトペテルブルクで漂流民のデンベイ(伝兵衛)によって日本語教育が開始された。同じく18世紀に設置されたペテルブルク科学アカデミーには、1736年に日本語学校が開設された。日本人のゴンザとソーザが教師に任命され、ゴンザはアンドレイ・ボグダーノフと共同で、露日辞典など各種の日本語学習書を編纂した。1754年に、日本語学校はシベリアのイルクーツクに移転された(1816年に閉鎖)。イルクーツクでは、漂流民の三之助が日本語教師を務めていたが、後にその子息のアンドレイ・タタリノフが「露日辞典レキシコン」を作成した。1870年、サンクトペテルブルク大学の中国・蒙古学科にて日本語教育課程が始まり、橘耕斎(増田申斎、ロシア名ウラジーミル・ヤマートフ)が最初の日本語講師となった。橘耕斎は、ヨシフ・ゴシケーヴィッチ(ロシア帝国初代日本駐在領事)による世界初の和露辞典「和魯通信比考」(1857)の編纂にも協力した。また、1899年には、ウラジオストクで東洋大学(現在の極東連邦大学)が創立され、日本語教育が開始された。モスクワでは、1930年代に、モスクワ東洋学院で日本語教育が始まった。1956年に設立された東洋語大学(現在のモスクワ大学附属アジア・アフリカ諸国大学)では、1962年に日本語学科が設立され、近隣諸国で教鞭をとる数多くの日本語教育者を養成してきた。また、ソ連邦崩壊後の1990年代後半にはサンクトペテルブルグ、モスクワ、極東以外の地域の大学においても日本語講座が開設され、さらには高等教育だけでなく初・中等教育機関における日本語教育や一般向けの日本語教育が開始されるなど、多様化が始まった。
背景
高等教育での日本語学習動機は以前は経済的な関心が大きかったが、近年は文化への関心の高さが動機となっている。2021年度日本語教育機関調査の結果によると、学習目的で最も多かった回答は「アニメ・マンガ・J-POP・ファッションなどの日本文化への関心」であり、次いで「歴史・文学・芸術などの日本の文化への関心」となっている。
特徴
複数の大都市においては、高等教育機関を中心として複数の日本語教育機関が存在し、日本語教育における拠点的な役割を果たしている。このような都市として、ヨーロッパロシア部ではモスクワ、サンクトペテルブルク、ウラルではエカテリンブルク、シベリアではノボシビルスク、イルクーツク、極東ではウラジオストク、ハバロフスクなどが挙げられる。
他の大規模・中規模の都市においては、日本との友好団体が実施する日本語講座が、一般向けのほか、年少者向けにも開講されており、周辺に日本語教育を実施している大学がない場合などは、その地域の日本語教育の中心的存在となっていることもある。
モスクワや主要な地方都市では、 政治的な背景や文化的な流行などにより他言語の学習者が相対的に増える一方で、日本文化に対する関心は依然として強く、主な日本語学習動機になっている。世代別では、若年層はアニメ・ポップカルチャーへの関心が高く、高等教育での日本語専攻を志望する動機につながり、大学入学後には、伝統文化、文学、映画などに関心を拡げる傾向が見受けられるとの報告がある。
最新動向
初中等教育においては、日本語が統一国家試験科目ではないこととも関係する履修校の限定性や高学年までの継続性、ロシアの外国語教育スタンダードに準拠した教科書が存在しないといった課題が引き続き存在する(中国語は2019年に統一国家試験科目として採用)。
2018年の日本語教育機関調査では、機関数、教師数、学習者数とも前回調査から約30%増となったが、2021年の日本語教育機関調査では、極東連邦管区を中心に初等教育機関が減少し、中央連邦管区において中等教育機関が減少した。初中等教育機関における日本語教育は、日本語教師の熱意によって支えられていることが実情である。そのため、コロナ禍などで日本語教師が離職すると、日本語教育が廃止されるケースが報告されている。
高等教育機関数にはあまり変化はなく、「ロシアにおける日本年」(2017-2019)及び「日露地域・姉妹都市交流年」(2020-2022)などの影響もあり、日本文化への関心が高まったことから、高等教育機関における学習者は増加している。
コロナ禍でオンライン学習が急速に発展し、教育機関に所属せずに個人で日本語を教えるケースがあり、日本語教育機関調査では把握できない日本語学習者が一定数存在する。
全ロシア国立外国文献図書館「JF」文化事業部(モスクワ日本文化センター)が主催するJF日本語教育スタンダードに基づく日本語講座(JF講座)は、コロナ禍でもオンラインで継続され、2022年秋現在6クラス、約120名の受講生が学んでおり、日本センター、語学学校などとならぶ、モスクワにおける学校教育以外の日本語教育の中心的存在となっている。
教育段階別の状況
初等教育
(下記【中等教育】参照のこと)
中等教育
日本語教育の位置づけは多くの場合選択科目であるが、外国語教育重点校に選択必修科目として採用されていることもある。第二外国語の選択肢の中から日本語を選ぶのは、日本の産業・技術などに関心を持つ保護者の場合も、アニメや武道に代表される日本文化を好む生徒自身の場合もあり、さまざまである。
第51番日本語専門学校(ウラジオストク)、第83番日本語・英語専門学校「バラの学校」(サンクトペテルブルク)など、日本語教育の特別カリキュラムを有する初等・中等教育機関も存在する。第2ギムナジウム(ペルミ)では2~11年生の全生徒が日本語、中国語又は韓国語を選択することになっており、熱心に日本語が学ばれている。そのような学校では、高学年(日本の高校に相当)の時点で日本語能力試験N4程度の日本語能力を有する生徒も見られる。
2016年、モスクワ、サンクトペテルブルグ、ノボシビルスク、ウラジオストクといった初中等教育が比較的盛んな地域の学校教師が協力し、現在のロシアの教育スタンダードに適合した教材を作成しようという動きが起こった。さらに、2020年には在ロシア日本国大使館・JF・モスクワ市の間で初中等教育向けの教材制作が協議され、この結果を受けて、JFがモスクワ市立教育大学に教材開発を担う日本語専門家の派遣を決定した。
高等教育
日本語学習の動機は、研究目的、純粋な日本文化などへの興味、就職など実利的な目的に大きく分けることができる。卒業後は日本への留学もしくは日本語を生かせる就職を希望する学生が多いが、日本関連企業や日本語教育機関への採用数は限られている。高等教育機関における日本語学習者は、おおむね高い日本語運用能力を有する。
日本の大学との協力関係に基づいた交換留学も見受けられるが、日本側の予算によるものや継続性の低いものも含まれる。ロシア全国の15大学で日露青年交流センター派遣教師が活躍している。
学校教育以外
ロシアの市場経済化支援を当初の目的として日本政府が設立した「日本センター」が、6都市(モスクワ、サンクトペテルブルク、ニジニ・ノヴゴロド、ウラジオストク、ハバロフスク、ユジノサハリンスク)で社会人対象の日本語教育を行っている。2009年に全ロシア国立外国文献図書館「JF」文化事業部(モスクワ日本文化センター)で開講した一般向け日本語講座は、2011年9月、モスクワ市立教育大学との共催のもと、JF日本語教育スタンダードに基づく日本語講座に移行し、現在、全ロシア国立外国文献図書館「JF」文化事業部(モスクワ日本文化センター)主催事業として実施されている。
その他、大学、各地日露友好団体、民間の語学学校など多くの機関で、学生、社会人などを対象とした日本語講座が開講されている。
教育制度と外国語教育
教育制度
教育制度
4-5-2制。
ロシアの初等・中等教育は11年制の学校(シュコーラ)で行われる。1年生への入学は6歳半から8歳までである。シュコーラには普通学校と専門学校(特定の科目の教育に力を入れた学校)がある。11学年のうち、1~4学年が初等教育、5~11学年が中等教育にあたる。1~9学年は義務教育である。9学年終了時に基礎国家試験(OGE)を受験する。必須2科目(ロシア語、数学)に加え選択2科目を受験する。選択科目の一つである外国語は、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語を選択できる。この試験は10、11学年への入学試験の役割も兼ねている。
10、11学年へは高等教育を希望する者が進学するほか、並行して専門教育学校も存在する。11学年終了時に卒業試験に該当する統一国家試験(EGE)を受験する。この試験は高等教育機関への入学試験の役割も兼ねている。卒業試験としては、2科目(ロシア語、数学)が必須である。進学する場合は必須2科目に加え選択科目を受験する。選択科目は複数受験することができる。選択科目の一つである外国語には、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語の他に、中国語も選択できる。
飛び級は可能。落第は、4学年(初等教育最終学年)、9学年(義務教育最終学年)、11学年(中等教育最終学年)修了時にありうる。家庭教育(1-9学年)及び自主教育(10-11学年)として、家庭学習が認められており、通学する必要はなく、それぞれ基礎国家試験及び統一国家試験を受験することで、卒業資格を得ることができる。
高等教育は、11学年卒業後の大学(かつて5年制の専門学士だったが、移行期間を経て現在は4年制学士が主流)で学士号を取得する。
教育行政
初中等教育を啓発省が、高等教育を科学・高等教育省が管轄する。
言語事情
国語はロシア語。ロシアは他民族国家であり、少数民族含め約200もの民族が居住しているため、民族語も多く、それぞれの地方や自治区・共和国内で、ロシア語と共に民族語も国語として併用されているところがある。現在、国語(National language)とされている民族語は37言語、また、公用語(Official language)とされている民族語は15言語ある。
移民に関しては、一時居住許可(3年)、居住許可(5年あるいは無期限)、国籍取得の際に、ロシア語の試験が義務付けられている。
外国語教育
初等教育
(下記【中等教育】参照のこと)
中等教育
一般学校においては第2学年から第一外国語の授業が始められている。主として、英語・ドイツ語・フランス語・スペイン語、中国語などから選択できる第一外国語の学習は必須である。
第二外国語は第5学年から教育スタンダード上では必修としてドイツ語、フランス語、スペイン語、中国語などが正規の第二外国語科目として認定されていたが、2022年8月に廃止された。但し、すでに第二外国語を学んでいた生徒たちは、引き続き学び続けている。
選択科目としての外国語授業は、評価や履修記録が成績表に残されないこともあり、課外活動に相当する場合もある。
高等教育
専攻に関わらず、第一外国語の履修が義務付けられており、言語学、文学、翻訳・通訳論、国際関係論、世界経済などの専攻においては第二外国語、ときには第三外国語の履修が義務付けられる場合もある。
外国語の中での日本語の人気
第一外国語として教授される英語・ドイツ語・フランス語・スペイン語などヨーロッパ言語が人気であるが、その他の言語としては日本語の人気は比較的高い。2019年に統一国家試験に導入された中国語及び若者の間で人気が高まる韓国語の学習熱によって相対的に日本語の人気が低くなる傾向も見られるが、日本語学習者数は増加しており、日本語学習への関心は着実に拡大している。
大学入試での日本語の扱い
大学入試で日本語は扱われていない。一方、大学が実施主体となって潜在的入学者である学校生徒の学習知識を測る試み(「オリンピアーダ」)に日本語が採用される例はあり、特定の大学においては入学試験の際追加的な評価対象となっている。2019年より統一国家試験で中国語が開始されたが、2022年の受験者数は全ロシアで480人とまだ少ない。
学習環境
教材
初等教育
(下記【中等教育】参照のこと)
中等教育
- 『子どものための日本語』M.R.ゴロミドワ著
- 『初心者の為の日本語』1、2 L.T.ネチャエワ著(モスクワ、ブックビッツァ出版)
- 『日本語初歩』国際交流基金日本語国際センター(凡人社)
- 『みんなの日本語』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)
- 『ひろこさんのたのしいにほんご』根本牧ほか(凡人社)
- 『書く、読む、話す』シェフテレービッチN.S.、ストルーゴワE.V.
- 『日本語入門 はじめのいっぽ』(FonetiXpress)
- 『5年生のための日本語』M・Bヤドリシニコワ著(モスクワオープン教育大学)
- 『エリンが挑戦!にほんごできます』国際交流基金(凡人社)
- 『げんき』(ジャパンタイムズ)
- 『できる日本語』(アルク)
高等教育
- 『日本語教科書』全4巻、I.V.ゴロヴニン監修、改訂第3版(「現代語」出版社)
- 『初心者の為の日本語』1、2 L.T.ネチャエワ(モスクワ、ブックビッツァ出版)
- 『中級における和露・露和通訳』M.A.ミーシナ(モスクワ、トリヴォーラ出版)
- 『日本語漢字入門』国際交流基金日本語国際センター(凡人社)
- 『日本語第一歩』富田隆行(凡人社)
- 『新日本語の基礎』海外技術者研修協会(スリーエーネットワーク)
- 『JAPANESE FOR BIGINNERS』吉田弥寿夫(学習研究社)
- 『よく使われる新聞の漢字と熟語』豊田豊子(凡人社)
- 『ペアで覚えるいろいろな言葉』秋元美晴ほか(武蔵野書院)
- 『日本語作文Ⅰ』C&P日本語教育(専門教育出版)
- 『書く、読む、話す』シェフテレービッチN.S.、ストルーゴワ E.V.
- 『日露漢字辞典』N.ネヴェーロフ、R.ノズドレヴァ、T.ロザノヴァ、T.タラソヴァ
- 『日本語 通訳』S.ブイコヴァ(モスクワ、ムラヴェイ・ガイド出版)
- 『Gairaigo - Yaponskaya transkriptsia inostrannikh slov “Gairaigo - Japanese Transcription foreign words”』E.V.Maevskij, N.G.Ruisina(Muravei-Gaid)
- 『日本語Graphic Stylistics “Graphicheskaya stilistika yaponskavo yazika” (Japanese Graphic Stylistics)』E.V.Maevskij(Muravei-Gaid)
- 『BASIC KANJI BOOK Vol.1、2』加納千恵子ほか(凡人社)
- 『INTERMEDIATE KANJI BOOK Vol.1,2』加納千恵子ほか(凡人社)
- 『新文化初級日本語ⅠⅡ』文化外国語専門学校(文化外国語専門学校)
- 『テーマ別 中級から学ぶ日本語』松田浩志(研究社)
- 『テーマ別 中級から学ぶ日本語 ワークブック』松田浩志ほか(研究社)
- 『テーマ別 上級で学ぶ日本語』松田 浩志(研究社)
- 『文化中級日本語』文化外国語専門学校(文化外国語専門学校)
- 『毎日の聞き取り50日上下』太田淑子ほか(凡人社)
- 『初級日本語げんき』坂野永理ほか(ジャパンタイムズ)
- 『まるごと 日本のことばと文化』(三修社)
- 『できる日本語』(アルク)
- 『大学二年生用の日本語教科書第二版』ストリジャック・U.P.、ロバチョーフ・L.A.、マエフスキー・E.V.、リャブキン・A.G.、ヤヌシェーフスキー・V.A.
学校教育以外
一般の学校に関しては、教科書使用の状況は教師の裁量により様々である。学校の方針により日本で発行された教科書のみを使うところも見られる。
- 『みんなの日本語』(前出)
- 『初心者のための日本語』L.T.ネチャエワ著
- 『書く、読む、話す』シェフテレービッチN.S.、ストルーゴワ E.V.
- 『子どものための日本語』M.R.ゴロミドワ著
- 『まるごと 日本のことばと文化』(三修社)
- 『いろどり 生活の日本語』国際交流基金(電子教材)
IT・視聴覚機材
伝統的に行われてきた個人授業、家庭教師の形態は日本語教育でも存在し、インターネットを通じた日本語授業も確認されている。
教師
資格要件
初等教育
(下記【中等教育】参照のこと)
中等教育
日本語専攻で高等教育機関を卒業・修了(学士・修士号)している例が多い。
高等教育
日本語専攻で高等教育機関を卒業・修了(学士・修士号)していることが通例となっていた。大学の日本語専門課程の卒業生がそのまま大学に残って日本語教師となる例も多く見られていたが、現在は修士号が要件となることが多い。
ただし、2000年代に行われた学制改革によって、5年制の専門学士+3年制の博士候補(大学院)から4年制の学士+2年制の修士+3年制の博士課程へと変更された機関が多く、資格に関し一概に述べることは難しい。
学校教育以外
日本語専攻で高等教育機関を卒業・修了(学士・修士号)した者の他、語学学校で日本語を学び、教師になる場合もある。
日本語教師養成機関(プログラム)
リャザン国立大学(卒業証書に日本語教育と記載される)
モスクワ市立教育大学(卒業証書に極東言語教師と記載される)
ゲルツェン記念ロシア国立教育大学付属外国語大学(卒業証書に外国語・外国文化教育理論・教授法専攻言語学者・教師と記載される)
日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割
現地教育機関と直接契約を結ぶ例、政府機関や民間国際交流団体などのプログラムによって派遣されている例が、大都市・地方都市を問わず存在する。教育機関の財政状況は概して厳しい。
教師研修
- 《国内研修》
- モスクワで毎年行われる日本語教師会総会、日本語教育学国際シンポジウムにおいて、ロシア及び近隣諸国の日本語教師による、日本語教育関連研究の成果発表が行われている。
全ロシア国立外国文献図書館「JF」文化事業部(モスクワ日本文化センター)ではオンラインでも日本語教授法講座(2ヶ月)、「日本語教師の日」(2020年10月開始。現在毎月2回実施されている)など、ロシアの広域性や新型コロナウイルス対策に伴う活動が行われている。 - 《訪日研修》
- JFの海外日本語教師研修など
現職教師研修プログラム(一覧)
- オンラインまるごとセミナー
- 全ロシア国立外国文献図書館「JF」文化事業部(モスクワ日本文化センター)が主催し、年に数回実施。
- モスクワ大学付属アジア・アフリカ諸国大学主催日本語教師能力向上プログラム
- 毎年10月の日本語教師会総会の開催に合わせて実施される「高等教育機関における日本語:日本語教育の差し迫った問題」の開催に合わせて実施。
- モスクワ市立教育大学主催日本語教授法短期コース(3日間)
- 2019年より毎年1回実施されている日本語教育学国際シンポジウム「教育現場における日本語」の関連イベントとして、日本語教授法短期コース(3日間)を実施。
- ウラル地方日本語教師・通訳協会主催日本語教授法セミナー
- エカテリンブルクで実施。コロナ禍で中断していたが、2023年に再開予定。
教師会
日本語教育関係のネットワークの状況
ロシアCIS日本語教師会は、1991年にモスクワ国立大学附属アジア・アフリカ諸国大学日本語学科の学科長ゴロウニン教授(当時)を会長として発足した。活動状況としては、例年秋にモスクワ国際学生日本語弁論大会、日本語教師会総会、ロシア子ども日本語弁論大会(子ども日本語祭)をJF、在ロシア日本国大使館などと共催で実施している。しかしながら、子ども日本語祭についてはコロナ禍以降実施されておらず、2022年時点では再開の見通しは立っていない。
サンクトペテルブルグにおいても、日本人日本語教師を核とした教師のネットワーク「日本語教育を考える会」が勉強会や日本語教育セミナー企画などを行っていたが、2022年時点では活動を休止している。
沿ヴォルガ地域においては、ニジニ・ノヴゴロドで2007年4月に沿ヴォルガ地方日本語教師会が発足し、第1回総会が開催された。沿ヴォルガ地域日本語弁論大会にはニジニ・ノヴゴロドに加え、カザン、オレンブルグ、アストラハンなど近隣都市からも参加があり、弁論大会と同時期に教師向けのセミナーも実施されるようになった。同地域で日本語教育関連行事を実施している都市としては他にカザン、サマーラなどがあり、カザンでは、カザン連邦大学を中心に教師セミナー、サマーラでは日本語教師会議が開催されていたが、コロナ禍以後は実施が困難となるケースが報告されている。
エカテリンブルグでは2008年に日本語教師会が発足し、教師向け勉強会などを行っていたが、2014年にはチェリャビンスクやペルミの日本語、日本語教育関係者も含む「ウラル地域日本語(通訳翻訳)教師会」が発足した。コロナ禍の影響で、従来実施していたエカテリンブルグ市における日本語教授法セミナーや日本語・日本文化教師フォーラムなどが実施困難となった時期があったが、今後再開予定である。
またウラル連邦大学を中心にウラル地域の弁論大会も実施されていた。
2000年、西シベリア地域の中心都市であるノボシビルスクにシベリア日本語教師会が発足し、拠点をノボシビルスク市立「シベリア・北海道文化センター」においた。2006年にはトムスク、クラスノヤルスクを含む「シベリア日本語教育協会」に発展し、活動を継続している。
極東地域では2005年よりサハリンに日本語教師会が存在する。ハバロフスクとウラジオストクでもかつては日本人中心の教師会が存在していたが長く実態がなかった。それに代わり、2018年、ウラジオストクで日本人教師の声かけで「ウラジオストク日本語教師サークル」が設立され、2019年に「ウラジオストク日本語教師会」へと発展した。ハバロフスクでは、2020年、太平洋国立大学を中心に「ハバロフスク日本語教師会」が発足した。
最新動向
ロシアCIS日本語教師会は年1・2回(春・秋)の会議・シンポジウムを継続的に実施している。この会議で行われる実践研究発表は伝統的に高等教育機関における日本語教育が中心であったが、参加者の多様化傾向がみられる。
日本語教師派遣情報
国際交流基金からの派遣(2023年3月現在)
日本語上級専門家
- モスクワ市立教育大学 1名
- モスクワ国立大学 1名
日本語専門家
- モスクワ市立教育大学 1名
- 極東連邦大学 1名
※いずれも政情不安により日本からオンライン支援
国際協力機構(JICA)からの派遣
なし
その他からの派遣
日露青年交流センター日本語教師派遣事業 (2021年度第23回)
- ウラル連邦大学(エカテリンブルク) 1名
- リャザン国立大学 1名
- クバン国立大学(クラスノダール) 1名
- カザン連邦大学 1名
- ノボシビルスク国立工科大学 1名
- ノボシビルスク国立大学 1名
- アストラハン国立大学 1名
- サンクトペテルブルク国立文化大学 1名
- ロシアキリスト教人文アカデミー(サンクトペテルブルク) 1名
- サンクトペテルブルク国立経済大学 1名
- ハバロフスク国立経済法律大学 1名
- 太平洋国立大学(ハバロフスク) 1名
- 北東連邦大学(ヤクーツク) 1名
- ブリャート国立大学(ウラン・ウデ)1名
- 極東連邦大学(ウラジオストク) 1名
シラバス・ガイドライン
ロシアでは日本語教育は東洋学教育に含まれており、教育省の指示に基づきモスクワ国立大学附属アジア・アフリカ諸国大学を中心とした高等教育機関が東洋学教育の全国統一基準を作成している。大学の東洋学専攻における日本語教育の枠組み(時間数など)はそれに基づいているが、シラバスの内容は各大学に任されているため、日本語教育としての統一シラバスは存在していない。初中等教育に関しては、教育省作成の「外国語学習に関するロシア連邦教育スタンダード」というものがあり、日本語も専攻科目、第2選択外国語としてはそれに準ずることになるが、日本語科目としての統一シラバスは存在していない。
評価・試験
日本語能力試験は日本語学習の到達点を測る基準として一定の評価を受けており、受験者数は毎年増加していたが、コロナ禍の影響などにより試験が中止となったため、受験者数は減少している。
試験は次の13か所で実施されている。モスクワ(1998年開始)、ウラジオストク(2001年開始)、ハバロフスク、ユジノサハリンスク、ノボシビルスク(それぞれ2006年開始)、イルクーツク(2007年開始)、サンクトペテルブルク(2008年開始)、ペルミ(2012年開始)、アストラハン(2014年開始)、ヤクーツク(2018年開始)、カザン(2019年開始)、ペトロパブロフスク・カムチャツキー(2020年開始)、エカテリンブルク(2021年開始)。モスクワ、ウラジオストク、サンクトペテルブルクは年2回の実施である。
日本語教育略史
1705年 | サンクトペテルブルク、イルクーツクで日本語教育開始 |
---|---|
1736年 | ペテルブルク科学アカデミー日本語学校開設 |
1754年 | ペテルブルク科学アカデミー日本語学校がイルクーツクに移転(1816年に閉鎖) |
1870年 | サンクトペテルブルク大学中国・蒙古学科にて日本語教育開始 |
1898年 | サンクトペテルブルク国立大学東洋学部に日本語学科設立 |
1899年 | ウラジオストクで東洋大学(現極東連邦大学)設立。日本語教育開始 |
1930年代 | モスクワ東洋学院で日本語教育開始 |
1956年 | モスクワ東洋語大学(現モスクワ大学附属アジア・アフリカ諸国大学)設立 |
1962年 | モスクワ大学附属アジア・アフリカ諸国大学に日本語学科設立 |
1991年 | ロシアCIS日本語教師会設立 |
1998年 | モスクワで日本語能力試験開始 |
2000年 | ノボシビルスク日本語教師会設立 |
2001年 | ウラジオストクで日本語能力試験開始 |
2005年 | サハリン日本語教師会設立 |
2006年 | ハバロフスク、ユジノサハリンスク、ノボシビルスクで日本語能力試験開始 ノボシビルスク日本語教師会が「シベリア日本語教育協会」を設立 |
2007年 | イルクーツクで日本語能力試験開始 沿ヴォルガ地方日本語教師会設立 |
2008年 | モスクワ市の初等・中等教育機関への大規模な日本語教育導入、モスクワオープン教育大学で現職日本語教員の研修を目的とした2年間(144時間)のコース開講(現在は閉講) エカテリンブルグで日本語教師会設立 サンクトペテルブルグで日本語能力試験開始 |
2009年 | シベリア日本語教育シンポジウム開始 |
2011年 | モスクワ市立教育大学でJF日本語教育スタンダードに基づく日本語講座(JF講座)を開設 |
2012年 | ペルミで日本語能力試験開始 |
2014年 | アストラハンで日本語能力試験開始 ウラル地方日本語教師・通訳協会設立 |
2018年 | ヤクーツクで日本語能力試験開始 カムチャッカ地方通訳・翻訳者・外国語教師協会設立 |
2019年 | カザンで日本語能力試験開始 ウラジオストク日本語教師会設立 |
2020年 | ペトロパブロフスク・カムチャツキーで日本語能力試験開始 ハバロフスク日本語教師会設立 |
2021年 | エカテリンブルクで日本語能力試験開始 |