米国若手日本語教員(J-LEAP) 10期生 総合報告書
アメリカで日本語教育に2年間携わってみて

カストロ・バレー・ハイ・スクール
小川 由梨香

アシスタントティーチャーとして担当した業務と経験できたこと

カリフォルニア州のカストロバレー高校で日本語のアシスタントティーチャーをして2年が経ちました。クラス内での主な役割は、生徒が安心できる環境を作ることでした。コロナ後、学校で特に問題となっていたのが生徒のコミュニケーション能力の低下と精神状態の不安定さでした。特に2年目がとてもひどかったです。例えば、自分の感情を他人にどう表していいいか分からず授業中に泣き出し教室から逃げ出したり、会話の方法が分からず授業中に誰とも話さなかったりする生徒が増えました。リードティーチャーと話し合い、休み時間やお昼ご飯の時間に教室を開け、生徒たちがコミュニケーションを取れる空間を作ったり、授業中にマインドフルネスをする時間を設けたりしました。その結果、生徒同士の会話が発展し以前よりも生徒の笑顔が増え、昼休みも生徒で溢れかえるような安心できる場所を作ることができました。また、人種のるつぼと呼ばれるカリフォルニア州の高校で働き、さまざまな人と出会いたくさんの価値観を知ることができたことは最も有益な経験となりました。この経験を通して、今後も自身の固定観念にとらわれず、柔軟な考えを持ちながら、自分自身を成長させ続けていきたいです。

言語を学ぶ楽しさを再認識できたこと

カストロバレー高校では授業以外にも、遠足に行ったり、日本語と中国語の顧問と学校で行われたアジアフェスティバルの手伝いをしたりしました。日本語の授業を取っていない生徒とも交流できて楽しかったです。特に学校で協力した活動で印象深かったことは、他の言語のクラスとクリスマスの時期に行ったキャロリング(聖歌を合唱しクリスマスを祝う活動)です。派遣校には日本語以外にフランス語、スペイン語、中国語、ドイツ語、手話のクラスがありました。普段は授業で生徒同士が学習している言語を通して交流することはほとんどありませんでした。そこで、それぞれの言語を使ってクリスマスの時期にキャロリングを他の言語のクラスと披露し合い、異文化理解を深めることになりました。日本語のクラスではクリスマスソングがなかったので、代わりにお正月の歌を披露しました。興味深かったことは、スペイン語のクラスでは情熱的なダンス、中国語のクラスでは中国の伝統的な楽器と共にキャロリングしていたことです。それらの経験から言語を学習するという事は、言葉を学ぶだけではなくそれぞれの文化の理解を深めているということだと再度実感し、改めて言語を学ぶことの楽しさを再認識することができました。

J-LEAPの活動を通して一番感動したこと

J-LEAPの活動を通して感動したことは、日本と米国の学校の架け橋になれたことです。2年目では日本で英語教師をしていた時に働いていた学校とGoogle MeetGoogle Classroomを使って異文化交流を行い、双方の生徒が言語学習に対するモチベーションを高め、互いの文化についての見識も深めることに力を注いできました。約1年間、日本の学校への学校訪問に向けて準備をしました。そして今年の夏、日本の学校にカストロバレー高校の生徒を15人連れて学校を訪問することが実現しました。カストロバレー高校の生徒は1週間日本の学校の生徒の家にホームステイをしました。海外に行くことが初めての生徒もいたのではじめはとても不安そうでした。しかし、ホストファミリーと過ごしたり、学校で日本の生徒と触れ合ったりすることで、日本についての見識を深めるだけでなく、精神的な成長を見ることができました。また、いつも反抗的な態度をとる生徒が、将来日本の大学に行ってもっと日本について学びたいと言ってくれたことは本当に感動しました。日本の生徒たちも一生懸命日本語を話してくれるカストロバレー高校の生徒の姿を見て、もっと英語の勉強を頑張りたいという思いが強まったようで、お互いが言語学習に対するモチベーションを高め合う様子が見られました。

今後、派遣される若手日本語教員に必要だと思うこと。今後、日本語教育にどのように携わっていくか。

このプログラムでの経験を通じて、今後、派遣される若手日本語教員に必要だと思うことは2点あります。1つ目は、柔軟性です。カリフォルニア州に派遣された当初はまだコロナ禍ということもあり、以前までの当たり前の生活が無くなり、全てのことが予定通り進みませんでした。それらの経験から、どんなことがあってもその時に自分にできる最善のことを行い、臨機応変に対応していく能力を養い、柔軟性を持ち続けることの大切さを学びました。2つ目は、ポジティブでいることです。上記で述べた通り、海外に住むということは本当に毎日冒険のようで、トライアンドエラーの繰り返しでした。落ち込むこともありましたが、マインドフルネスをしたり気分転換したりすることで自分の気持ちを安定させ、ポジティブでいることでとても素敵な経験をすることができました。
私自身は、今後、日本語教師として活動するか、日本の学校と海外の学校をつなぐような仕事に携わるかなどをまだ決めていませんが、 何かしらの形で日本語教育に携わっていきたいです。

  • 派遣先での写真1
  • 派遣先での写真2
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