米国若手日本語教員(J-LEAP) 10期生 総合報告書
2年間で得た大事なもの

マディソン・カントリー・デー・スクール
森近 美菜

日々の小さな努力が大きなゴール達成のカギ

私がアシスタントティーチャー(以下「AT」という。)として日々行った主な業務は、リードティーチャー(以下「LT」という。)と共に高校生の日本語授業でチームティーチングを行い、レッスンプラン、ワークシート、試験などを作成することでした。2人の教師がいることで、当日生徒が提出した宿題や小テストを授業中にどちらかが添削し、授業内に生徒にわかりやすく的確なフィードバックを効率よく行うことができたと思います。
マディソン・カントリー・デー・スクール(以下「MCDS」という。)は、国際バカロレア(IB)の認定校であるため、IBプログラムの日本語試験の分析を通して派遣期間中にさまざまなテスト作成を行ったことは、特に大きな学びが得られた経験の一つとなりました。試験作成は、生徒の成績に繋がるとても重要な要素の一つとなりますので、あらゆる試験に関する本や過去問題集などを読んで研究し、IBが定めた評価基準(ルーブリック)や生徒のレベルに合わせて、生徒の理解度が把握できる試験の作成を心掛けました。
結果として、ゴールに繋がる活動やパフォーマンス評価のために必要な知識を効果的に日々の授業で取り入れることができるようになり、最終的にゴール到達に向けて授業でどんな活動をすべきか等、LTとの話し合いの中でアイディアが出しやすくなりました。ゴールに基づいたバックワードデザイン(到達目標から逆算した授業計画)を心掛けてレッスンを作成する重要性に気付くこともできました。

授業だけにとどまらずアクティブに!

MCDSでは、日本語のほかにスペイン語を外国語言語として選択することができます。そのスペイン語の先生方と共に、全校生徒、保護者、教師も参加できる「カルチャルポットラックパーティー」というイベントを企画、実施しました。
パンデミック後に学校内で開催する食べ物を扱う大きなイベントはこれが初めてとなり、外国語の先生方と共に企画する大きなイベントとしてもこれが初めての試みだったため、何度もミーティングの機会を重ね、念入りに準備を進めました。色々なことに注意を払う必要があり、準備期間はとても大変でしたが、当日は予想をはるかに超える数の生徒とご両親も一緒に参加してくださいました。私は日本の代表として、日本のゲームや日本料理を準備しました。MCDSは教師も生徒も国際色豊かですので、色々な興味深い食べ物が並び、驚くほどさまざまな国の文化を共有しあうことができました。また参加者の皆さんも、他の国の料理や遊びなどを通して学校内の多様な人々とコミュニケーションを取り、色々なバックグラウンドを持つ人たちの相互理解を深めるきっかけになったのではないかと思います。

人とのつながりが教えてくれたこと

私の派遣校は幼稚園児から12年生までが通う小規模のプライベートスクールであったため、担当していた高校のクラス以外の幼稚園、小学校、中学校の教師の方々に日本文化や日本語の紹介について色々な企画を提案し、協力を得て日本文化の授業を実施する機会を多く頂くことができました。日本に関心のある生徒は多く、これらの機会を通して学校内の全生徒に日本のことをさらに知ってもらうことができ、異文化理解に繋がるきっかけを作ることができたのではないかと思います。
なかでも、最も印象的だったのは、私の活動を見てくださっていた校長先生からの提案で、定期的に中学生の選択授業として日本語・文化クラブを開始できるようになったことです。週に1、2回生徒の興味に合わせて日本語と日本文化を教えました。毎回授業プランを考え、一人で授業を担当するようになりました。例えば、日本文化の背景を教えながら工作をしたり、生徒の興味に合わせて楽しい日本のゲームを提案したり、体験型の授業が行えるよう心掛けました。その成果もあり、新学期から日本語を受講する生徒が例年より2~3倍に増えたとの報告をLTから受けています。
授業プランを全て自分で考える経験は、毎回の責任の重さもあり、一人でクラスコントロールをするのも大変でしたが、その一つ一つが毎回勉強になり、日本文化を紹介する自分の中の引き出しがさらに増えました。

挑戦を恐れず、未来を切り開こう!

J-LEAPのプログラムを通してできることは、担当するクラスで教える活動だけではありません。アシスタントとしての業務に始まり、自分の行動次第で学校内の先生や他のクラスの生徒ともたくさんのつながりができます。それぞれの場面で多くの人と出会い、日本語や日本文化を伝えるチャンスをつかめることが、このプログラムの醍醐味でもあると思います。どんな小さなことでも、「やってみたいな」と思ったら、それを周囲に伝えることが第一歩だと思います。
J-LEAPでは、生活面でも、アカデミックな面においても、LTやホストファミリー、学校内だけにとどまらず、JFやローラシアンの皆さんから、さまざまなサポートを受けながら、経験値を増やしていくことができます。この2年間、お世話になった皆さんには感謝してもしきれません。与えられた環境のなかで自分のできることを探して挑戦していける貴重なプログラムですので、これからJ-LEAPの参加を考えている皆さんには、ぜひ挑戦して新たな自分を見つけてほしいと思います。
また、現在私は米国のテキサスで、オンラインで日本語を教えています。周りの地域で日本語プログラムの立ち上げや日本語教師の需要があれば、これからもチャレンジすることを恐れず、日本語教育に携わっていきたいと思っています。貴重な経験をさせていただき、ありがとうございました。

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