米国若手日本語教員(J-LEAP) 10期生 年間報告書
私の日本語教育アドベンチャー

マディソン・カントリー・デイ・スクール
森近 美菜

マディソンは、住みやすい街ベスト10に選ばれている学園都市!

ウィスコンシン州はアメリカ中西部に位置し、五大湖のレイク・ミシガンやレイク・スーペリアに挟まれた自然豊かな大変美しいところです。冬は寒さが大変厳しいですが、有数の湖や川に恵まれているため、冬は凍った湖の上でスケートするなど、ウィンターアクティビティーも充実しています。また、夏は避暑地として思いっきりウォーターアクティビティーを満喫するなど、1年を通して多くの観光客が訪れます。

ウィスコンシンは酪農と乳製品(とりわけチーズ)でよく知られる州で、面積は169.639km2(日本の本州の約3/4)、人口は約570万人です。政治の中心は州都マディソン市、人口最大の都市はミルウォーキー市です。特に私の派遣地であるマディソンは、世界的にも名高いウィスコンシン大学のキャンパスの所在地としても有名です。この大学を中心に多くの教育機関が揃い、世界中から留学生が集まるため、教養と活気に満ちた学園都市でもあります。

また、外国語教育や異文化理解の重要さを示す教育機関が年々増えており、州内の公立学校では、7年生から外国語を導入する学校が過半数以上を占めており、学校によっては、幼稚園、また小学校から外国語教育を開始している学校もあります。主にスペイン語が外国語教育の中では最も多くの学校で取り入れられており、それに次いでフランス語、ドイツ語が人気で、アジアの言語としては、中国語のニーズが高まっています。一方日本語教育に関しては、全米で共通して言えますが、日本語教師不足が問題となっています。特に、現役の教師がリタイアした後の若手教師が不足しており、高校の日本語プログラムは現在教えている教師がリタイアしたら、それと同時にプログラムが終わってしまうという先細り状態であるのが現状です。

新たな学びが盛りだくさん

私の派遣校は、ワーナキ―というマディソンの中心地から15分ほどの場所にあります。教員は約100人、学生数はPre-Kから12年生までの約450人で、今年学校創立25周年目を迎えた国際バカロレア(IB)の認定を受けたプライベートスクールです。多くの生徒が高い学習意欲を示しており、主要科目の英語、数学などに加えて、言語や音楽などの選択科目のIBテストもあります。合格すると大学の単位として認められることが多いです。

また、今年から、IBプログラムだけではなく「IB中等教育プログラム、MYP (Middle Years Programme)」や「IB初等教育プログラム、PYP (Primary Years Programme)」を導入することになり、IBワールドスクールの質の高い、国際教育への取り組みという共通の哲学をと共に、教師と生徒が共に考え思考を深めていく授業体制がこの学校の特徴でもあります。IB試験には、外国語が必須のため、生徒は必ず外国語を学ばなければなりません。9年生からはスペイン語を継続するか、新しい言語として日本語を学ぶか選択することができますので、日本語を取る生徒はモチベーションが高く、日本語に興味のある生徒が多いです。昨年度のクラスの人数は12年生が14人、11年生が7人、10年生が9人、9年生が7人でした。学校の規模が小さいため、どのクラスも少人数ですので、大変アットホームな雰囲気の中で授業を進めています。

日本行きの切符を手にした生徒!

マディソン・カントリー・デイ・スクールの高校では、ジャパンボウル(日本語・日本文化の知識を競う大会)の開催日の半年前くらいから、準備を始めます。

今年は、ミネソタ州で行われたJ-Quiz2022で優勝したグループが、ジャパンボウルに参加できるということで、それも踏まえてジャパンボウルクラブの活動を行いました。日本の文化、歴史、オノマトペ、時事問題、日本語などをクイズ形式で答えていき、本番に備えて日本に関するさまざまな知識を身に付けました。

J-Quizは、チーム対抗で日本語と日本文化のクイズに答えていくミネソタ版高校生クイズ大会です。優勝者にはワシントンDCで行われるジャパンボウルに参加するための切符が贈呈されます。

今年度のJ-Quizではマディソン・カントリー・デイ・スクールから出場した生徒の中で、日本語レベル4のグループが優勝という素晴らしい成績を収めました。それらの生徒は、ジャパンボウル2022に参加することができ、夏にはその大会に参加した生徒たちが特別に招待され、日本での1週間研修旅行に参加できたことは大変嬉しかったです。
また来年も参加できるように、ジャパンボウルクラブの活動に力を入れていきたいと思っています。

どんな状況でも感謝を忘れず前向きに

着任してすぐの夏は、既にフリーマーケットや夏のイベントが開催されており、コロナ禍の状況にあっても、アメリカの文化が当初から体験できたことに不思議な感覚を覚えました。新型コロナウィルスに対する対策や求められる行動制限も、州やカウンティ―の取り決めにより異なっています。日本とアメリカの新型コロナ対策の大きな違いに初めは戸惑いを感じていました。

しかし、学校では万全な対策と共に、安心して対面授業が続けられたことは生徒にとっても私たち教師にとっても本当にありがたいことでした。また、パンデミックの中での生徒に対するメンタルケアの重要性についても学ぶことができた非常に密度の濃い1年になったと思います。

1年目を終えて、授業や年間を通しての流れが段々とわかってきましたが、今年からMYPがスタートするため、今まで以上にしっかりとしたバックワードデザイン(到達目標から逆算した授業計画)をもとにした授業のプラニングや授業試験作成などが必須になっていきます。2年目の目標は、この1年で、今後も使える便利な日本語教材をたくさん作成し、任期終了後も、長期的に支援できるものを残していけたらと思っています。そして、J-LEAPに参加しているこの機会を生かして、派遣校内の他の先生方の授業見学や、日本語を教えている他機関、J-LEAPで派遣されている同期の学校に授業見学に行かせていただき、教授方法を学ぶだけではなく、さまざまなことを吸収していける1年にしたいと思っています。

  • 派遣先での写真1
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