米国若手日本語教員(J-LEAP) 10期生 総合報告書
J-LEAPでの2年間の活動について

ハーディング・ハイ・スクール
伊藤 大祐

授業内外での業務と印象に残った活動

授業外、授業内においてアシスタントティーチャー(以下「AT」という)として携わった業務は以下のとおりです。
授業外では、ひらがなカルタ、グーグルスライドなどの教材作成、パケット(オリジナル教材)の印刷、生徒の座席表作成、日本の高校との交流プログラム「グローバルクラスメート)で使用したプラットフォーム(Canvas)の管理、テストの採点、LOOMなどを用いたパフォーマンステストのモデル動画の作成、放課後に行われた保護者とのカンファレンスへの立ち合いなどです。
授業中では、机間巡視、ウォームアップ、日本文化紹介、リードティーチャー(以下「LT」という。)との会話によるモデリング、授業のリードとサポートなどです。
特に有益だったのは、日本文化紹介です。入学式、お盆、正月、卒業式などを私自身の子どもの頃の写真を用いて紹介したり、当時丁度小学校に入学したばかりの姪の写真や動画を用いてリアルタイムで彼女の成長を生徒たちと共有しました。さらに、日本の家族から米国の生徒たちに向けたお正月の挨拶動画も好評で、生徒たちもお返しの動画を作成しました。YouTubeなどの既製のものも有効なことも多いですが、日本から来たAT自身やその家族を通して生徒たちが日本を身近に感じられたことはとても有益でした。

印象に残った授業外の活動

私が日本語授業以外に参加した活動は、放課後に行われた派遣校での日本語クラブ、近隣大学主催の日本語テーブル(会話練習)やランゲージパートナー(多言語話者とお互いの言語を教え合う活動)、そして2022年の夏休みに行われた「森の池」という日本語イマージョンキャンプ(母語をほとんど使用せず目標言語のみを用いたキャンプ)です。そのなかでも最も印象に残っているのは、「森の池」への参加です。アメリカの夏休みは、州や学校によって異なりますが、3ヶ月近くあるところが多く、その期間を利用して1週間から4週間程度のキャンプに参加する生徒も少なくありません。「森の池」も例外ではなく、アメリカ全土から日本好きが集まり、私はクレジットティーチャー(参加者が高校1年分の日本語の単位を取得できるコースの日本語教師)として約1ヶ月寝食を共にしました。小学生から高校生までの生徒と同じキャビンで寝るなど、ほぼ24時間共に過ごすことは大変なことも多かったですが、アメリカの若者たちと共に日本語や日本文化を学ぶことは私にとってとても新鮮で、その後の教師としての糧となりました。また、さまざまな困難を共に乗り越えたキャンプスタッフとの出会いも一生の宝となるものでした。特に同じキャビンだった仲間とは今でも交流があり、日本で再会することもできました。またいつか、「森の池」に戻りたいと強く思っています。

日米間の若者交流

私が日米間の若者交流において寄与できたと思う活動は以下です。
(1)毎日の授業や放課後のクラブ活動を通した生徒との交流(2)地域の柔道クラブ、ピックルボールなどのスポーツを通した交流(3)前述のイマージョンキャンプにおける生徒やスタッフとの交流(4)近隣大学の日本語学習者との交流などです。
(1)については、私という日本で生まれ育った人を通して生徒たちに日本を伝えることができたのは有意義だったと思います。教科書やYouTubeなどの既製のものだけではなく、私自身の子どもの頃の写真や今の家族の写真や動画を用いたことで、生徒たちが日本をより身近に感じられたと信じています。(2)では、日本語学習者ではない地域の人々と交流しました。英語で自分について話したり、日本語や日本文化について説明したり、日本とアメリカの違いなどについての質問に答えたりしました。私を通して日本をより身近に感じてくれたと思っています。(3)については、前述のイマージョンキャンプの内容をご参照ください。(4)では、2つの活動に参加しました。ランゲージパートナーと日本語テーブルです。前者は週に1回任意の場所に集まり、30分ずつお互いの母語を教え合う活動で、後者は週に1回大学に赴き日本語会話テーブルにネイティブスピーカーとして参加しました。大学で日本語の授業を履修している学生が多く日本語や日本文化についての深い質問もあり、有意義な交流になったと思います。

将来の若手日本語教員に期待すること

これから派遣される若手日本語教員に期待することは以下です。
まずは柔軟であることです。私はアメリカに派遣されましたが、コロナ禍ということもあり色々なことが流動的でした。日本のように「きっちりしなくては」と相手に期待したり、自分に求めたりはなるべくせず、一定のところで諦めることも大切だと思いました。
次に期待することは、壁にぶち当たった時は自分一人で抱え込まずに周りの人たちに上手に頼ることです。JFやローラシアンの担当者はいつでも話を聞いてくれますし、派遣先でできた友人や仲間に相談することも大切です。特に、J-LEAPは派遣校のLTと四六時中一緒に働きます。どんなに良好な関係が築けていると思っても、人間関係上の悩みはどうしても生まれてくると思います。アメリカの職場では日本ほど同僚同士の交流が深いわけではないので、最初のうちは孤独を感じるかもしれません。学校の外に自分の居場所を作ることもお勧めします。
最後に期待することは、あなたを通して日本を伝えることです。既製品にはない、あなたにしかできないことを探し、毎日できる限り多くの生徒に話しかけることです。そうすることで、生徒たちはあなたを好きになり、それがそのまま日本を好きになることにつながると思います。
続いて、今後の私の進路についてお話しします。私は帰国後は公立高校の英語教員になるつもりです。アメリカで学んだことを日本の高校生たちに伝え、再び私を通してアメリカや英語を学んでいってほしいと思っています。また、国際化が進む日本において外国籍の生徒も増加傾向にあります。そのような生徒のための必要な支援もこの派遣経験を活かし、継続していこうと考えています。

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