米国若手日本語教員(J-LEAP) 10期生 年間報告書
ミシガン州での一年

レイク・ビュー・ハイ・スクール
伊藤 大祐

ミシガン州について

ミシガン州はアメリカ合衆国の中西部に位置し、総面積は北海道の約3倍(25万487㎢)、総面積ランキングは全米で第11位です。周囲を五大湖に囲まれ、The Great Lake State(五大湖の州)という愛称もついています。人口は約1千万人(神奈川県の人口よりやや多い)で全米では第10位に位置します。ミシガン州は、北米における自動車産業の発祥州として知られており、国内自動車メーカーの「ビッグ3(フォード、ゼネラルモーターズ、クライスラー)」が集まって雇用を生んだ重工業都市です。

ミシガン州には日本語を教えているK-12(幼稚園から12年生)の学校が全部で51校あり、 3,743人の児童生徒が日本語を履修しています。高等学校においては34の学校が日本語の授業を提供しており、1,899人の高校生が日本語を学んでいます。 また、小・中学校においては17の学校で日本語の授業が開講され、1,819人の児童生徒が日々日本を学習しています。さらに、16の大学・短期大学でも日本語の授業が行われ、受講者は2,152人に上ります。

【出典:在デトロイト日本国総領事館・日本語教育調査(2021年度)-大学&K-12】

受入機関について

私が派遣されている学校は、ミシガン州バトルクリーク市にあるレイク・ビュー・ハイ・スクールです。教師数は約60人、生徒数は約1,400人です。レイク・ビュー・ハイ・スクールでは、中学校では8年生から、高校では12年生から日本語を履修することができ、日本語1から日本語5までの5つのレベルがあります。アメリカの多くの高校は、2年程度の外国語の履修が高校卒業に必要です。レイク・ビュー・ハイ・スクールも例外ではなく、高校在学中にスペイン語か日本語のどちらかを2年間履修しなければなりません。そのため、日本語1・2には必ずしも日本語や日本に興味がある生徒ばかりがいるとは限りません。ですから、リードティーチャー(以下LT)とアシスタントティーチャー(以下AT)の私は、そういった生徒の興味を引くためにより面白い授業づくりを心がけてきました。具体的には、クイズレットなどのインターネトを用いたゲーム形式の学習、生徒が知っているディズニーや日本のアニメのキャラクターを使ったスライド、日本人であるATの子どものころや家族の写真、ATの得意分野であるジェスチャーなどの身体表現などを用いていきました。2年目も、LTと協力しながらより面白い授業を作っていけたらいいと思っています。

夏休みの日本語イマージョンキャンプ体験

2022年6月上旬から7月下旬まで約5週間、研修も含め、日本語のイマージョンキャンプ(目標言語のみを用いたキャンプ)に参加しました。このキャンプの母体はConcordia Language Villagesという組織で、アラビア語、スウェーデン語、中国語、韓国語などさまざまな言語のイマージョンキャンプを運営しています。ですから、研修では他の言語(韓国語、中国語)のスタッフと寝食を共にし、さまざまな人々と交流することができ有意義な時間を過ごせました。日本語キャンプの参加者は、1週間、2週間、4週間のいずれかのコースを選び参加します。4週間コースの生徒は、1年分の高校の日本語の単位を1か月で取得できます。私は彼らの毎日の授業をクレジットティーチャー(単位取得可能な授業の担任)として担当しました。授業は基本的に外、自然の中で行われます。今まで教室でしか授業をしたことがなかったので、風が吹くとプリントが飛んだり、毛虫、蜘蛛、蜂なども時々参加したりで、教師としてとても面白い経験ができました。生徒たちもスタッフもみんな日本や日本語が大好きでした。こんなにたくさんの日本好きが集まる場所で働けて本当に幸せでした。あらゆる面でものすごく大変な1か月でしたが、再会を約束した友人もでき、これからの人生において忘れられない経験となりました。

1年目を終えての所感

1年目を終えて最初に思い浮かべることは、あっという間だったということです。昨年は新型コロナウイルス感染症の影響で、ソーシャルセキュリティナンバーの取得、運転免許証の取得、車の購入など生活の基盤を作る上でさまざまな困難がありました。また、授業に関してもオンラインになったり、対面になったりを何度も何度も繰り返し、その度にバタバタと対応した印象が強いです。2021年度1年間に及ぶオンライン授業が開けて、初めての対面の授業でした。私のLTもオンライン向けに作り直した授業を、さらにまた対面向けに作り直したり、生徒たちも1年ぶりの100%対面授業で、戸惑い、学校を休みがちになったり、精神的に不安定になったりする子もいました。また、授業も全コマ(約1時間×6)詰まっていて、昼ご飯を食べる時間が10分くらいの日々も続きました。こういった一つひとつの困難に何とか対応しようともがいた1年で、気づいたら2022年の夏休みを迎えていました。もちろん、そのような生活の中でも楽しい瞬間もたくさんありました。やる気のない生徒と雑談をしてその生徒についてより理解できたり、遅刻が多い生徒と冗談を言い合ったり、授業中に生徒に質問攻めされほとんど授業が乗っ取られたり、日々の生活の小さな生きがいも見つけられました。2年目も、一人ひとりの生徒に話しかけ、日本や日本語の面白さを共有していけたらいいと思います。

  • 派遣先での写真1
  • 派遣先での写真2
  • 派遣先での写真3
  • 派遣先での写真4
What We Do事業内容を知る