米国若手日本語教員(J-LEAP) 11期生 総合報告書
J-LEAPでの2年間を振り返って
カメハメハ・スクール・マウイ・キャンパス
黒田 麻井
アシスタントティーチャーという枠をこえて、チャレンジの日々!
私の派遣先であるカメハメハ・スクール・マウイ・キャンパスでは、1つの日本語クラスに複数の学年、さまざまな日本語レベルの学生が混在するというユニークな授業環境がありました。そのため、赴任直後の早い段階から、一定数の学生を受け持ち、1人で授業を行う役割を任されました。そこで、失敗に学びながら成長していくことの大切さを学びました。そのような場を与えてもらえたということは、とても大事なことだったと思います。日々のレッスンプランや授業で使うマテリアルをアシスタントティーチャー(以下、AT)が、一から考え作成することは、時間と労力がかかりとても大変でした。毎日がチャレンジ!の日々ではありましたが、困ったときや、悩んだときは、リードティーチャー(以下、LT)がすぐに声をかけてくれて、必ず良かった点と合わせて、今後の改善点をフィードバックしてくれました。常に気にかけて、温かく見守ってくれるLTの存在は、仕事をする上で大きな励みになりましたし、ATとしての枠にとらわれない形で、勉強になり、日本語教師としてのスキルアップと今後の大切な経験値となりました。
また、LTには、私の新しいアイデアや前向きなエネルギーを活かす指導をして頂き、「第一回体育祭」や「お正月イベント」、「カラオケ大会」など、AT自身が学生と一緒に楽しんで授業ができるような機会をたくさん作って頂きました。その結果、日本語プログラムは活気に溢れ、2023年8月からは、従来の高校での日本語クラスに加え、付属の中学校での日本語クラスもスタートしました。赴任前は、1学期で45名程度だった日本語の履修者が、赴任後の2023年からは約125名まで増え、より多くの学生に日本語や日本文化を学ぶことの面白さを伝えられたのかなと実感できたことは、大きな喜びとなりました。
ACTFL(全米外国語教育協会)のコンベンションに登壇
日本語の授業以外に活動したことで、最も印象的だったのは、2023年11月17日〜19日にイリノイ州シカゴで開催された、外国語教育の専門家や先生が集う全米最大の教育イベントACTFL(全米外国語教育協会)のコンベンションに、LTとともに登壇したことです。発表では、1つのクラスで、さまざまな日本語レベルの学生が混在するカメハメハ・スクール・マウイ・キャンパスの授業環境やその様子を紹介したあと、マルチレベルのクラスでの学習効果の高め方やアプローチ方法などを、実際の現場経験をもとにお話しました。発表会場には、同じような授業環境に身を置く先生がたが数多く来場してくださり、私たちの発表に耳を傾けてくださいました。同校での私の経験から、マルチレベルの混合クラスは、指導する先生への負担が大きいと感じています。授業のために準備しなければいけないことは山のようにあり、また、限られた教室内のスペースをどう有効に使うのか、授業の時間配分はどうするのかなど、考慮しなければいけないポイントも多く、授業づくりは難しいです。ですが、異なるレベルの学習者がともに学び合い、お互いを高め合えるようなダイナミックで、面白い教育環境が混合クラスにはあると思います。その新しい可能性を、コンベンションでの発表を通じて、多くの先生がたと共有できたことは、とても貴重な経験でした。
日本語を通じた出会いと繋がり
J-LEAPでは派遣先の学校以外でも、J-LEAPの同期やトレーナーの先生、また他の地域で日本語を教えられている先生や、そこで日本語を学んでいる学生さんなどとたくさんの繋がりができます。日本語や日本文化を通じて、さまざまな場所で、多くの方と繋がりを作ることができるのも、J-LEAPの魅力の一つだと思います。私は、派遣期間の2年間で、日本語学校や高校、大学など10校以上を訪問し、授業見学・参加をさせてもらいました。派遣先のハワイ州だけにとどまらず、アメリカ本土でも日本語を勉強する多くの学生や日本語の先生と繋がり、交流できたことは、とても貴重な経験となりました。 また、日本語学習の一環として、J-LEAPの同期が派遣されているケンタッキー州の学校と、学生同士がお互いにビデオを作成して交換するというビデオ交流授業を行ったことも、大変印象に残っています。私の派遣先のカメハメハ・スクールの学生は、ハワイ州の離島という土地柄、閉鎖的な環境にいます。そんな学生たちが、ビデオという媒体を通してですが、同じように日本語を勉強しているアメリカ本土の学生と交流ができたことで、好奇心を刺激され、日本語学習に対する新たな動機づけの機会となったことは大変うれしかったです。
今後、J-LEAPerとして派遣されるみなさんへ
J-LEAPでは、日本語教師としての教授経験がまだ少ない段階で派遣される方がほとんどだと思います。そのため、赴任先では予想していなかったような事柄や困難にぶつかり、自信をなくしてしまうことも多くあると思います。私も、日々の日本語クラスでは、どんなにイメージを膨らませて作ったレッスンプランであっても、実際の授業では思い通りにいかなかった…なんてこともたくさんありましたし、2023年にはマウイ島の火事やスケジュールの問題があったりと、さまざまな苦難に直面しました。ですが、困ったときには、私の疑問や悩みに寄り添い、一緒に解決の道を見つけてくれるLTをはじめ、ホストファミリー、学校内の同僚の先生、国際交流基金やローラシアン協会の皆さんの存在があり、どんなときも、必ず大きな力になってくれました。J-LEAP最大の魅力は、生活面でも、また教師としての学びの面でも、周りの本当に多くの方からサポートが受けられ、そんな恵まれた環境の中で、さまざまな経験をさせてもらえるという点だと思います。ぜひ、その特権を最大限に活用し、周りの人と積極的に関わることで、自分自身の学びや成長の糧にしていっていただけたらと思います。