米国若手日本語教員(J-LEAP) 11期生 総合報告書
サンタモニカでの2年間

サンタ・モニカ・ハイ・スクール
尾形 希

未来に続く教材制作

アシスタントティーチャー(以下AT)として、力を入れたことは「教材の作成」です。私が派遣された2022年に、サンタ・モニカ・ハイ・スクールでは、新しく「まるごと」という教科書が導入されました。その為、リードティーチャー(以下LT)は以前から使用していた教材に追加して、新しくまるごと用に教材を作成する必要がありました。主に私はGoogleスライドで授業用のスライドを作成しました。写真やイラスト、また先生の趣味や学生時代の写真などを取り入れて、学生たちに興味を持たせるように工夫しました。作成した教材は全てLTと共同編集者となっているため、J-LEAPが終わった後でも学内で使って頂くことができます。J-LEAPから帰国して2週間後、東京にある某日本語学校でサマープログラムの日本語教師を経験させて頂きました。約5か国の日本語初級者に対して授業を行ったのですが、サンタ・モニカ・ハイ・スクールで作ったスライドやアクティビティがとても役に立ちました。今後日本語教師として活動する際に、今まで作成した教材をアップデートしていきながら、その時々に出会う学生たちや時代に合った教材を作っていきたいです。

学習者同士のつながりを生み出す、お正月イベント

J-LEAP2年目になり、校内の日本語学習者同士がつながれる場を設けるために「2024年お正月イベント」を開催しました。参加者は日本語のレベル1から5までの学生、そして日本語を履修していない学生を招いて、当日は約210名の学生たちが参加してくれました。「けんだま」「福笑い」「折り紙」「ぬりえ」「だるま落とし」「おはし競争」のようなアクティビティ、学生達が浴衣や法被を着て撮影できるような「撮影ブース」、日本のスナックやステッカーがもらえる「景品コーナー」を準備しました。その中でも撮影ブースが特に人気で、人生で初めて浴衣を着た学生がたくさん写真を撮って楽しむ姿が印象的でした。企画から準備、当日の運営まで任せて頂いた初めてのイベントだった為、成功するか不安な気持ちもありましたが、普段あまり話すことのない学生同士が日本のお正月の疑似体験を楽しむ様子を見て、「やってよかった」と達成感を感じました。また、日本文化を通して学習者同士の交流の場を設けることも教師として大切な役割の一つだと思いました。

教師の学び、学生の成長

2年間、ATとして活動する中で感じたことは「教師が学び続けることによって、学生の成長につながる」という点です。特に日本語教師が集まる勉強会やカンファレンスに参加させて頂いた時に感じました。アメリカで日本語教師として活躍されている方の多くは、常に教師としての知識や教室活動のアイデアを新しく取り入れるために、ACTFL(全米外国語教育協会)やCLTA(カリフォルニア州言語教師会)などのカンファレンスに参加されています。積極的に学びの場に参加し、教師としての引き出しを増やすことによって、学生達により良い授業を提供することができると感じました。実際に新しく学んだアクティビティやインプット方法を試してみると、学生たちの反応が良くなることを感じました。2年間で培った「能動的に学ぶ姿勢」を忘れずに、アメリカで出会った多くの先生方のように、将来出会う学生たちに成長機会を提供できる教師になりたいと思います。

1番すきな先生

日米の架け橋のような存在として各地に派遣されて、大きい夢や希望を持ってこられると思います。私自身、日本語教師としての経験がなかったため、無意識のうちに「教師」としての理想の姿を夢のように思い描いていました。しかし、実際に派遣されてみると、想像もしていなかった問題がおこります。例えば、学生たちとのコミュニケーションが上手くいかなくて落ち込んだり、突然授業を1人で任されて授業準備に追われたり、授業が上手くいかずに自信を無くしてしまうこともあります。傍からみるとキラキラしているように見えたとしても、意外に大変で泥臭いなと感じる場面が多くあります。そんな時に、周りで手を差し伸べてくれる人に感謝をして、「なんとかなるさ」と前向きな気持ちで、粘り強く続けていくことによって、小さな成功体験が積み重なって、必ず大きな自信と成長につながります。帰国前に学生からもらったお手紙の「1番すきな先生」という文を見たときに、自分はやっと夢にみていた「教師」として認められたような気持ちになりました。
2年間という期間は長いようで短いです。与えられた時間でたくさん失敗して、楽しんで、後悔のないJ-LEAPにしてください。

  • サンタ・モニカ・ハイ・スクールの学生と、学生に授業を教えている尾形希氏の写真

  • 2024年お正月イベントのアクティビティで使用したぬりえがテーブルの上に置かれている写真

  • 尾形希氏が「2年間ありがとうございました。とても楽しかったです!みんなのことがだいすきです。またあいましょう!!」と書いたメッセージと似顔絵が描かれているホワイトボードの写真

  • 屋外に7メートルほどある男性キャラの空気人形を設営している様子の写真

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