米国若手日本語教員(J-LEAP) 11期生 年次報告書
ロサンゼルスでの1年間を振り返って

サンタ・モニカ・ハイ・スクール
尾形 希

多様性が魅力のカリフォルニア州

アメリカの西海岸に位置しており、カリフォルニア州全体の面積は日本よりも大きく、全米第3位を誇っています。人口は約3900万人と全米最大級となっており、国内外からの移民が多いため、人種や民族が多様な地域として、様々な文化に対してとても寛容的です。カリフォルニア州が定める義務教育期間は6歳から18歳までの12年間。しかし、卒業資格を満たし両親の承諾があれば早期卒業をすることができます。また、幼稚園から高校までの公立学校が存在しており、日本とは異なり学校区によって教育制度や方針が大きく変わります。
日本語教育は他の州に比べて規模が大きく、CAJLT(カリフォルニア州日本語教師会)、TJSC(南カリフォルニア日本語教師会)など日本語教育に特化した組織も多く存在しています。研修や勉強会、日本語教育に関するニュースレターの発行など活発的に活動をしており、日本語教師同士の繋がりも強いところが特徴です。学習者の日本語を学ぶ目的としては、アニメ・ゲームの他にJ-POPカルチャーの影響、日本文化や食文化などがあります。また、北米で最も日系人の人口が多い州ということから、家族や友人とコミュニケーションを取りたいという目的も少なくありません。

海の見える学校、Santa Monica High School

私の在籍するSanta Monica High School(以下Samohi)は、観光地で有名なサンタモニカピアから徒歩15分の場所に位置しており、学校の屋上からは美しいビーチを展望することができます。四季が穏やかで、年間を通して比較的温暖で過ごしやすい気候となっています。

2022年から2023年の学校調査によると、Samohiは161名の学校スタッフが在籍しており、学生数は全体で2,701名、その中で日本語教師は2名、日本語を履修している学生は約190名います。教科書は「まるごと」を使用しており、リスニングの練習などはオンライン教材を使用しながら授業を進めています。

クラブ活動ではオーケストラ、合唱、バンド等の音楽活動が盛んで、特にSamohi交響楽団は120年もの歴史があり数々の賞を受賞しています。日本語クラスにも音楽活動をしている学生が多数いるため、去年学校で開催されたクリスマスコンサートにリードティーチャー(以下「LT」という。)と一緒に行きました。

また、サンタモニカ市は静岡県の富士宮市と姉妹都市提携、京都の木津川市と友好都市盟約を結んでおり、学生同士の交流や、ホームステイ等を通じて、互いの文化や習慣を体験できるところも魅力の一つです。

挑戦する心を育む、つながり。

J-LEAP1年目の春休み、桜が満開の時期に、就学旅行の引率として学生34名を連れて日本へ行きました。なかには、海外に行くこと自体が初めてで緊張している学生もいました。学生達は5~6名の班になって行動し、班ごとに引率の先生が割り当てられて、責任を持つことになっていました。

2週間で大阪、奈良、京都、岐阜、静岡、東京とさまざまな場所に行きました。京都の高校生との交流会後に「40分間も日本語で話すことができました!」と興奮して報告してくれた学生や、静岡県でホームステイの家族と離れるときに泣いている学生の姿を見て、教室外のつながりがどれだけ学生の心を動かし、成長させるかを感じました。短い期間だったにも関わらず、学生の成長を間近で見ることができ、とても嬉しかったです。

アメリカに帰国後、4年生の学生から「大学でも日本語を勉強して、将来は日本の大学院に行きたいです」というメッセージがきました。そのとき、日本語教師は「言語を通じて学生たちに新しい世界を見せ、人生の選択肢の幅を広げることができる」意義のある仕事だと感じました。J-LEAPでしか経験できない、このような貴重な機会を与えてくださり、とても感謝しております。

「日本語」を通じて人として成長する。

1年間、アメリカの高校で日本語教育に携わって感じたことは、二つあります。一つ目は、日本語教師は言語を教えるだけでなく、言語を通じて「良い人間を育てる」という役割があるということです。二つ目は、ゲーム感覚で言語を教える方法が沢山あるということです。

一つ目は文通の活動をした時に感じました。Samohiでは毎年、日本の姉妹都市の高校生と文通を通じて交流をします。学生たちが、日本の高校生を思いながら丁寧に手紙を書いている姿を見て、文化や国境を越えたつながりは、思いやりを育むことができると感じました。 二つ目は日々の授業で、LTから沢山の教室活動を学びました。特に印象的だったのは、さまざまなアクティビティを4つや5つのテーブルに分け、学生たちが一つ一つ回っていく「ステーションズ」という活動です。ステーションズは、多様な学生のニーズにあったアクティビティを一度に複数作り出す必要があったので大変でしたが、毎回LTと協力しながら効果的な教材を作ることができました。

2年目の目標は、学生にクラス外でのつながりをさらに感じてもらえるような活動を提供すること、そして多くの学生に合うような教材やアクティビを沢山作り、楽しく日本語を学んでもらうことです。1年目の経験を活かして、自分自身だけでなく、学生たちの成長のためにも多くのことに挑戦したいと思います。

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