米国若手日本語教員(J-LEAP) 11期生 総合報告書
日本語教育と生徒の成長

ジョン・エフ・ケネディ・ハイ・スクール
藪内 志帆

生徒の視野を広げ、学習意欲を高めるには

私は業務を通じて、生徒の視野を広げることに大きく貢献できたと考えています。リードティーチャーと何度もレッスンプランを見直し、取り扱うユニットやアウトカムを修正しました。従来、ユニットは教科書に沿った内容が中心でしたが、教材が古く、実用的でない点が課題でした。また、日本語学習にとどまる内容が多く、生徒たちの視野を広げるには不十分でした。そこで、私たちは日本語を教えるだけでなく、日本語をツールとして学びを深めることを目指し、環境問題や災害、投票率の低さなど、現代社会の課題に目を向けるユニットを追加しました。これにより、生徒たちに日本語学習を通じて社会問題について考えるきっかけを与え、人としての成長を促すことができました。
また、従来のアウトカムは単語や文法のテストが中心で、現実世界とのつながりが薄く、生徒の学習へのモチベーションを高めるには限界がありました。そこで、アイオワ大学や姉妹校の生徒に対するアンケート結果を基にしたプレゼンテーションや、クックパッドへのレシピ投稿といった、実生活に直結したアウトカムを取り入れました。これにより、生徒たちは日本語を使う明確な目的を持ち、楽しみながら学ぶことができるようになりました。このような工夫により、生徒の日本語学習意欲の向上にも大きく貢献できたと感じています。
言語教育を通じて人を育てるという考え方や、学習意欲を引き出す工夫は、今後どのレベルの学習者に日本語を教える際にも役立てると確信しています。

生徒の未来を広げるジャパントリップ

姉妹校への訪問を含む全14日間のジャパントリップの企画から引率をリードしたことが最も印象深く、また生徒にもポジティブな影響を与えられたと考えています。約1年前から予定していた旅行でしたが、航空券の高騰により、予定していた2名の引率教員の費用が1名分しかカバーできないと旅行会社から連絡がありました。これにより、参加予定の生徒の人数を制限せざるを得ない状況となったため、私は別の旅行会社との再交渉を開始し、相見積もりを取り、調整を進めた結果、予算内で予定通りの人数で実行することができました。
また、リードティーチャーの都合が合わなかったため、当日の引率も私が担当しました。異なる環境での生活により体調を崩す生徒もおり、そのケアをしながら旅程を進めるのは非常に困難で、大変苦労しました。しかし、最終的には生徒全員が旅行を楽しみ、たくさんの感謝の言葉をもらうことができました。帰国後、旅行へ参加した生徒のうち1名は日本語の教員免許を取得するための学部へ進学し、2名は日本へ交換留学しました。生徒の人生に選択肢を増やすことができた、非常に印象的で意義深い経験となりました。

姉妹校の生徒との交流で学習意欲向上

姉妹校の生徒との交流において、日米間の若者の交流に貢献できたと考えています。まずは姉妹校の生徒15名が派遣校に1週間訪問、その半年後に派遣校の生徒14名が姉妹校へ1週間訪問を行いました。その中で特に姉妹校の生徒を巻き込みながら、どのような授業をするかという点に注力しました。私の派遣先では日本人の人口比率が0.1%にも満たず、日常生活で日本語に触れる機会は殆ど0に近い状況下であったため、私以外の日本人と日本語を実際に使う機会はとても貴重でした。そのため、可能な限り姉妹校の生徒と派遣校の生徒が会話をする時間を多く盛り込みました。まずは学年ごとに異なる内容を盛り込んだ自己紹介、その後椅子取りゲームのような日本語を使用した楽しいアクティビティ、そしてメインとして学習した文法を用いたペアワークや会話練習、という流れで行いました。初めは緊張して話すこともやっとであった派遣校の生徒も、最終日には自分から姉妹校の生徒に質問をするなど、大きな成長が見られました。言語力という点はもちろん、異文化理解力の点でも新しい発見が非常に多かったと生徒が口にしていました。これらの交流を通じて、日米の若者の交流に寄与できたと考えています。

目標の達成に向けて

今後派遣される皆さんには、それぞれが目標をもってプログラムに参加し、その目標の達成のために何をするべきかを計画的に実行することで、最大限に力を発揮していただきたいです。2年と聞くと長いですが、実際に業務が始まると本当に時間が過ぎるのが早く感じました。そのため計画性を持って取り組むことが重要であると感じました。目標の方向性については同期でも皆異なり、各々が其々の目標に向かって努力することで、互いに刺激を受けながら成長できたと感じています。
また、今後も日本語教育を通じて日本と世界の架け橋になることを私の人生の目標としています。現時点では、やはり免許取得へのハードルの高さから米国の高等学校の教員の進路は考えていません。また評価の点からも実力や努力が反映されにくいという点に不安を感じている為、現時点では一対一のフリーランスのオンラインでの日本語教師を検討しています。フリーランスであれば学習者からの満足度が高ければリピートで受講してもらえる点で努力が反映されると感じます。また、一対一で教えることによって学習者のモチベーションを把握して各々に合わせた授業を提供したいと考えています。どのような形であっても、本プログラムを通して学んだことを活かし、日本と世界を繋ぐ人材になりたいと考えています。

  • ジョン・エフ・ケネディ・ハイ・スクールの学生に藪内志帆氏が日本語を教えている様子の写真

  • 藪内志帆氏がデジタル時計を持ちながら日本語にまつわる知識を教えている様子の写真

  • 藪内志帆氏が引率したジャパントリップにてエプロンと三角巾をつけた学生が施設を見学している写真

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