米国若手日本語教員(J-LEAP) 12期生 年次報告書
「ハワイで感じた日本」
ミッド・パシフィック・インスティテュート
庭山 恵太
日本とつながり続けるハワイ
私の派遣地であるハワイ州について説明します。ハワイ州は主要な8つの島と124の小さな島から成り立っており、人口は約144万人(2021年調べ)です。ご存知の通り世界有数のリゾート地ということもあり、多くの旅行者がハワイを訪れています。ハワイは日本と関係が深く、日本からの最初の移民が1868年にサトウキビ耕作のため渡ったと言われています。それからも日本人が移り住み、今でも日本にルーツを持つ人々が多く住んでおり、日本文化が町に残っています。毎年、夏には盆踊りが地域ごとに行われています。
学習者が日本語を学ぶ理由として、まずマンガやアニメといったポップカルチャーへの興味が挙げられます。また、家族・親戚に日本人がいて、日本語で会話をしたいという理由から日本語を学びたいという人が多いことも特徴の1つです。
ハワイのオアフ島内には日本語や日本文化を学べる場所がたくさんあります。土曜日に日本語で国語や算数などの授業をおこなう補習授業校のレインボー学園や、日本からハワイへの移民の歴史を伝えるハワイ日本文化センターがあります。ここでは定期的に日本に関するイベントも行われています。ハワイで生活しているとこのように日本との深いつながりを感じることができます。
派遣校 ミッド・パシフィック・インスティテュート
派遣先であるミッド・パシフィック・インスティテュートは1908年にハワイにあったハワイ系、日本系、韓国系などの学校が合併しできた私立学校です。キャンパスはマノアという山手に位置しています。現在は幼稚園から高等学校までが同じキャンパスにあり、始業式・終業式には幼稚園生から高校生までの幅広い年代の児童生徒が体育館に集まります。児童生徒数は1,500名以上で、教員は300名以上在籍しています。さまざまなアートに力を入れている学校でもあり、生徒たちの劇、フラダンス、美術作品を見る機会もあります。
日本語の授業は中学校と高校で行われています。中学校に1名、高校に3名の日本語の先生がおり、私は高校の授業のアシスタントに入っています。日本語を受講している生徒は1つのレベルに約30名おり、レベルは1から4、そしてAdvanced Placement(大学の単位として認められる上級レベルのクラス)があります。
教材は主に「Adventure in Japanese」という教科書を使用しています。必要に応じて、新たに教材を作成しています。私はリードチィ―チャー(以下、LT)と相談しながら、教材を作成し、漢字や文化紹介を中心に授業を担当しています。またLTが説明しているときには、個別に生徒のサポートにはいるなどのサポートをしています。
サマーキャンプで感じたハワイのコミュニティに根付く日本文化
アメリカでは、学校の夏休みが長く2か月程度あるため、子どもの多くはサマースクールやキャンプに参加し、さまざまな体験活動をします。私も夏休みを利用し、オアフ島にあるハワイ日本文化センターが行う「たのしいハワイ ケイキサマーキャンプ」にボランティアスタッフとして参加しました(ケイキはハワイ語で「子ども」という意味)。このプログラムは5日間行われ、朝から昼すぎまでさまざまな日本やハワイの文化を体験し、学ぶことができます。対象は現地の小学生で、約40名が参加しました。
5日間で子どもたちが体験した内容は、盆踊り、和太鼓、魚拓、剣道、生け花、スパムむすび作りなど幅広く、こうした活動のほとんどは地域で活動する講師によって実施されました。日本文化がハワイに深く根付いていることを実感する機会になりました。私も帰国後は、日本に住む外国ルーツの子どもたちを対象に、このような活動をしてみたいと強く感じました。
その他の日本語授業以外の活動として、派遣校の小学校に来た日本からの児童との交流活動の手伝いや派遣校の日本クラブの活動への参加、オアフ島やマウイ島の学校への授業見学などを行いました。
タフな1年を終えて「ハワイでできる日本語教育を」
1年目は初めてのアメリカでの長期生活、環境に慣れるだけでも大変な中、円安物価高も相まって、常にタフな環境でした。授業に関しても、日本語教育の経験はありましたが、継承語の日本語教育(親の母語である日本語を子に伝えるための教育支援)やICTの活用、英語に関してはまだまだ改善したいと思う日々でした。
足りない部分に気づく一方で、ハワイの教育現場に実際に入ることで学んだこともありました。生徒の授業の受け方や日々のちょっとした学校での過ごし方、学校行事の違い、部活動やクラブ活動の運営方法など、日本の高校とは違う点がたくさんあり、自分の教育を捉える視野をさらに広げることができたと思っています。
ハワイに関して言えば、派遣前は観光地としての印象が強く、知らないことばかりでした。しかし、生徒や地域の人と関わる中で、ハワイに日本文化が深く根付いていることを実感しました。ハワイに根付く文化や伝統もさらに学んでいきたいと思います。
2年目は1年目の反省や学びを活かし、コミュニティと連携した活動をさまざまな人と協力しながら行い、生徒の学びに貢献したいと思います。加えて、日本語教育を通して、生徒の学ぶ力やコミュニケーション能力、自律する力を育てることを、引き続き意識して取り組んでいきます。