米国若手日本語教員(J-LEAP) 12期生 総合報告書
ロスガトスよ!ありガトス!高羽のカリフォルニア大奮闘記〜最終章〜
ロス・ガトス・ハイ・スクール
高羽 洋平
2025年夏、高羽のまだ見ぬ世界へ。
派遣2年目の日本語クラスに関するアシスタントティーチャー(以下、AT)業務では、1年目の経験を基盤にしつつ、新たな役割を担い成長することができた。まず、新たに担当した業務として、授業外の補助教材作成やクラス運営に関する調整業務があり、授業内容をより効果的に支える体制づくりに関わった。また、授業中のサポートでも学習者のレベルや個性に応じた柔軟な対応が求められ、1年目より積極的に指導や活動の進行を担えるようになった。さらに、既存の業務にも工夫を加えた。例えば、授業スライドや配布資料を改善し、学習者が視覚的に理解しやすいよう配慮したり、ペアワークやアクティビティの進め方に変化をつけることで、学習者の参加意欲や理解度を高めることに繋がった。このような工夫は、教師陣からの信頼を得るだけでなく、学習者の学習効果向上にも結びついたと実感している。自身の成長としては、授業全体の流れを把握しながら先を見越して行動できるようになった点が大きい。単なる補助に留まらず、リードティーチャー(以下、LT)の意図を汲み取り授業を円滑に進める力を培ったことで、日本語教師としての基礎的な力量と柔軟な対応力を確実に高めることができたと考える。
教室の外へ!高羽よ!高く羽ばたけ!
派遣先機関の日本語クラス以外でも、多様な活動に携わることで地域とのつながりを深めることができた。JNHS(Japanese National Honors Society:全米の日本語学習における学業優秀者を支援する活動)では、授業では扱えない日本文化や地域交流をテーマに活動を企画し、学習者が楽しみながら日本語に触れられる場を提供した。JNHS主催のイベントでは日本の歌やゲームを取り入れ、参加者同士の交流を促進しつつ、日本文化を自然体で体験できる工夫を行った。また、近隣の中学校への訪問イベントでは、日本語学習者が少ない学校にも足を運び、日本語に初めて触れる中学生に向けて簡単な会話や文化紹介を行い、日本語教育の裾野を広げる役割を担った。さらに地域イベントにも協力し、日本文化紹介ブースやワークショップを通じて地域住民に日本への関心を持ってもらう機会をつくった。これらの活動の中で特に印象深かったのは、JNHSでの「映画祭」である。出店ブースや着物着付け体験を交えながら活動を進めたところ、生徒たちが積極的に日本語を使い、文化とことばが結びつく瞬間を実感できた。こうした経験を通じて、日本語教育は教室内に留まらず、地域社会や異文化理解の促進にも大きな意義を持つことを強く感じ、自身の活動に対する視野をさらに広げることができた。
日米をつなぐ架け橋に、俺はなるっ!
J-LEAPの事業目的である「米国における日本語教育の発展の維持」と「日米間の若者交流」に関して、自身の活動は派遣先や地域に一定の成果をもたらしたと考える。まず教育面では、日本語クラスにおいてATとして授業を支えただけでなく、ロスガトスの生徒の主体的な発話を促す活動や文化的背景を織り込んだ指導を行うことで、日本語学習をより魅力的かつ継続的に感じてもらう環境を整えることができた。これにより、日本語の履修を続ける生徒が増え、学習意欲の向上に寄与した。また、授業外の日本語クラブや地域イベントを通して、学習者以外の若者や地域住民にも日本文化に触れる機会を提供し、日本語教育の裾野を広げることができた。交流面では、姉妹校とのペンパル活動を通じて、生徒たちが同世代の日本人と直接つながり、異文化への理解や共感を深める経験を積んだことが大きな成果である。特に毎月行われるオンライン交流では、生徒が自分の言葉で日本人とやりとりする達成感を得て、日本語学習の意義を実感していた。これらの取り組みを通じて、日本語教育の継続的発展と日米の若者を結ぶ交流の架け橋として貢献できたと感じている。
ロスガトスの空に描く新しい自分。
今後、本プログラムや類似の派遣に参加する若手日本語教員には、授業支援にとどまらず、積極的に学校や地域とのつながりを広げてほしいと期待する。ATはLTの補助役でありながらも、生徒やLTとの日常的な関わりの中で信頼関係を築くことが重要であり、その積み重ねが教育効果や交流活動の充実につながると強く信じる。特に、異文化環境においては柔軟性と主体性が求められるため、失敗を恐れず挑戦し、自ら役割を創り出す姿勢が大切である。また、地域活動やクラブ活動を通じて「日本語の授業外での魅力」を伝えることも、プログラム全体の意義を高めると考える。私自身は、J-LEAPで培った経験を今後の日本語教育や国際交流に生かしていきたい。具体的には、日本語教育を「ことばを教える」枠にとどめず、文化や価値観の共有を通じて互いの理解を深める学びの場にしていきたい。また、日米交流で得たネットワークを維持し、将来的には日本に訪れる学習者や観光客に向けて、日本語教育と体験型文化交流を融合させた活動を展開したいと考えている。J-LEAPで得たチャレンジ精神と国際的視野を基盤に、次世代の学習者と日本社会をつなぐ架け橋となることを目指している。