米国若手日本語教員(J-LEAP) 12期生 年次報告書
毎日が学び、テキサス州での一年

ザ・ウッドランズ・カレッジ・パーク・ハイ・スクール
前川 穂香

広大で多様性のあるテキサス州

テキサス州はアメリカ南部に位置し、面積は676,680平方キロメートル、日本の約1.8倍、全米第2位の広大さを誇っています。人口は約2,900万人で、メキシコの国境に接していることもあり、ヒスパニック系の人たちが多く、町では英語とスペイン語が飛び交っています。テキサス州の州都はオースティンで、1836年から1845年まで独立した国家であった歴史を持っています。石油や天然ガスの産出地域であることからエネルギー・科学産業が盛んで、近年では先進製造業、航空宇宙産業、バイオテクノロジーや、ライフサイエンスなどのハイテク産業が発展しています。また、移住先としても人気があり、さまざまな背景を持つ人がいることから、いろいろな文化・価値観に触れることができ、国際色豊かで多様性のある州だと日々感じています。
テキサス州では主要都市を中心に日本語教育が行われており、各エリアに日米協会などの組織も存在しています。毎年スピーチコンテストや、日本文化を身近に感じることのできる日本祭りなども開催されていて、日本とのつながりを持つきっかけ作りが行われています。学習者が日本語を学ぶ目的としては、主にアニメや漫画などのポップカルチャーからの日本文化への興味が挙げられます。また、将来日本に住み、働きたいという目標を持っている学生もおり、学習目的は多岐にわたります。

ザ・ウッドランズ・カレッジ・パーク・ハイ・スクール

現在派遣されているザ・ウッドランズ・カレッジ・パーク高校は、ヒューストン市内から車で40分ほど北に向かったところにある、ザ・ウッドランズという町にあります。ザ・ウッドランズは、1947年にジョージ・ミッチェルという石油の事業家によって開かれた計画都市です。森と湖に囲まれ、大きなモールやレストランもあり、とても生活のしやすい場所です。
学校は2005年に創立された公立高校で、学生数は約3,300人、教職員数は約200人です。とても明るく気さくな学生が多く、放課後は積極的にクラブ活動やイベントに参加しています。学校ではスペイン語、フランス語、ドイツ語、中国語、日本語の中から外国語を選択することができ、2年間履修することが求められています。現在は約90人が日本語を履修しており、教員は1人です。クラスは全6クラス、Japanese 1〜3Advanced Placementクラス(大学の単位として認められる上級レベルのクラス)があります。1学期3ユニットを目安に、「なかま』という教材をベースに、リードティーチャー(以下、LT)が自作したものを使用し、授業を進めています。授業では楽しく日本語を学んでもらえるよう、多くのアクティビティを取り入れています。また、教室内を畳や風呂敷で装飾し、日本の雰囲気を感じてもらえるよう工夫しています。そして、日本の姉妹校と交流する機会も多くあります。Japanese2からペンパルプロジェクトが始まり、毎年春頃には姉妹校の学生がカレッジパーク高校を訪問するなど、さまざまな形で異文化交流を行っています。

学生と共に自分もチャレンジ

授業外では2週間に1度日本語クラブに参加し、春学期は文化祭に参加しました。たこ焼きやたい焼きの販売と、よさこいソーラン節を踊りました。今までソーラン節を踊ったことがなく、週に2回放課後に集まり、学生と一緒に何度も練習をしました。だんだんと形になり、最後の舞台ではみんなと笑顔で踊り切ることができ、嬉しさと達成感を感じました。
そして夏休みに、16名の学生を引率し、日本へ2週間のスクールトリップに行きました。この旅行では、青森、宮城、京都、奈良、和歌山、千葉、東京を訪れ、日本のさまざまな景色を学生に見せることができたと思います。私自身初めて行った所も多く、日本の魅力を再発見、再認識した旅行になりました。旅行中、学生はさまざまなことに興味を示しており、その姿を見るのがとても新鮮で、面白かったです。そして何より、今まで勉強した日本語を実際に使い、姉妹校の学生とやりとりをし、お店で注文している姿を見て、とても感動しました。日本語を教えることの楽しさとやりがいを感じたのと同時に、学生の成長をそばで見守ることができるこの仕事の魅力を実感しました。
また、その他の活動として、他教科の先生とのコラボレーションや、ヒューストン市内の大学で日本文化に関するプレゼンの機会をいただくなど、貴重な体験をすることができました。

日本を知ってもらうきっかけ作りを

テキサスに来てから1日たりとも同じ日がなく、毎日が刺激的で楽しく、あっという間に1年が経ってしまいました。私はこの1年で、自分の気持ちをきちんと言葉にして伝える大切さや、新しいことに挑戦し、それを楽しむ大切さを学びました。はじめの頃は毎日緊張し、上手くいかないことも多く、悩むことがありました。そんな時にLTが「ここはみんなにとって安心できる場所だから、遠慮なくやってみたいことに挑戦してみてね。そして思っていることは何でも素直に伝えてね。」と声をかけてくれました。この言葉が私の背中を後押しし、失敗を恐れずに、さまざまなことに挑戦することができるようになりました。また、自分の気持ちをLTや学生に伝えるようになってから、信頼関係が芽生え、頼ってもらえることが増えました。学生と一緒に新しいことに挑戦する機会もあり、その過程を楽しむことの大切さと素晴らしさを、みんなから教えてもらいました。
2年目の目標は、他教科の先生とコラボレーションをする機会を増やすことや、イベントの企画・実施を通して、日本語の授業を取っていない学生にも、日本のことを知ってもらうきっかけを作ることです。また、積極的に学外のイベントに参加するなど、活動の幅を広げ、より多くの人に日本の魅力や国際交流の楽しさを伝えていきたいと思っています。2年目も今できることを大切に、多様な価値観に触れながら、さまざまなことに挑戦し続け、成長していきたいです。

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