米国若手日本語教員(J-LEAP)13期生 年次報告書 「ことばと文化でつながるトーランスの一年」

トーランス・ハイ・スクール
渡邉 沙和子

多様性が育むカリフォルニアの日本語

カリフォルニア州は、総面積約42万平方キロメートルを誇る全米第3の広さを持つ州で、ビーチエリアや山脈に砂漠、肥沃な農業地帯など多様な自然環境に恵まれています。人口は約3,950万人と全米最多で、ラテン系、白人、アジア系、アフリカ系など多様な人々が暮らし、「多数派のない州」と呼ばれるほど人種や文化の多様性に富んでいます。家庭内で英語以外の言語を使う住民も多く、特にロサンゼルス市は世界でも有数の多言語都市です。カリフォルニア州では、日本語教育が公立学校から大学、週末補習校にいたるまで多岐にわたって提供されており、学習者数や教育機関数も増加傾向にあります。特にロサンゼルス統一学区(LAUSD)では、日本語を選択科目として提供する学校が複数存在し、地域の日本人コミュニティとの連携も進んでいます。
トーランス高校があるトーランス市はロサンゼルスの近郊に位置しており、大きな日本人コミュニティがある町として知られています。トーランス学区には4つの高校があり、すべての高校で日本語プログラムが提供されており、多くの生徒が日本語を学んでいます。生徒は、日系スーパーや日系コミュニティが身近に存在する環境の中で、教科書だけでなく、実生活に根ざしたリアルな日本語に触れながら学習を進めています。このような環境は、言語習得において実践的な学びを促進する要因となっていると思います。

トーランス・ハイ・スクールの日本語クラス

トーランス高校は、ロサンゼルスの南に位置するトーランス市にある公立高校です。ここには日本語レベル1、2、3、APの4つのクラスがあり、1クラスにつき約20〜35名、合計でおよそ160名の生徒が日本語を学んでいます。日本からアメリカに引っ越してきた生徒や、アメリカで生まれ育ちながら家庭で日本語を話す生徒も多く履修しています。日本語をゼロから学ぶ生徒とネイティブの生徒が同じ教室で学んでおり、生徒同士が助け合う姿をよく目にしますが、これはこの高校ならではの光景だと感じます。
私はアシスタントティーチャーとして、生徒が「本当の日本」を楽しく体験できるよう心がけて活動しました。授業では、けん玉や大縄跳び、じゃんけんをアレンジした文化紹介などを行いました。語学の習得は決して楽しいことばかりではなく、時には困難も伴います。特に日本語は世界の言語の中でも難しいと言われていますが、生徒が日本とのつながりや楽しみを見出し、それを今後の学習の原動力としてくれることを願っています。

さまざまな視点からの日本語教育

カリフォルニア州以外の州の日本語プログラムを見学しました。先輩や同期が活動しているハワイ州、アラスカ州、アイダホ州、アイオワ州を訪問しました。州によって学校や生徒の雰囲気が異なり、各校でさまざまな日本語授業が行われていました。新しいクラスアクティビティや、歌や手話を導入した指導方法など、興味深い実践を直接見ることができ、大変有意義な経験となりました。特に先生方が工夫を凝らして生徒の興味を引き出そうとする姿勢には強い刺激を受け、自分の指導にも取り入れたいと思いました。
見学を通じて気づいたことが二つあります。一つ目は、州や環境、方法が違っても、日本の文化や言語に関心をもち、熱意をもって日本語を学ぶ生徒がいて、情熱を持って日本語を教える先生がいるという点はどこも共通しているということです。二つ目は、周囲の環境によって生徒の興味や関心の対象が大きく変わるということです。生徒の関心を的確に見極め、それに沿ったコンテンツを作ることの大切さを改めて実感しました。学んだことを派遣校の日本語クラスに取り入れ、生徒にとってより魅力的な授業づくりにつなげていきたいと思います。

一年目から二年目へ

一年目は、新しい環境に積極的に身を置き、より多くの人と関わることを目標に過ごしました。滞在しているトーランスは多様性に富んでおり、さまざまな文化的背景を持つ人々やお店があり、新しい経験を数多く得ることができました。特に、人との出会いを通じて多様なトピックについて語り合い、時間を共有できたことは、私にとって非常に貴重で楽しい経験となりました。
二年目の目標は、トーランス高校の生徒に加え、地域の方々にも日本を楽しんでいただける機会をより多く提供することです。生徒が「楽しかった」「できて嬉しい」と言葉にしてくれたり、喜びにあふれた表情を見せてくれたりする瞬間は、私にとって大きな励みになります。二年目もそうした瞬間に数多く出会えるよう、周囲からの支えに感謝しながら活動を続けていきたいと思います。

  • トーランス・ハイ・スクールの外観
  • 男女4人が手作りの紙のお面を被ってこちらを見ている。
  • 百人一首の札を使ったゲーム「坊主めくり」について説明をしている渡邉 沙和子さん。
  • けんだまの「Level1:おおざら」ができる者の名前が書いてあるホワイトボードが写っている。
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