ハワイにおける日本語教育
ニウ・バレー・ミドル・スクール
南 沙代子
ハワイでの日本語教育
派遣先はハワイ州で面積は28,311km²、人口は1,360,301人(2010年)です。州の行政府は知事が指導し、副知事の補佐を受けています。どちらも組み合わされた候補者名簿から選出される仕組みになっています。知事は州全体で選出される唯一の役人であり、他の役人は知事が指名します。一般的事情としてハワイ州は大きな8つの島と小さい島から成り立っています。気候は常にあたたかく過ごしやすいです。もともとはハワイ王国でありましたが、1959年にアメリカ50番目の州に昇格し、その後本格的な観光業が始まったようです。日系人の移民も多く日本人にとって非常に過ごしやすい州と言えるのではないでしょうか。
ハワイ州内には公立学校(小学校~高校)が288校あり公立学校の就学者数は178,189名(2010-11年)に上ります。日本語教育に関してハワイでは73の機関、197名の教師数、学習者は12,602名です。日本人向け観光地と言うこともあり、学習者は日本語を使う機会がいくらでもあります。学習目的として一番に挙げられることは仕事の為と言えるでしょう。日本人観光客を相手にしたビジネスは多くお客さんとコミュニケーションをとるために学習している人が多いです。また、日系ということもあり祖先の文化理解の目的に学習しているものも多いです。
派遣先の状況
派遣先のニウバレー中学校はオアフ島の左側に位置しています。教師数は54名、生徒数822名です。勤務先の中学校ではIBプログラム(International Baccalaureate program) という大学入学時に有利なコースを導入しているため全学生が日本語か中国語を選択必修として履修しています。生徒の日本語選択の理由として大きく挙げられることは2つあります。日系人が多いまたは自分自身が日系人ということもあり勉強する生徒、中国語は漢字が難しい為、日本語を勉強する生徒というのが主な理由です。特に特定の使用教材はなく、教師がテーマに合わせ、自主作成しています。たまにですがアドベンチャー日本語を参考資料として使うこともあります。日本語教師は私を含め3人います。授業は各クラス週に2回ずつで、各先生が300人程度の生徒を担当しています。こちらの中学生で授業中に寝ている生徒は一人もいません。単語カルタゲームでも非常に盛り上がります。そんな純粋に楽しんでいる様子を見ると次はどんなアクティビティをしようかと考えが膨らみます。ただし、前述のように全校生徒に外国語履修が義務付けられているため、全員が日本語を勉強したくてしているとは限りません。アメリカでは数学や理科などの必修科目を落としてしまうと進級できませんが、外国語は必修にも関わらず単位を落としてしまっても進級はできるため初めから頑張る気のない生徒がいるのも事実です。
日本語 | 中国語 | |
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6年生 | 192名 | 62名 |
7年生 | 197名 | 66名 |
8年生 | 164名 | 60名 |
学校外での活動内容
ローラシアン協会より絆プロジェクトという被災地にアメリカ人高校生を送るプログラムで引率として高校生23人と共に日本を訪問しました。その際にコーディネーターとして保護者との連絡や生徒たちのプレゼンテーションのお手伝いなどさまざまな経験をつませていただきました。
他にはハワイの日本語教師会などにスーパーバイザーと参加し、著名な先生方からお話を伺う機会もありました。そこで生まれたつながりより近所にある高校訪問などもさせていただきました。
ハワイでの心境
ハワイは毎日穏やかな気候で、日本や海外からの旅行客でにぎわっている世界有数の観光地です。しかし、もともとハワイは先住民であるポリネシアの土地でした。アメリカの州になる以前の国王の宮殿など、歴史的建造物に訪れる機会がありハワイの歴史を少しではあるが学びました。国王、女王がスーツや西洋のドレスを着ている様子はどこか不自然ではありましたがこうして現在のハワイへと繋がっていったのだと感じました。米国の中で唯一、全体人口の半分以上がアジア系を占めるハワイ州では他の州とは違った経験をさせていただいています。ハワイで学んだ重要なことは寛容さです。この小さな島には日本の文化を始め多くの国の文化が溢れています。さまざまな文化を受け入れ現地に適した形で受け継いでいくハワイの寛容性の中、日々を過ごしています。
大学時代、日本語教師は日本・日本語に興味のある生徒に教えることが仕事だと単純に考えていましたが実際に海外で教えてみて感じたことは、一部の生徒にとって日本語の勉強は“義務”としてしか捉えてもらっていないということです。日本語に興味がない生徒に興味を持ってもらえるために、私自身もっと勉強してさまざまな生徒に対応できるようになることが現在の課題です。生徒が日本語を学びたいと思うことを期待するのではなくどうしたら面白く授業をすることができるのか自分の可能性に期待して今後とも頑張っていきたいと思います。
授業中に宿題のチェック
授業の始めに回収する宿題がちゃんとできているか授業中に確認。
この時の宿題はカタカナの書き。
全員が指示通りできているか確認中
1クラスは30人程度。
日系人は約1/3で「アクタガワさん」「ウメモトさん」など、
日本の名字の生徒も多い。