アリゾナ州での日本語指導助手としての活動報告

ドブソン・ハイ・スクール
古本 裕美

アリゾナ州について

グランド・キャニオンがあることで有名なアリゾナ州は,アメリカ合衆国の南西部に位置し,面積は約29万平方キロメートル(日本を一回り小さくした大きさ)で,約640万人が暮らす州です。この州を象徴するサボテン,荒野からも想像していただけるように,夏の気温は40℃を超え,11月頃まで暑い日が続きます。一方,冬は温暖で,アメリカ北部の人たちにとっての避寒地となります。春にはメジャー・リーグ(野球)のキャンプ地ともなり,全米から15のチームが集まることでも有名な州です。
アリゾナ州における義務教育期間は6歳から16歳までで,大多数の学校が2学期制を採用しています。1学期は8月上旬から12月下旬まで,2学期は1月上旬から5月下旬までです。高校の卒業資格を得るためには,10年生から12年生の間に,AIMS TestArizona's Instrument to Measure StandardsReading, Writing, Math, Science)に合格しなければなりません。そのせいもあり,選択科目である外国語(日本語を含む)の履修を途中であきらめ,そちらの主要科目に専念しなければならいという事態も起こりえます。2009年に行われた国際交流基金の調査によると,アリゾナ州における日本語教育機関数,教師数,及び学習者数は表1の通りです。機関数においては全米第18位,教師数においては第21位,学習者数においては第18位,という規模です。

表1 アリゾナ州における日本語教育機関数,教師数,学習者数
区分 機関数 教師数 学習者数
学校教育 初等段階 0 0 0
中等段階 10 10 886
高等段階 9 30 1,193
学校教育以外 0 0 0
複数段階 教育 1 5 29
総数 20 45 2,108

Dobson High Schoolでのアシスタント業務

私が毎日通うDobson High Schoolは,アリゾナ州の中央部,メサ市にあり,教師数は約130名,生徒数は約3,000名という比較的大きい高校です。2011年度は,Japanese1Japanese2Japanese3の3つのレベルのクラスが開講され,約70名の生徒が受講しました。彼らの学習動機は,だいたい次の4つに大別されます。(1) 日本のアニメ,ゲーム,マンガ,ファッションといったポップカルチャーに興味があるから。(2) 将来,日本に住みたい,日本で働きたいから。(3) 日本語の習得は他の言語に比べてチャレンジングだから。(4) アジアにルーツをもつ人が家族・親戚にいるから。これらの他に,外国語科目の選択を考えた際に「スペイン語は既に母語として獲得しているため,それ以外の言語を学びたかった」と述べる生徒が多いのも,この州,この地域の特徴かと思われます。
ここでの主なアシスタント業務は,アメリカ人教師とのティーム・ティーチング,生徒へのチュータリング(tutoring),日本文化の紹介です。2011年度は,Japanese2Japanese3の授業が同時間帯に設置されたので,私がJapanese3を担当しました。その他のクラスでは,アメリカ人教師が教室の前で授業をする間,机間巡視をしながら,授業についていっていない生徒の補助をします。特にサポートが必要な生徒には,授業中,休憩時間,放課後にチュータリングを行っています。また,月に1回のペースで日本の年中行事,祝日,文化に関するプレゼンテーションを行います。

  • Japanese1の授業の様子の写真
    写真1 Japanese1の授業の様子

地域での活動

Dobson High Schoolでの日本語の授業以外では,地域の小学校や中学校に出かけ,日本文化や歴史に関する出前授業をしたり,ジャパン・キャンプを行ったりしています。例えば,2011年度は,小学4年生のクラスで,広島の原爆や私の祖父の第二次大戦での経験についてお話したり,特別支援クラスで日本の地理,結婚式,折り紙を紹介したり,高校の英語クラスで日本神話に関するプレゼンテーションを行ったりしました。また,中学校でのMulti-Cultural Fashion Showでは,スタッフとして着物の着付けを担当しました。さらに,年に2回ほど,Japan Mini Campを地元の小中学生を対象に行いました。そこでは,Dobson High Schoolで日本語を履修している生徒も加わり,日本の歌や簡単な日本語を教えました。こういった活動は,単に,地元の人に日本を知ってもらう機会を提供するだけでなく,Dobson High Schoolや日本語クラスの存在をアピールする絶好の機会ともなり,大事な広報活動の一つとして位置付けられます。

  • ジャパン・キャンプの様子の写真
    写真2 ジャパン・キャンプの様子

指導助手としての1年目が終わり…

とても広いアメリカ,アリゾナで,日本語教育の発展や,日本に対するよき理解者を増やすためには,「人とのつながりがとても重要だ」と日本にいる時以上に感じます。Dobson High Schoolでのスーパーバイザーはもちろんのこと,アリゾナ日本語教師協会の先生方,アリゾナ日本企業懇話会の方々,国際交流基金ロサンゼルス日本文化センター,在ロサンゼルス日本国総領事館,同地区の学校の先生方や保護者,ホストファミリー,J-LEAPJapanese Language Education Assistant Program)の同期などなど,たくさんの方に支えられて,私がこの地で活動することができます。
現時点で,私に残された時間は約4カ月です。現在通っている高校の日本語プログラムの発展と,生徒の幸せを第一に考え,より一層努力して参りたいと思います。

  • アリゾナ日本語教師協会の画像
    写真3 アリゾナ日本語教師協会のホームページ(http://aatjaz.org/
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