デラウェアでの一年

アポクイニミンク高校
梅地 展之

州の特徴

任地のデラウェア州は、建国時の13植民地の内、合衆国憲法を最初に批准したことから、「ファースト・ステイト」の愛称で親しまれています。面積は約6,452㎢で、アメリカで2番目に小さいですが、人口は約90万人で、人口密度では、全米で6番目の州です。会社の設立が容易にできる会社法が有名で、企業の誘致に力を入れています。デラウェアに本社を置く企業も多いです。異文化に対する理解を深め、外国語が話せる人材を増やし、外国企業が進出しやすい土壌を作るため、デラウェア州では外国語教育に力を入れています。勤務校ではスペイン語、フランス語、中国語、手話そして日本語の中から選んで履修することができます。進学するためには、少なくともレベル1と2の単位を2学期かけて取得しなければなりません。隣町にあるミドルタウン高校にも日本語のクラスがあります。日本語を選択する学生の多くは、アルファベットで表記する言語よりも難しいと覚悟していて、高いモチベーションを持っています。

勤務校での役割

アポクイニミンク高校は、2008年に設立された新しい公立学校です。教員数は80名前後で、学生数は約1,500名です。人種の内訳では白人64.4%、黒人25%、ヒスパニック5%、アジア系4.4%となっています。学生たちはエスニシティに捕らわれず、部活や募金集めなどの課外活動を積極的に行っています。日本語の授業は1~5まであり、専任教師1人で担当しています。教材は「Adventures in Japanese」を使用しています。昨年度の生徒数は、日本語1及び2(22名)、日本語3(14名)、日本語4(6名)、日本語5(5名)でした。私は日本語4と日本語5の上級クラスを担当させて頂きました。学生たちはすべて日本語で行う授業スタイルに初めは困惑している様子でしたが、最後は日本語でのディスカッションができるまで頑張って授業に参加してくれました。他の授業では、主にSVの先生のフォローを担当しました。学習障害がある学生がいたので、隣に座って質問に答えたり、授業内の指示を説明したりいました。書くことが困難な学生だったので、ノートを取って渡したり、テストの口述筆記をしたりもしました。質問する内容がユニークな学生で、納得して貰うのが難しいこともありましたが、とても勉強になりました。

その他の活動

日本語の授業以外では、他の科目のクラスでプレゼンテーションを行いました。社会の先生から依頼を受け、文化の違いと明治維新について説明しました。また、家庭科の先生から穀類をテーマにした授業でお米を取り上げたいというお話を頂き、日本の食文化を紹介し、一緒にお寿司を作りました。他のクラスに訪問した時、学生からの質問で一番多いのは、日本とアメリカの学校システムの違いについてです。日本では学生が自分たちで学校を掃除すると説明すると、必ず驚かれました。勤務校以外の活動としては、隣町の中学校や高校に定期訪問し、授業のサポートや日本文化の紹介などをしました。中学校では高校生になってから外国語を選択する判断の材料にするため、年間を通して日本語をはじめ複数の外国語に触れられるカリキュラムが組まれています。週末は日本へ文化大使として行く予定の高校生の家庭を訪問し、初級会話の授業をしていました。こうした教室の外での活動からも刺激を受ける機会に恵まれました。

一年目を振り返って

最も印象的なのは、アメリカの持つダイバーシティ(多様性)です。メディアや教育現場でもダイバーシティの重要性は繰り返し強調され、町を歩いていると、様々な文化的な背景を持つ人々がいて、大変刺激的です。もちろん貧困の問題やエスニシティ間の対立などを同時に抱えているのですが、新しいものを生み出すアメリカの強さの秘密はこのダイバーシティにあると感じます。人種的な意味での多様性はもちろんですが、州やエリアによって独自の文化やカラーがあり、そうした地域的なダイバーシティもアメリカの豊かさを支えていると思います。2年目の目標としては、1年目に担当した業務をもっと工夫し、楽しい授業作りに貢献して、SVの先生からより信頼されるアシスタントになりたいと思います。昨年の経験でアメリカの学生の苦手とするポイントや日本語クラスの進め方が把握できたので、今年は教材の作成や学生のフォローをより効果的に行いたいです。1年目は目の前の課題をこなすことに追われている内に終わってしまったので、2年目はもっとさまざまなことにチャレンジし、日本語教育に貢献したいと思います。

  • デラウェアでの一年の様子の写真1
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