アメリカで日本語を教えて

テイラー・オルダー・ダイス・ハイ・スクール
吉田 篤矢

ペンシルバニア州ピッツバーグにおける日本語教育

ペンシルバニア州は米国北東部に位置する州のひとつです。主要都市はフィラデルフィアとピッツバーグで、私が派遣されたピッツバーグは州西部に位置しています。かつては鉄鋼を中心とした産業で栄えた町でしたが、現在は保健、教育、金融を中心とした産業へと転換し、地域経済を再生させました。また、学術都市としての側面も持ち、カーネギーメロン大学やピッツバーグ大学をはじめとした多数の大学がキャンパスを置いています。

ペンシルバニア州ピッツバーグでは90年代から2000年代にかけて日本語教育規模は格段に大きくなりました。現在はピッツバーグ市内の4つの高校で日本語が教えられています。また毎年3月には、ピッツバーグ大学とペンシルバニア日米協会共催の高校生スピーチコンテストが開催され、学区内外から多くの学生が参加し、日々培った日本語能力の発表の場となっています。2013年はオルダーダイス高校から多くの学生が参加し、中級の第一位、そして上級の第一位と三位に選ばれました。また、地域の図書館などでも日本語が教えられており、ピッツバーグは日本語教育が盛んな都市の一つであると言えます。

アシスタントティーチャーとしての業務

受入機関であるオルダーダイス高校(Taylor Allderdice High School)はピッツバーグの公立高校です。日本語コースは4つのクラスで構成され、約80名の学生が履修しています。レベルは初級から中級まであり、4年間で中級(Intermediate low)に到達することが大きな目標となっています。日本語の授業は毎日すべてのレベルのクラスがあり、日本語を履修する学生は毎日日本語に触れています。

アシスタントティーチャー(以下、AT)としての業務は、授業の計画・実施、また日々の宿題の管理等多岐に亘ります。リードティーチャー(以下、LT)の先生とは日本語クラスに関わるすべてのことに対して2人で話し合って取組み、切磋琢磨していこうという共通理解のもと業務に取り組んでいます。赴任当初はLTの先生と指導案を練る中で、アクティビティを考えることが主な業務でした。それから半年ほど経て、リーダーシップをとってユニット単位で指導案を作成するようになりました。ユニットを作るにあたっては目的、評価、各授業のアプローチ、スキャフォールディング等様々なことを考えなくてはなりません。教師としてとても実りのある一年でした。

また1年を通してATとしてリーダーシップをとったのは文化の授業です。日本の伝統行事についての授業はカレンダーに合わせて実際の日に行っています。節分は豆まき、ひな祭りはひな人形おにぎりづくり等、実際に体験しながら楽しいアクティビティを行うことを心がけています。日本から来た日本語教師として、少しでも学生の日本への興味関心を伸ばしたい、日本を好きになってもらいたいという気持ちを胸に、日々学生と向き合っています。

教室の外で

テイラーオルダーダイス高校では毎週木曜日の放課後に日本文化クラブが活動しています。日本文化クラブには日本語を履修している学生から履修していない学生まで多くの学生が参加しています。クラブの活動としては、アニメ鑑賞、日本食の体験等、様々なことを行っています。今年度は校内でお好み焼きパーティー、また近隣の店でラーメンも食べる会も行いました。来年度も継続して日本文化クラブを盛り上げる活動をATとして行いたいと思っています。

またピッツバーグコミュニティでは毎年3月の日本語スピーチコンテスト、そして今年で3回目を迎えた友達フェスティバルに学生とともに参加しました。友達フェスティバルは日米協会とカーネギー図書館共催のイベントで、地域に日本の伝統文化を紹介することを目的としたイベントです。今年はテイラーオルダーダイス高校で日本語を学習する学生ボランティアとともに参加し、日本の歌に合わせたダンスを披露しました。地域とのつながりのなかで日本の文化を伝えられるイベントですので、来年度もより多くの学生ボランティアとともに参加したいと考えています。

アメリカで日本語を教えて

今年一年は現場の実践を経ながら「教える」ということの難しさとそのやりがいを感じた一年でした。授業をよりよくするためには教師として授業づくりに関するあらゆることについて理解を深め、プロフェッショナルディベロップメントをしなくてはなりません。実際に学生の前に立ってその必要性を強く感じるとともに、教師としてもっと成長したいと思った一年でした。また、日本語という枠を越えて一教師として、日々成長する学生とかかわり、その成長を見られたことは私にはとても意味のあるものでした。

またATとしてこの一年は成功と失敗の繰り返しでした。一年を通して多くのアクティビティや授業を実践しましたが、成功する場合もあればうまくいかない場合もたくさんありました。しかし失敗した場合でも、LTの先生と共にすぐに振り返り、次の授業へ向けての改善策を考えられたことは良かったと思います。多くのことに挑戦できた一年でした。

来年は学校ではユニットデザインと文化の授業により焦点を当て、同時に地域の日本語教育により深く関わりたいと思っています。授業については、昨年よりも楽しく、そして記憶に残るような授業づくりを心掛けたいと思います。また地域の日本語教育現場でボランティアとして、より積極的な活動を行い、日本語教育イベントなどもできたらと思っています。

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