オレゴン州に派遣されて

レイク・オスウィーゴ・ハイ・スクール
高橋 萌

アシスタントとして意識した活動

授業の中で一番多く担当したのは、日本語での日本文化の授業です。1、2ヶ月に1度の頻度で、お正月やこどもの日などの伝統文化から、アニメや音楽などのポップカルチャーまで幅広く授業を担当しました。常に学生の心に長く残るような授業を目標とし、アクティビティやゲームなどを多く取り入れながら学生が能動的に参加できるよう工夫をしていました。学生が日本語学習へのモチベーションを維持するために必要なのは、自分と日本・日本語との結びつきだと思います。学生の日本語学習の動機は漫画やアニメ、歴史、文化、日本食、家族など多様です。一人一人の動機に結びついた授業をするのは難しいとは思いますが、常に授業の中で誰がどのようなことに興味を持っているのかを意識しながら学生の発する言葉に耳を傾けるよう心がけていました。学生の興味や動機が分かれば、授業で扱う内容もそれらに合わせていくことができ、学生の反応も変わっていきます。そのような意味で、日々学生から学びながら教材を作成し、授業を行っていました。
また、アドボカシーにも力を入れ、日本語プログラムのプロモーションビデオを作成しました。やはり他の言語に比べると日本語の学生は格段に少ないので、日本語プログラムとは何なのかを伝えること、「日本語は難しい」というイメージをなくすこと、日本語とキャリアとの結びつきを伝えることを目標としました。少しでもこのビデオが今後の日本語の学生数の増加に繋がればと思っています。

受入機関外での活動

受入機関外での活動としては、近隣の小学校や中学校での日本文化の授業や、領事館のお手伝い(もちつき、スピーチコンテスト、Japan festivalなど)、JETプログラムのお手伝い(研修や面接のお手伝いなど)、オレゴン日本語教師会が主催する勉強会への参加を行いました。
またオレゴン州外国語教師会の学会にて「アシスタントの目線からの発表をして欲しい」との依頼を頂き、発表をさせて頂く機会がありました。実際に受入機関に派遣されてから様々な場の教育現場を見てみると、アシスタントを受け入れている学校は多々あり、教師の方々からもアシスタントを重宝しているという話をよく聞きました。さらに、やはり文化や言葉は常に変わっていくものであり、海外に住んでいる教師からしてみると現在の日本の文化や言葉、流行についていくことが困難で、アシスタントからそのような部分を補って欲しい、との声も多くありました。そのため、この学会ではアシスタントの目線から日本の食文化についての発表をさせて頂き、他の先生とのディスカッションが盛んに行われました。アシスタントという若手の意見を積極的に取り入れてくれる他の先生の姿勢や、コミュニティの中で協力して授業をより良いものにしようとする向上心にはいつも刺激を頂き、自分自身の授業を考え直す良い機会となりました。

授業を超えた日本語の使用

残念ながら派遣校に姉妹校などがなかったため、どのように本校の学生が日本人学生と交流ができるかを試行錯誤した2年間でした。幸い同ディストリクトからJETプログラムを通して埼玉へ派遣されている先生がいたので、埼玉の中学生と本校の学生とで文通を行いました。埼玉の学生に日本料理について英語で紹介してもらい本校の学生がその日本料理を試してみたり、写真を送り合ったり好きなドラマなどについて話したりなど、やはり年齢の近い人とは話も合うようで楽しんでいました。手紙でメールアドレスを交換した学生もおり、文通を超えてメールで個別に連絡を取り合って楽しむ学生もいました。
また、姉妹都市である埼玉県吉川市の学校が毎年オレゴンに短期で来ることになっているので、今年は本校の日本語の授業に招待し、授業の中に学生同士が交流できる機会を設けました。お互いにシャイになってしまいコミュニケーションが難しい部分もありましたが、アクティビティを通しながら英語と日本語で一生懸命交流している姿はとても微笑ましかったです。やはり授業の中だけしか日本語を使用する機会がないと学生の学習意欲を維持することも難しいので、いかにして授業を超えて「自分の日本語は日本人にも通じる」と学生が実感できる機会を作るかが重要であると感じました。

教師として、人間としての成長

どのような場合も、常に前向きな気持ちで挑戦する気持ちが大事だと大きく感じた2年間でした。もちろん教師として教えることが一番大切な業務ではありますが、本プログラムは自分次第で日本語の授業以外でも様々な経験ができる貴重なプログラムです。今回プログラムを通して教師として成長できたことはもちろんのことですが、その他にも英語でのスピーチ力やコミュニケーション能力、様々な場面に対する適応能力など、人間としても大きく成長できたと思っています。日本からのアシスタントという特殊な立場で来ているので、ありがたいことに授業以外の場面でも様々な経験が出来る場所に招かれることや、自分自身の経験をお話するような場面などがこの2年間は多かったように思います。もちろん初めての経験は不安なことも多いと思いますが、どんなに迷いや不安があっても常に前向きな気持ちで挑戦すれば何事も自分の力で解決でき、それがその後大きな糧になるということがこの二年間で実感できました。今後も本プログラムで得た貴重な経験を生かして、米国での日本語教育、更には日本語教師育成に携わっていけたらと思っています。

  • 派遣先での写真その1
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