サリナスでの2年間を振り返って

アリサル・ハイ・スクール
坂本 幸洋

アリサル高校での活動

アシスタントティーチャー(以下、AT)の業務としては、日本語授業の補佐・事務的補助、授業準備やテスト採点、文化に関するプレゼンテーションや授業を行いました。文化に関する授業としては、書道、合気道、日本の行事(クリスマス・ハロウィン・バレンタイン)、日本料理(巻き寿司、金平ごぼう、ラーメン、たこ焼き、餅、焼きそば、餃子など)といったことについて授業をしました。生徒にとっては初めて経験することがほとんどで、興味をもって授業に参加していました。特に日本料理は生徒の関心がとても高く、喜んでおかわりもして食べていたのが印象的でした。ATとして教えるにあたっては、日本の生徒とアメリカの生徒の違いに戸惑うことがありましたが、生徒との交流を通して新しく学ぶ機会が沢山ありました。また、合気道クラブを創設し約10名の生徒とクラブ・アドバイザーの数学の先生と共に一週間に一度稽古をしました。教室の掃除、教材費で購入した畳のジョイントマットを敷き詰めることから毎回の練習をスタートし、呼吸法、合気体操、受け身といった基本的な事項を重点的に練習しました。クラブ活動最終日には、演武会を開催し、それぞれが1年間の練習の成果を発揮しました。演武会の後には、部活生のそれぞれがリフレクションを行いましたが、「合気道部で活動できて本当に良かった。」「今まで参加したクラブの中で一番楽しくて思い出に残っている。」「合気道部がなくなってしまうのは悲しいけど、将来どこかでまた練習したい。」などといった感想が生徒からあり、2年間の合気道部顧問生活に大変やりがいを感じました。

コミュニティーでの活動

J-LEAPでの2年間に学校外のコミュニティーで活動する機会も多くありました。日本語クラスのアドボカシーとして、受入機関と同じ校区内にある中学校2校において、アリサル高校の日本語クラスについてプレゼンレーションをしました。2日間で、合計24クラスをまわり、結果として2015年度はJapanese1が2クラスでしたが、2016年度は1クラス増え3クラスとなりました。日本文化紹介の活動としては、カリフォルニア州立大学モントレーベイ校で行われた日本語カラオケコンテストでゲストスピーカーとして合気道の演武を披露したり、モントレー高校でおこなわれたカルチャーフェアで、日本人高校生留学生2名と共に書道の実演をしました。また、私のホストファミリーがDKGという女性教員のためのボランティア団体に参加していたこともあって、そのミーティングで現役教員・元教員の方々に対して日本の学校教育について発表する機会がありました。
二年目の夏にはサリナス市内の寺院で日系アメリカ人によって運営されている日本語サマーキャンプに携わり、小学6年生のクラスを担当しました。2週間にわたって、ひらがなや日本文化体験(盆栽、組み紐、能面作り、書道)の授業をしました。また、フィールド・トリップとしてサンノゼのジャパン・タウン、日系アメリカ人博物館に生徒を引率しました。日系アメリカ人博物館では、第二次世界大戦中の日系アメリカ人の歴史について話を聞き、私自身も初めて知ることが沢山ありとても勉強になりました。

生徒との交流を通して

日々の授業や課外活動(学校外イベントやクラブ活動)、放課後チュータリングなどを通して生徒と交流する機会が多くありました。また、2年目には一部の生徒から生徒会活動や就職に必要な推薦状を頼まれた事もあり、徐々に生徒との信頼関係が深まったように感じます。私が生徒に日本語・日本文化について教える事もありましたが、同時に生徒からアメリカ・メキシコの文化について教えてもらうことも多かったです。
この2年間でJ-LEAPATとして、生徒に対して何かしらの変化を起こし、生徒の視野を広げることができたと思います。また、自分自身も新しいことを知り、視野を広げ、教員としても一人の人間としても、成長できた2年間でした。授業の最終日には、生徒から手紙をもらい2年間での思い出、楽しかったこと、感謝していることなどを知ることができました。私も一人一人に”日本語”でメッセージカードを書いて渡したのですが、いつかカードを読める日が生徒に来ればと願っています。そして、日本で再会できる日を楽しみにしています。

2年間を振り返ってみて

J-LEAPを通して、この2年間はアメリカの教育事情・文化について学ぶことのできる貴重な経験となりました。また、受入機関の生徒また地域の方との交流を通して日本について理解を深めてもらうきっかけを沢山作ることができたように思います。大学を卒業して、すぐJ-LEAPに参加した私としては社会人として働くこと、教員として働くことも初めてでした。また、貧困地域に勤務校があったこともあって、生徒のために、またコミュニティーのために何ができるのか考えた2年間でした。私が常に心がけたことは、生徒一人一人を辛抱強く見守ること、アカデミックなことでサポートが必要な時にはとことん生徒に付き合うことです。時間はかかりましたが、生徒から「ありがとう」という言葉を聞くと、本当にやりがいを感じました。
今後、J-LEAPまた海外での日本語教育に携わりたいと考えている方々も一つ一つの出会いを大切にして、活躍して頂きたいと思います。私もこの2年間での経験を糧に教師として成長していきたいです。

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