二年間の派遣期間を終えて

マディソン・カントリー・デー・スクール
荒井 誠史

アシスタントティーチャーとしての業務と貢献

アシスタントティーチャー(以下、AT)として主に担当した業務は、まず英語環境においての日本語教材の一つになることです。普段日本語に触れる機会が少ない学生のために、LTと授業の中で日本語を使用して会話することで、日本語を使った生の会話を見せられます。それはリードティーチャー(以下、LT)一人ではできないことで、ATとして大変重要な業務の一つでした。二つ目に、日本語クラスの掲示板を作ることです。日本の年中行事や、日本文化を紹介する内容などを取り上げ、日本語クラスの掲示板を通して日本語に興味がない学生も楽しめるような掲示板になるように心がけて作りました。三つ目の業務は、LTと共により効果的な教材やアクティビティーを作成することです。特にこの三つ目の業務において一年目以上に様々なことを任せていただきました。例えば、教科書を使わない二年目では、ユニットのはじめにLTATでそのユニットのトピックに合ったロールプレイのビデオを作り、ユニットでカバーする文法や単語を入れました。そのビデオのスクリプトを考える業務を任せていただいたり、あるユニットの試験の作成を任せていただいたりもしました。またある時には、ユニットプランの骨組みを作成する機会を与えていただいたりしました。それらは教科書に沿って教えるやり方では決して体験することができないものであり、今後日本語教師として働く上で非常に役に立つとても素晴らしい経験をさせていただきました。それと同時に、派遣期間終了後にLTが使えるような教材を作れたことは成果の一つだったと思います。

日本語の授業以外の活動

2016年6月の三週間、ミネソタ州のConcordia Language Villageというイマージョンキャンプにボランティアスタッフとして参加しました。そのキャンプでは日本語だけではなく、中国語や韓国語などのアジアの言語をはじめ、スペイン語、フランス語、ドイツ語、スウェーデン語など様々な言語のキャンプがありました。日本語のキャンプでは、二週間プログラムの「生徒」と四週間プログラムの「学生」に分かれており、二週間プログラムは主に中学生を対象とし、四週間プログラムは高校生を対象としたプログラムでした。スタッフは常に日本語を話し、それぞれのキャビンを三人の先生が担当し、二週間から四週間子どもたちと一緒に寝泊まりして過ごします。言語に集中した授業やアクティビティーを通して日本語を学ぶ授業に加え、歌やダンス、イベントなど様々な活動があり、それらはすべて日本語で行われます。そのため、ホームシックになる子どもやストレスを抱える子どもがいますが、そういった子どもの心のケアもスタッフの大切な業務の一つでした。このキャンプに参加して、言語学習の難しさを改めて痛感したと同時に、派遣先の学校では体験できない新しい教授法を目の当たりにすることができました。それと同時に、学習者が抱えるストレスをケアする方法など様々なことを学ぶことができ、教師として素晴らしい経験を得ることができました。
また、2016年、2017年にジャパンボウルという全国日本語大会にウィスコンシン州の代表として派遣校の学生が出場した時に引率させていただきました。日本語が好きな学生がこのような大会に出場する様子を拝見でき、日本語教師としてとても嬉しく感じました。

日米間の若者交流に関して、自分が寄与できたと思う活動

マスメディアのみで知っている日本人ではなく、実際の日本人との交流を通して異文化の経験を提供できれば、と派遣前から思っていました。そして、実際に派遣された先の学校で、日本人と話したことがない子どもたちと交流する機会がありました。日本語の授業だけではなく、学校が主催するイベントや放課後の部活動などを通して高校生だけではなく中学生や小学生と話す機会もありました。この交流を通して私が子どもたちに何を伝えてどんな影響を与えられたかは分かりませんが、少なくとも、日本から来た本物の日本人と実際に会って話すという初めての体験を提供できたのではないかと思います。そして、その経験が将来あの子たちの何かを後押しした時、私がJ-LEAPで派遣された成果になるのかもしれません。

今後について

現代において情報を入手することは難しいことではなく、様々なマスメディアを用いて離れた国のことについてすばやく簡単に知ることができます。しかし、そんな情報社会でも実際に自分の目で見たり体験したりする機会は限られています。先進国のアメリカですらそれは同様でした。私は派遣先で日本人を見たことがない、外国に行ったことがない人たちとたくさん会いました。これから派遣される若手日本語教員の方々は、そんな人たちとたくさん関わってください。たくさん話してください。そういった交流はお互いの異文化理解につながり、情報だけではない本当の国際社会の手助けになると思います。このJ-LEAPの二年間はこれから先の日本語教師としてのキャリアの中で非常に貴重な経験でした。二年間で学んだことを活かして、今後も日本国外を中心に日本語教育に携わっていきたいと思っています。

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