フロリダ州オーランドでの2年間
フリーダム・ハイ・スクール
碩 絵里子
4レベル6クラスの日本語クラス
私は2年間日本語1を2クラス、日本語2を2クラス、日本語3、APの4レベル、計6クラスを週5日担当しました。アシスタントティーチャー(以下、AT)としての主な業務は、授業開始前と後の挨拶、ベルワーク、文化紹介、テストのリスニングの担当、教材・テスト作成、提出物・テストの添削、学生の学習サポート、毎週火曜日の放課後学習、AP試験対策でした。毎日の挨拶で中には目を合わせない、挨拶以外の他の言葉を聞かないまま授業が終わってしまう学生もいました。そこで、挨拶時に各チャプターで習う単語やフレーズ、文型をクイズ形式のカードを作り、復習を兼ねて週に何日か行うようにしました。学生は必死で思い出そうとしたり、友達同士で考えたり、すぐに答えられると嬉しそうにして、他の教室にいる友達に自慢する姿が見られました。文化紹介の中で印象深く覚えているのはデジタル教材で「キャラ弁」を作り、日本の弁当箱、調理器具、色の名前、数詞(~個、~つ、~本など)を交えた授業です。実際に私とリードティーチャー(以下、LT)も作り何人かの学生も作って紹介しました。文化を学びながら習った単語を使って自分の作品を表現するのでより理解が深まりやすいのだと実感させられました。
クラス外活動について
新入生オリエンテーション、日本語クラブ活動、文化祭での出店、ホームカミングパレード・アフターパーティ、日本語優等生協会、オーランド日本祭りのボランティアに参加しました。校内では、季節やイベント・テーマごとに仮装して登校してよい日があり、仮装や浴衣を着ると、クラス以外の学生からも声を掛けられ、自身のことや日本を紹介するきっかけになりました。日本語クラブは学生が中心に月2回活動をし、季節の行事(年賀状作り、運動会など)を体験、文化祭、ホームカミングパレードに2年連続学生と一緒に参加させてもらいました。1年目は「照り焼きボール」、2年目は「かき氷」を作って販売し、パレードではその年のテーマ「アリスワンダーランド」、「ギリシャ神話」に合わせ日本の文化も取り入れた出し物を作成し、観客に日本の紹介をしました。嬉しかったことは日本語を履修していない学生も多く参加してくれていたこと、オーランド日本祭りのボランティアでは現地に住む日本の方と交流し、祭りの雰囲気を楽しんでいる姿が見られたことです。2017年5月には日本語クラブとK-POPクラブ・中国語クラブと相談し、フロリダ大学のアジアクラブと一緒に活動をすることになり、交流の場を広げることになりました。日本だけでなく他のアジア諸国にも興味を持つ人が増えると嬉しいです。
学生・社会人との交流を通して学んだこと
赴任1年目の時に1人の4年生が全く私の言うことを聞かなくなり、LTの不在で私が一杯いっぱいになり、何人かの学生にすごく怒ってしまったことがありました。これらのケースで共通していたことはクラスで決めたルールの1つ「Respect each other」を守らなかったことでした。しかし、私はいつも挨拶もしない、飲食をしてクラスルールを守らない学生に対して「No」と言い、学生も「No」と抵抗し合うばかりでした。私は学生に、日本語のクラスではお互いに尊重し合って挨拶をしましょう、という手紙を書きました。その後、その学生は挨拶をするようになりました。私がこの経験を通じて学んだことは「No」という答えに対して私は答えの準備が出来ていなかったということでした。必ずしも「Yes」が答えではなくて「No」もあっていいのだと。それに対して私がどのような答えを出すのか彼らは待っている、そう気づかされました。私のお願いに「Yes」と答えてくれるだろうと期待する考えはエゴではないのかと。「No」と言った人も尊重する、それこそが「Respect each other」ではないかと思いました。出会った社会人、学生達に「日本人の多くは何の宗教を信じるのか」と聞かれたことがありました。私は「クリスマスにクリスマツリーを飾ってパーティをしてお祝いし、年末にお寺の除夜の鐘を聞き、正月に神社へ行ってお参りをする、宗教の寛容性と多国籍の影響を受けて育った日本という宗教かな?」と説明すると不思議がられました。信じるものが違ってもお互いに尊重して仲良くすること、これが一番大切で、一つのことを信じるあまりののしり合ったりするのは本末転倒だと感じました。「Respect each other」、この考えが2年の生活で学んだことではないかと思います。
任期を終え、これから
これから海外で日本語教育に携わる人達に期待することは、新しい環境で人脈を広げ、様々な文化・慣習を見て、触れて楽しんで挑戦し、より積極的な社会性を身につけて頂くことです。私の経験から人との交流を通して文化や思考を学ぶことで、日本のこと、現地のこと、学習している人のことをより知ることができるようになりました。恥ずかしい気持ちや不安な気持ちが交差する時もあるでしょうが、時間はあっという間に過ぎてしまいます。近くに日本人の方がいらっしゃったら、その人達に日本語を必要としている人がいないか聞いてみることもいいと思います。近くにいなければ、インターネットで情報を集めてみるのもいいですし、SNSという手段もあるでしょう。その中で、自分が得意な事や自分の方向性と結びつけ、日本語の学習や日本の文化に興味を持つ人たちを増やしていくことを期待しています。
今後はまず、11月からフロリダ州に戻り、オーランド日本語補習校の学生の学習補助や企業での日本語のお手伝いをする予定です。その先は未定ですが、これからもこの経験と積極性を活かし、教育に携わる仕事をしていきたいと考えています。